続けてジェネシスが電光石火ともいえるスピードで雷門を抜き、ウルビダがヒロトに向かってパスをする。


「グラン！」

「そうはさせない！」

｢｢!?｣｣


瑞貴は精一杯足を伸ばすが、ボールは足にかすっただけでヒロトに渡ってしまった。その光景にヒロトもウルビダも微かに目を見開く。


「しまった！」

「いくよ、円堂くん！」

「今度は止める！　マジン・ザ・ハンド！」


ヒロトのノーマルシュートを円堂は止めようとするも、ボールは再びゴールに入れられてしまった。瑞貴と風丸は声を上げる。


「守！」

「円堂！」

《またもマジン・ザ・ハンドが破られたー！》


それから一方的な試合が続く。ジェネシスが追加点を連続を取っていき、スコアはすでに10対０になった。


「なんとかしないと、このままじゃ円堂が！」

（一郎太!?　士郎まで！）


瑞貴は風丸が焦り始めたことに気づいた。クィールとコーマの連携で風丸は抜かされ、吹雪もアツヤと葛藤する姿が見える。始めに風丸をなんとかしようと瑞貴は走る。


「そんなことあるはずがない！　俺たちが追いつけないなんて！」


しかし、クィールとコーマの差は開く一方だ。風丸はショックを受ける。


「ダメだ……追いつけ――」

「追いつけないとか考えないで！」

「なっ!?」

「『追いつけない』じゃなくて『追いつく』！　気持ちで負けたら、それこそ勝てるものも勝てなくなる！」


雷門はジェネシスの登場、試合開始のスピードに驚いていた。その先入観に心が負けてしまい、さらにマジン・ザ・ハンドの敗北で精神的なダメージを受ける。

瑞貴は原作で知っていたし、今の気がかりは仲間のこと。ジェネシスは眼中にない。その心の強さがあるから、他のみんなと動きが違うのだ。

瑞貴は今まで以上のスピードでコーマからボールをもらったヒロトの前に立ち塞がる。


「これ以上点はやらない！」

「へぇ……」


ヒロトは瑞貴を見て面白そうに笑う。それにお構いなく瑞貴はボールを奪おうとするが、ヒロトが上手にキープしていく。


（この動き…心の強さ……やっぱり瑞貴ちゃんはスゴい！）


だが、ヒロトは逆に感心していた。負けず嫌い、というのもあるかもしれないが、瑞貴の動きには目を見張るものがある。


「――っ！　瑞貴！」


瑞貴の動きに驚かされ呆然としていたが、我に返った風丸は瑞貴をサポートしようと駆け出す。しかし、それを感じたヒロトが目線を送ると風丸は思わず足を止めてしまう。


「悪いけど瑞貴ちゃん、ここまでだよ！」

「あっ！」


ヒロトは瑞貴を抜き、シュートを撃つ。


「今度こそ！　マジン・ザ・ハンド！」


またもや決められ、その反動で円堂は倒れる。ジェネシスの得点は15点目になった。


「もう終わりなの、円堂くん？　君の実力はこんなものじゃないはずだよ」


ヒロトは振り返って歩き出すと、「まだ…試合は……終わっちゃいない……」という円堂の声が聞こえて足を止める。


「あきらめなきゃ……必ず反撃のチャンスは来る……。だからそれまで……このゴールは……俺が守る！」

「円堂！」

「キャプテン！」

「よし、まずは１点！　なんとしても奴らから奪うんだ！」

｢｢｢｢｢オウッ!!｣｣｣｣｣


立ち上がった円堂に、みんなの意気込みが少し上がる。……風丸を除いて。


「一郎太」

「瑞貴……」

「一郎太は負けないことだけ考えて。『試合』じゃなくて『心』に。些細なことでも構わない。『今度こそ守る』、『次は抜かされない』……まずはそこからやろう」

「心に負けない……」


瑞貴は頷いて風丸の肩をポンッと叩きポジションに戻る。風丸は拳をギュッと握った。


「アーク！」


コーマのパスを鬼道がカットした。まさかカットされると思っていなかったので、ウルビダも驚く。


《鬼道がカットー！　雷門、ついにボールを奪ったぞ！　反撃開始か!?》

「吹雪！」

（来た！）

（出るな！）


吹雪は表に出ようとするアツヤを抑えてボールを受け取る。