「イプシロン戦で見せた、ディフェンス技か？」

「そうなんです！」

「ウッシッシッシッ」

「スゴいじゃないか木暮！　見せてくれよ！」

「見せてやってもいいよ」


染岡の言葉にも得意気に返す木暮に、壁山は微妙な顔をする。


「なんスか？　この自信」

「なくて言うよりいいじゃん。夕弥、しっかり見てるからね」

「任せてよ、瑞貴姉！」

「……本当に、瑞貴さんだけ態度が違うっスね」

｢｢｢｢｢うん｣｣｣｣｣


壁山の意見にみんな賛同して頷いた。

そして木暮を間に挟むように、一之瀬と円堂と鬼道と壁山、吹雪と塔子と風丸と瑞貴と両サイドに分かれ、塔子がボールを構える。他のみんなはベンチで見学することになった。


「木暮くん、がんばってー！」

「ウッシッシッシッ。いいよ、来い！」

「そんじゃあ……いくよ！」


塔子がボールを蹴り出すと、木暮は逆立ちして高速回転をしてボールを跳ね返し、正確に鬼道に渡った。それを受け取った鬼道が再び木暮へ蹴ると、またしてもボールは綺麗に瑞貴へ渡る。


「ホォ。こりゃまた随分と磨きをかけてきたモンだ」

「ボール捌きも正確だ」


古株も杉森も驚くくらい、木暮はスゴく成長していた。


「木暮やるじゃん！」

「こりゃあ、強力なＤＦになるっスよ！」

「よし、これでラストだ！」


円堂が蹴ったボールを受けた木暮は、誰にも渡さず上空に上げて体勢を立て直した直後、ボールは木暮の足元に治まった。

あまりにも見事な必殺技に、秋も感嘆の声を上げる。


「スゴいスゴい！」

「なかなかの技ですね。スパイラルレッグスとでも名付けましょうか」

「ダサい」

「ダサッ!?」


目金欠流が考えた名前を、木暮は一刀両断の如く却下した。


「瑞貴姉が考えてよ！」

「わ、私!?」

「俺、この技ができたら瑞貴姉に名前を付けてもらおうって決めてたんだ！」


原作では木暮自身が命名していた。実際瑞貴はこの技を編み出すのに何も貢献していないので、いいのだろうか、と春奈にも顔を向けると、彼女も笑顔で頷いていた。


「じゃあ、『旋風陣』なんてどうかな？」


瑞貴がそう言うと、木暮は目を輝かせる。


「それいい！　俺も気に入った！」

「旋風陣かぁ。うん、いい名前だ！」

「これからの戦略にも幅ができそうだ」


円堂も賛同し、鬼道はこの技を身につけたことで、新たな戦略を生み出せると思った。

すると染岡がベンチから立とうとしたので、風丸はそれに気づいて染岡を支えて木暮の元に向かう。


「いい技を編み出したな、木暮。そいつでイプシロンのボールをカットしまくれ！」


染岡が手を差し出す。その行為に木暮は少しばかり驚き、瑞貴を見て、春奈を見ると、二人共笑って頷いていた。


「俺、このチームに来てよかったよ」


そう言って木暮は染岡の手を重ねて握手する。が……。


「……いっ……うっ……」


手に違和感がした染岡は恐る恐る見て、瑞貴も風丸も横から覗くと――なんと染岡の手の平に毛虫がいた。


｢｢うわあぁぁあああ/みぎゃあぁぁあああ!!｣｣

「ウッシッシッシッ！」

「木暮――っ!!」


またしても木暮のイタズラに染岡は激怒し、瑞貴は円堂のうしろに隠れる。