あみだせ必殺技!
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「それにここにいれば井上先輩と一緒にいれるし!」
「「「「「えっ?」」」」」
目を輝かせた春奈の言葉に、その場にいた秋を含む部員全員は固まった。というか凍りついた。春奈はそんな部員の表情にも構わずに円堂に詰め寄る。円堂は驚きつつ苦笑しながら一歩下がった。
「井上先輩はまだ来ないんですか?」
「あっ、いや、瑞貴は染岡の練習に付き合って先に河川敷に行ったんだ」
昼休みにいつも通り円堂たちは瑞貴とお昼にしようとしたとき、染岡が急に教室に入ってきて練習に付き合うように詰め寄ったのだ。瑞貴は驚きつつ頷いたので先に河川敷に行くと円堂に伝言を残した。
「そうなんですか……」
さっきとは打って変わって落ち込んでいる春奈。部員は何がどうなっているのかわからないのでお互いの顔を見合わせると秋が説明してくれた。
「音無さん、帝国の試合で特に瑞貴ちゃんのファンになっちゃったらしくて……」
ああ、なるほど。と部員一斉に頷いた。
先日の帝国学園との試合で瑞貴は学校中の注目の的になっていた。女子でありながら一人で帝国学園と対立し、シュートまで決めたのだから当然であろう。今まで男子のファンが多かったが、その勇ましさに女子のファンが増えたこともある。
――河川敷では染岡が一心不乱にゴールに向かってシュートをしていた。しかしそれはことごとく外れてばかりで、一向に決まらない。汗だくのまま息が乱れているので、染岡のアシストをしていた瑞貴は制止の声を上げた。
「竜吾、一旦休憩にしよ」
「ああ」
染岡は素直に言うことを聞いた。どうやらあの水の一件が原因らしく、シュートをしても頭に血が上ってしまって外れてしまう、それは染岡もよくわかっていた。だからストッパー役として瑞貴を呼んだのだ。
染岡と一緒に土手に座った瑞貴は持ってきたミネラルウォーターを染岡に渡す。
「コントロールはあれかもしれないけど、力が入った良いシュートだよ」
「……決められなきゃダメなんだよ」
染岡はミネラルウォーターをひと口飲むと思い詰めるような顔をする。
「……俺はお前が言った通り、帝国との試合が決まるまで練習をサボっていた」
「えっ?」
「円堂やマネージャーがあんなに声をかけてくれたのに、グラウンドが借りられないことや部員が足りないことを理由にして逃げていた」
突然の言葉に瑞貴は首を傾げつつも真剣に聞いている。
「正直、自業自得だと思ったよ。今までのツケが返ってきたことに気づいたが……こんな調子じゃあな」
切なげな顔をする染岡。瑞貴はその顔を見てさっきまで染岡が使っていた河川敷のフィールドを見渡す。
「竜吾はさ、豪炎寺くんになりたいの?」
「ああ。俺もあんなシュートが撃てるようになりたい」
「それはムリだよ」
「ハッ?」
染岡は即答で返ってきた答えにポカンと口を開けた。人が真剣に答えているのに何だその返しかたは。だってさ、と瑞貴は染岡を見て話を続ける。
「竜吾は『染岡竜吾』でしょ。『豪炎寺修也』じゃない。人間は『誰か』を目標にすることはできても『誰か』になれるわけじゃないから。だから、豪炎寺くんにはできないプレーをすればいいだけ。――竜吾は竜吾のサッカーをやればいいのよ」
「俺のサッカー?」
「うん」
瑞貴は嬉しそうに頷くと「それに」と続ける。
「サッカーは一人でやるんじゃない。十一人でやるものだよ。それは支えてくれる仲間が一人や二人じゃないってこと」
その言葉に染岡は目から鱗が出た衝撃に駆られた。自分を見て頼ってくれている仲間もいることを忘れていた。それは瑞貴だけでなく、円堂も半田もそうだった。
染岡は少し考えると、どこか吹っ切れたように立ち上がる。
「そうだな! 俺は俺のサッカーをやってやる!」
「ワンマンプレーは二度とダメだからね」
「グッ……」
口ではそう言いつつも、瑞貴は染岡が元気になれてホッとしていた。円堂も似たようなことを言うが今だけはいいかもしれない。
それから練習が再開し、瑞貴が染岡にパスして染岡がシュートを決める。しかしなかなか入らない。シュート自体はいいセンはいっているのだがゴールに入らないのだ。染岡が苛立つと瑞貴は肩をポンッと叩く。
「闇雲に撃っても入らないよ。イメージをしながらシュートをしてみて。自分がどんなシュートを撃ちたいのか」
「ああ!」
「よーし! その調子だよ!」
「――染岡、瑞貴。がんばってるな」
突如聞こえた声に瑞貴と染岡は振り向く。そこには円堂を含む雷門イレブンがそろっていた。
「守、みんな」
「フッ……上手くいかねぇよ。なんかイケそうなのに全然ゴールが決まらねぇ……。これじゃストライカー失格だな」
そういう染岡に円堂は眉根を寄せた。
――先程の瑞貴のように円堂は染岡と土手で話をしている。他のみんなは風丸と瑞貴を筆頭に走り込みをする。二人の掛け声に続いてみんなも声を上げ、目金は壁山に比べて遅れつつあるがちゃんと付いて来た。
「よーし! やってやろうじゃねぇか! 俺のサッカー、俺のシュートを!!」
円堂の言葉もあって染岡は完全復活したようだ。これでワンマンプレーの心配はないと瑞貴はホッとした。
染岡と円堂が加わり、パスワークとシュート練習を始める。宍戸が半田にパスし、半田が松野にパスをして影野にパスをしようとするが瑞貴が止める。
瑞貴はそのまま少林寺にパスする。少林寺は空中で体を回転させて染岡に渡し、染岡はゴールに向かってシュートを放った。しかしそれは正面からとなってしまったので円堂に止められた。
「いくぞー!」
円堂は蹴り上げてみんなボールを追う。途中、瑞貴は橋の所で豪炎寺が見ていることに気づくと向こうも気づいたのか目が合った。瑞貴は何も言わずに微笑み、練習を続ける。
しばらくして休憩を取ることにした。瑞貴はいつも通り秋からドリンクを受け取ろうとすると、円堂が顔をキョロキョロしていることに気づく。
「守、どうしたの?」
「あっ、今日からマネージャーが増えたから瑞貴にも紹介しようと思って――」
「せんぱ~い!」
「みぎゃあ!」
突然何者かが瑞貴に突進しその反動で倒れてしまった。さっきまで隣にいた円堂も、雷門中サッカー部も呆気にとられる。
瑞貴はなんとか体を起こして未だ首に抱きついている正体に目を落とす。
「「「「「えっ?」」」」」
目を輝かせた春奈の言葉に、その場にいた秋を含む部員全員は固まった。というか凍りついた。春奈はそんな部員の表情にも構わずに円堂に詰め寄る。円堂は驚きつつ苦笑しながら一歩下がった。
「井上先輩はまだ来ないんですか?」
「あっ、いや、瑞貴は染岡の練習に付き合って先に河川敷に行ったんだ」
昼休みにいつも通り円堂たちは瑞貴とお昼にしようとしたとき、染岡が急に教室に入ってきて練習に付き合うように詰め寄ったのだ。瑞貴は驚きつつ頷いたので先に河川敷に行くと円堂に伝言を残した。
「そうなんですか……」
さっきとは打って変わって落ち込んでいる春奈。部員は何がどうなっているのかわからないのでお互いの顔を見合わせると秋が説明してくれた。
「音無さん、帝国の試合で特に瑞貴ちゃんのファンになっちゃったらしくて……」
ああ、なるほど。と部員一斉に頷いた。
先日の帝国学園との試合で瑞貴は学校中の注目の的になっていた。女子でありながら一人で帝国学園と対立し、シュートまで決めたのだから当然であろう。今まで男子のファンが多かったが、その勇ましさに女子のファンが増えたこともある。
――河川敷では染岡が一心不乱にゴールに向かってシュートをしていた。しかしそれはことごとく外れてばかりで、一向に決まらない。汗だくのまま息が乱れているので、染岡のアシストをしていた瑞貴は制止の声を上げた。
「竜吾、一旦休憩にしよ」
「ああ」
染岡は素直に言うことを聞いた。どうやらあの水の一件が原因らしく、シュートをしても頭に血が上ってしまって外れてしまう、それは染岡もよくわかっていた。だからストッパー役として瑞貴を呼んだのだ。
染岡と一緒に土手に座った瑞貴は持ってきたミネラルウォーターを染岡に渡す。
「コントロールはあれかもしれないけど、力が入った良いシュートだよ」
「……決められなきゃダメなんだよ」
染岡はミネラルウォーターをひと口飲むと思い詰めるような顔をする。
「……俺はお前が言った通り、帝国との試合が決まるまで練習をサボっていた」
「えっ?」
「円堂やマネージャーがあんなに声をかけてくれたのに、グラウンドが借りられないことや部員が足りないことを理由にして逃げていた」
突然の言葉に瑞貴は首を傾げつつも真剣に聞いている。
「正直、自業自得だと思ったよ。今までのツケが返ってきたことに気づいたが……こんな調子じゃあな」
切なげな顔をする染岡。瑞貴はその顔を見てさっきまで染岡が使っていた河川敷のフィールドを見渡す。
「竜吾はさ、豪炎寺くんになりたいの?」
「ああ。俺もあんなシュートが撃てるようになりたい」
「それはムリだよ」
「ハッ?」
染岡は即答で返ってきた答えにポカンと口を開けた。人が真剣に答えているのに何だその返しかたは。だってさ、と瑞貴は染岡を見て話を続ける。
「竜吾は『染岡竜吾』でしょ。『豪炎寺修也』じゃない。人間は『誰か』を目標にすることはできても『誰か』になれるわけじゃないから。だから、豪炎寺くんにはできないプレーをすればいいだけ。――竜吾は竜吾のサッカーをやればいいのよ」
「俺のサッカー?」
「うん」
瑞貴は嬉しそうに頷くと「それに」と続ける。
「サッカーは一人でやるんじゃない。十一人でやるものだよ。それは支えてくれる仲間が一人や二人じゃないってこと」
その言葉に染岡は目から鱗が出た衝撃に駆られた。自分を見て頼ってくれている仲間もいることを忘れていた。それは瑞貴だけでなく、円堂も半田もそうだった。
染岡は少し考えると、どこか吹っ切れたように立ち上がる。
「そうだな! 俺は俺のサッカーをやってやる!」
「ワンマンプレーは二度とダメだからね」
「グッ……」
口ではそう言いつつも、瑞貴は染岡が元気になれてホッとしていた。円堂も似たようなことを言うが今だけはいいかもしれない。
それから練習が再開し、瑞貴が染岡にパスして染岡がシュートを決める。しかしなかなか入らない。シュート自体はいいセンはいっているのだがゴールに入らないのだ。染岡が苛立つと瑞貴は肩をポンッと叩く。
「闇雲に撃っても入らないよ。イメージをしながらシュートをしてみて。自分がどんなシュートを撃ちたいのか」
「ああ!」
「よーし! その調子だよ!」
「――染岡、瑞貴。がんばってるな」
突如聞こえた声に瑞貴と染岡は振り向く。そこには円堂を含む雷門イレブンがそろっていた。
「守、みんな」
「フッ……上手くいかねぇよ。なんかイケそうなのに全然ゴールが決まらねぇ……。これじゃストライカー失格だな」
そういう染岡に円堂は眉根を寄せた。
――先程の瑞貴のように円堂は染岡と土手で話をしている。他のみんなは風丸と瑞貴を筆頭に走り込みをする。二人の掛け声に続いてみんなも声を上げ、目金は壁山に比べて遅れつつあるがちゃんと付いて来た。
「よーし! やってやろうじゃねぇか! 俺のサッカー、俺のシュートを!!」
円堂の言葉もあって染岡は完全復活したようだ。これでワンマンプレーの心配はないと瑞貴はホッとした。
染岡と円堂が加わり、パスワークとシュート練習を始める。宍戸が半田にパスし、半田が松野にパスをして影野にパスをしようとするが瑞貴が止める。
瑞貴はそのまま少林寺にパスする。少林寺は空中で体を回転させて染岡に渡し、染岡はゴールに向かってシュートを放った。しかしそれは正面からとなってしまったので円堂に止められた。
「いくぞー!」
円堂は蹴り上げてみんなボールを追う。途中、瑞貴は橋の所で豪炎寺が見ていることに気づくと向こうも気づいたのか目が合った。瑞貴は何も言わずに微笑み、練習を続ける。
しばらくして休憩を取ることにした。瑞貴はいつも通り秋からドリンクを受け取ろうとすると、円堂が顔をキョロキョロしていることに気づく。
「守、どうしたの?」
「あっ、今日からマネージャーが増えたから瑞貴にも紹介しようと思って――」
「せんぱ~い!」
「みぎゃあ!」
突然何者かが瑞貴に突進しその反動で倒れてしまった。さっきまで隣にいた円堂も、雷門中サッカー部も呆気にとられる。
瑞貴はなんとか体を起こして未だ首に抱きついている正体に目を落とす。