エースストライカーは誰だ!
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「――井上さん」
「ん?」
扉から出てきたのは吹雪だった。「隣いいかな?」と聞いてきたので、瑞貴は快く了承する。
「今日はありがとう」
「えっ?」
「染岡くんのこと」
「あー……」
やったことに後悔はしていないが怒ると冷静を失うので、正直言って気まずかった。
「井上さんが、僕のために怒ってくれたことが嬉しかったよ」
「……前にも、同じことがありましたから」
「同じこと?」
「ええ。修也がサッカー部に入部する前のことです」
あのときの染岡は、帝国学園の試合で見せ付けられた豪炎寺修也の実力にショックを受けた。自分と違ってパワーもスピードも桁違い。だから焦ってしまい、仲間に迷惑をかけていた。
「そのときも怒ったんです。人は誰かの代わりができるわけなって。でも、竜吾だって頭ではわかっているのに、認めようとしたくないんです」
「そうなんだ……」
「でも、いつか必ず吹雪くんのことを認めてくれます。私はそう信じてますから」
ニコッと微笑む瑞貴に、吹雪も笑い返した。
「そういえば、FWもDFも、どちらの吹雪くんもスゴいですね」
「も?」
「あっ……!」
瑞貴はギクッと肩を揺らした。癒しの対象のせいか、気が緩んでしまったようだ。一方、吹雪は目をパチクリさせて苦笑する。
「……もしかして、気づいてる?」
何が、とは言わない。誤魔化してもムダだろうし、瑞貴は観念して頷いた。
「FWとDFとき、吹雪くんは全然違った人になっています。みんなは性格が変わるせいだと思っているようですが、私には吹雪くんが二人いるように見えて……」
「察しがいいじゃねぇか」
「みぎゃっ!」
隣にいた吹雪はいつの間にかFWの吹雪になっている。いきなりのことで、これまた瑞貴はビックリした。
「他の奴らはわかんねぇのに、たった一日で気づかれちまうとはな」
「私、結構洞察力がいいんですよ」
「……気味悪くねぇのか?」
「そんなことないですよ。私はFWの吹雪くんもDFの吹雪くんも快く迎えます。仲間が一気に二人増えたみたいで嬉しいです」
それは心からの言葉だった。最初から知ってたとはいえ瑞貴はどっちの吹雪も仲間ということは変わりなかった。彼女の優しい微笑みに吹雪は目を見開く。
「……これから、俺のことはアツヤって呼べよ」
「えっ?」
瑞貴が聞き返す前に、吹雪の目が徐々にオレンジからグレーになっていく。どうやら元の吹雪に戻ったようだ。
すると吹雪は瑞貴にギュッと抱きつく。雪崩も起きていないのに、急に抱きついてきたことに瑞貴は驚いた。
「ありがとう」
「吹雪くん……?」
「僕のことは士郎って呼んで」
「士郎?」
「うん」
名前を呼べば、吹雪は嬉しそうに擦り寄る。まるで小動物のようだ。
「瑞貴ちゃんって呼んでいい?」
「ええ。いいですよ」
「敬語も使わないで」
「はい、あっ、うん」
敬語もなくなったことで、吹雪はますます瑞貴に擦り寄ってきた。
「……僕が小さい頃、両親と弟のアツヤが雪崩で亡くなったんだ」
「えっ……」
吹雪は瑞貴に全てを話した。自分の中にいるアツヤのことも含めて。
「そっか。話してくれてありがとう」
「信じてくれるの?」
「士郎は嘘言ってる目をしてない。それだけで充分だよ」
瑞貴がそう言うと吹雪は再び擦り寄ってきた。第一、二重人格のことが信じられなかったら、異世界から来たという自分はどうなのだろう。
☆☆☆☆☆
次の日。女子部屋で一番早起きをした瑞貴は、他のみんなを起こさないように外に出て、防具を着けてボードを持ってゲレンデに向かう。少しでもスノーボードがうまくなりたいからだ。
「おっはよー、瑞貴!」
「おはよう」
「守、一郎太。おはよう」
挨拶してきた二人も瑞貴と同じ姿をしていたので、目的は同じと察した三人は一緒にゲレンデに向かった。
「「「ん?」」」
ゲレンデに着いた三人が見た者は、あれほど拒んでいたスノーボードをしている染岡だ。何度転んでも立ち上がって滑り続けているが、うまくいかないようだ。
「ん?」
扉から出てきたのは吹雪だった。「隣いいかな?」と聞いてきたので、瑞貴は快く了承する。
「今日はありがとう」
「えっ?」
「染岡くんのこと」
「あー……」
やったことに後悔はしていないが怒ると冷静を失うので、正直言って気まずかった。
「井上さんが、僕のために怒ってくれたことが嬉しかったよ」
「……前にも、同じことがありましたから」
「同じこと?」
「ええ。修也がサッカー部に入部する前のことです」
あのときの染岡は、帝国学園の試合で見せ付けられた豪炎寺修也の実力にショックを受けた。自分と違ってパワーもスピードも桁違い。だから焦ってしまい、仲間に迷惑をかけていた。
「そのときも怒ったんです。人は誰かの代わりができるわけなって。でも、竜吾だって頭ではわかっているのに、認めようとしたくないんです」
「そうなんだ……」
「でも、いつか必ず吹雪くんのことを認めてくれます。私はそう信じてますから」
ニコッと微笑む瑞貴に、吹雪も笑い返した。
「そういえば、FWもDFも、どちらの吹雪くんもスゴいですね」
「も?」
「あっ……!」
瑞貴はギクッと肩を揺らした。癒しの対象のせいか、気が緩んでしまったようだ。一方、吹雪は目をパチクリさせて苦笑する。
「……もしかして、気づいてる?」
何が、とは言わない。誤魔化してもムダだろうし、瑞貴は観念して頷いた。
「FWとDFとき、吹雪くんは全然違った人になっています。みんなは性格が変わるせいだと思っているようですが、私には吹雪くんが二人いるように見えて……」
「察しがいいじゃねぇか」
「みぎゃっ!」
隣にいた吹雪はいつの間にかFWの吹雪になっている。いきなりのことで、これまた瑞貴はビックリした。
「他の奴らはわかんねぇのに、たった一日で気づかれちまうとはな」
「私、結構洞察力がいいんですよ」
「……気味悪くねぇのか?」
「そんなことないですよ。私はFWの吹雪くんもDFの吹雪くんも快く迎えます。仲間が一気に二人増えたみたいで嬉しいです」
それは心からの言葉だった。最初から知ってたとはいえ瑞貴はどっちの吹雪も仲間ということは変わりなかった。彼女の優しい微笑みに吹雪は目を見開く。
「……これから、俺のことはアツヤって呼べよ」
「えっ?」
瑞貴が聞き返す前に、吹雪の目が徐々にオレンジからグレーになっていく。どうやら元の吹雪に戻ったようだ。
すると吹雪は瑞貴にギュッと抱きつく。雪崩も起きていないのに、急に抱きついてきたことに瑞貴は驚いた。
「ありがとう」
「吹雪くん……?」
「僕のことは士郎って呼んで」
「士郎?」
「うん」
名前を呼べば、吹雪は嬉しそうに擦り寄る。まるで小動物のようだ。
「瑞貴ちゃんって呼んでいい?」
「ええ。いいですよ」
「敬語も使わないで」
「はい、あっ、うん」
敬語もなくなったことで、吹雪はますます瑞貴に擦り寄ってきた。
「……僕が小さい頃、両親と弟のアツヤが雪崩で亡くなったんだ」
「えっ……」
吹雪は瑞貴に全てを話した。自分の中にいるアツヤのことも含めて。
「そっか。話してくれてありがとう」
「信じてくれるの?」
「士郎は嘘言ってる目をしてない。それだけで充分だよ」
瑞貴がそう言うと吹雪は再び擦り寄ってきた。第一、二重人格のことが信じられなかったら、異世界から来たという自分はどうなのだろう。
☆☆☆☆☆
次の日。女子部屋で一番早起きをした瑞貴は、他のみんなを起こさないように外に出て、防具を着けてボードを持ってゲレンデに向かう。少しでもスノーボードがうまくなりたいからだ。
「おっはよー、瑞貴!」
「おはよう」
「守、一郎太。おはよう」
挨拶してきた二人も瑞貴と同じ姿をしていたので、目的は同じと察した三人は一緒にゲレンデに向かった。
「「「ん?」」」
ゲレンデに着いた三人が見た者は、あれほど拒んでいたスノーボードをしている染岡だ。何度転んでも立ち上がって滑り続けているが、うまくいかないようだ。