「あっ、そうそう。これから吹雪くんの実力を見るために試合するって」

「わかりました」

「熊殺しって呼ばれるくらいなら、きっとスゴいシュートを撃つんスよね。でも俺、絶対に止めてみせるっス！」

「頼もしいね、塀吾郎」



――白恋中のグラウンドで雷門中対白恋中の練習試合をすることになり、両チームユニフォームに着替える。


「監督、作戦は？」

「好きにしていいわよ。吹雪くんの実力を見るだけだから」

｢｢わかりました！｣｣


瑞貴と円堂は吹雪がどれぐらいの実力を持っているのか、楽しみにしている。


「相手は日本一のチームだ。どこまでできるかわからないけど、がんばろう！」

｢｢｢｢｢オ――ッ!!｣｣｣｣｣

（誰も豪炎寺の代わりにはなれないんだ……）


白恋中サッカー部に呼びかける吹雪を見て、染岡はポジションに着く。


「吹雪さんって、スゴいストライカーって感じが全くしませんよね」

「えっ？」

「豪炎寺さんって、いるだけでなんか点を取ってくれそうな雰囲気、あったじゃないですか」

「そうね。豪炎寺くんに比べたら、彼にはスゴみを感じないわね」


春奈と夏未は吹雪の雰囲気はストライカーとは思えないと感じる。秋は未だに吹雪を敵視している染岡を心配していた。


《さあ、いよいよ始まります！　雷門中対白恋中の練習試合！　実況は、角馬圭太でお送りします！》


遠路遥々から北海道にまで実況しに来た彼に、瑞貴はある意味感心していた。

白恋中サッカー部のポジションを見ると、吹雪はＦＷエリアではなくＤＦエリアにいた。それは雷門イレブンに大きな衝撃を与えていた。


「何!?　あの野郎ディフェンスにいる！」

「吹雪はＦＷじゃなかったのか？」

「ＦＷだよ。吹雪くんは」

「じゃあ、あれはなんだ！」

「今はまだ、ＤＦなんだ」

「どういうことだ！」


喜多見流が説明をしてくれたが、意味がわからない染岡は怒鳴った。


「よくわからないけど、面白くなりそうだ」

「案外、意外性がありそうだね」


キャプテンの円堂と副キャプテンの瑞貴は笑う。

試合開始のホイッスルが鳴り響き、瑞貴は染岡にボールを渡す。


「ふざけてんじゃねぇ！　どけぇ！」


苛立っていた染岡の気迫に氷上と紺子は圧され、染岡はそのまま突破して吹雪に向かう。


「そういう強引なプレー、嫌いじゃないよ」


吹雪は微笑んで突進してくる染岡に向かい、スケートのジャンプするフォームをとる。


「アイスグランド！」


着地した吹雪の足から現れた氷は染岡を凍らせ、弾かれたボールを胸で見事に止めた。その華麗な技に瑞貴と円堂は目を奪われた。


「綺麗……」

「スゴい……！」

《おぉっと吹雪、染岡から華麗にボールを奪ったぞ！》

（なんてディフェンス能力だ……。あれを破るのはかなり大変だぞ）


鬼道はゴーグル越しに写る吹雪を見てそう思った。

吹雪は前線にいる喜多見にパスをするが、それを風丸はアッサリと奪った。他のプレーヤーは吹雪ほどの実力じゃないようだ。そして風丸は染岡にパスする。シュートが来ると函田鉄は構えると、吹雪が前に立って染岡と一対一になる。