「――甘いわね」


その空気に水を差したのは瞳子だった。瞳子はチラリと瑞貴を見ると、その視線に気づいた瑞貴は頷いた。


「確かに鬼道くんの言う通り、ジェミニストームの攻撃には一定のパターンがある」

「えっ!?　監督も気づいていたんですか!?」

「見てればわかります」


同じようにベンチにいて試合を見ていたのに気づかなかった秋は、申し訳なさそうに「す、すみません……」と言って顔をうつむける。


「あなたたち、今、自分がどんな状態だかわかってるの？」

「状態……？」


土門を始めとしてみんなどんな立場にいるのかわかっていない。まさか鬼道までもがわからないとは思わなかったので、瑞貴は溜息をついて説明をする。


「今の私たちじゃ相手のスピードにはついていけない。攻撃パターンがわかったぐらいで倒せる相手じゃないんだよ」

「じゃあ、どうしろっていうんだよ!?」


円堂が訪ねると瑞貴は瞳子を見たので、全員同じように瞳子に顔を向ける。

瞳子の作戦とは――雷門のディフェンスを全て前線へ上げて、円堂以外全員攻撃するということだ。あまりの大胆な作戦にみんな驚く。


｢｢｢｢｢えぇ!?｣｣｣｣｣

「そ、そんなに上げるんですか!?」

「でもそれじゃ、ディフェンスがいないも同然。それこそ奴らに抜かれでもしたら終わりじゃないですか！」

「だったら、抜かれないようにすることね」


そう言って瞳子はその場をあとにしてベンチに向かう。搭子はその態度が気に食わなくて声を上げる。


「なんなのあの監督！」

「いや…俺もよくわかんないだけどさ……。でもま、とにかくやってみようぜ！　ＳＰフィクサーズに勝てたのも、監督の作戦があったからなんだしさ！」


円堂のひと言でとりあえず瞳子の作戦に乗ることにした雷門イレブン。鬼道は疑問を感じ、瑞貴は原作で瞳子の意図をわかっている。



――そしてハーフタイムも終了して後半に入る。


《な、なんでしょう。このフォーメーションは!?　キーパーの円堂の前がガラ空きです！》

「みんな、頼んだぞ！　ゴールは任せとけ！」


鬼道は瞳子の意図がわからず、豪炎寺は男たちを気にして、様々な思いを持っている。それに対し瑞貴は前の試合を思い浮かべていた。


（前はオーロラベールを使っても止められなかった。なら、あの技を――！）

「フンッ。何をやってもムダなこと。かまわん、叩き潰せ」


レーゼの指示が出ると後半開始のホイッスルが鳴り、リームがディアムにボールを渡す。

しかしディアムはいきなりシュートを撃ち、染岡と豪炎寺が反応できずにいると二人のうしろにいた瑞貴が前に出た。


「フェアリーダンス！　うわぁ！」


瑞貴の周りから現れた妖精がボールを止めようとする。だが、それはなんなく突破されボールは瑞貴ごと吹っ飛ばして、さらに円堂もゴールに突き刺さった。