「さあ！　まずはアップだ！」

「いくよ、みんな！」

｢｢｢｢｢オウッ!!｣｣｣｣｣


みんながグラウンドへ駆け出し、円堂は祖父のグローブを見て、瑞貴は写真を見てから向かおうとすると、突然突風が吹かれた。


「なんだ!?」

「来たよ！」


風が止むころには、もう一つのベンチで世宇子中サッカー部が現れた。


《この大会最も注目を集めている世宇子イレブンだ！　決勝戦まで圧倒的な強さで勝ち続けてきた大本命！　この決勝でもその力を見せつけるのかー!?》


雷門中の視線に気づいた世宇子中のキャプテン・アフロディは、円堂と瑞貴を見て余裕の笑みを零した。円堂は拳を握って震えていると、瑞貴がその手を重ねる。


「大丈夫、私たちならやれる。ねっ」

「ああ！」


瑞貴は微笑むと、円堂は目を見開いて頷いた。

間もなく試合が開始される頃、アップを終えた雷門イレブンは円陣を組む。


「いいか！　みんな！　全力でぶつかればなんとかなる！」

「後悔しないためにも、今までの力を全て出しきろう！」

｢｢勝とうぜ!!｣｣

｢｢｢｢｢オ――ッ!!｣｣｣｣｣


意気込み始めた雷門イレブン。するとカチャカチャという音が聞こえ、全員が目を向ければ世宇子のベンチにグラスを乗せた手押し車が現れた。アフロディたちはそれぞれグラスを取る。


「僕たちの勝利に！」

｢｢｢｢｢勝利に！｣｣｣｣｣


アフロディたち世宇子イレブンはそのグラスを掲げ、飲み物を飲み干す。それを見た染岡竜吾は忌々しげに舌打ちをする。


「チッ！　余裕を見せやがって！」


両校一列に並んで整列をし、キャプテン同士の円堂とアフロディが握手を交わす。


「警告したはずだ。プシュケを渡し棄権した方がいいと」

「瑞貴は俺たちの大事な仲間だ。それに、サッカーから、大好きなモノから逃げるわけにはいかない。俺たちの今の力を全てぶつけて、お前たちに勝つ！」

「フフッ。君ならそういうと思っていたよ、円堂くん。そしてプシュケ、今日で君も雷門を離れ、こちらに来るべきだとわかる」


アフロディの言葉に円堂と瑞貴は顔をしかめた。それからそれぞれポジションに着く。