フットボールフロンティア全国大会決勝戦当日。スタジアムが急遽変更とされ、首を傾げる井上瑞貴と円堂守たち。しかしフロンティアスタジアムの上空にギリシャ神話にでも出てきそうな巨大な建造物が現れた。

瑞貴たちはその建物の中に入ると、中央にはサッカーススタジアムがあった。


「ここが、試合会場……」

「まるで神殿みたいなとこだね……」

「決勝当日になって世宇子スタジアムに変更……影山の圧力ね。どういうつもりかしら？」


雷門夏未が推測を立てると、視線に気づいた瑞貴が顔を上げればそれに続いて円堂も一緒に顔を上げる。そこには影山零治がいた。


「影山！」


円堂の言葉に、響木正剛も鬼道有人もみんなも同じ方向に顔を上げ、影山の姿を見るが彼は笑っていた。

瑞貴と円堂は豪炎寺修也を見ると、彼は冷静な顔をしていたが両手は拳を作って震えていた。


「円堂、話がある」

「はい」


響木が円堂に声をかけると、他のみんなも響木たちを見る。


「……大介さん、お前のおじいさんの死には――影山が関わっているかもしれない」


それは衝撃な言葉だった。そのことを知っている瑞貴と夏未は顔をしかめるだけだが、他のみんなは意外な真実に驚いている。


「じいちゃんが…影山に……」

「ああ」


憧れでもある祖父の死に、影山が関係していることを知った円堂は唇を噛み拳を強く握って体を震わす。その姿を見て夏未は声を上げる。


「響木監督！　何故こんなときに！」


決勝の前に選手の心を乱す監督は失格だ。しかし、これは今でなければならないと響木は判断した。

影山の陰謀でフットボールフロンティア決勝に出られなくなった響木たちは、ショックから立ち直れず、運命を呪い、恨み、そしてサッカーから離れてしまった。だがそれは間違いだった。恨みに捕らわれたせいでサッカーという大事なことを失ってしまったからだ。

もし、円堂が影山への恨みでサッカーをしようというのなら、響木は監督をやめ試合を棄権するつもりだ。――大好きなサッカーを、円堂から奪わないために。


ポンッ。


「っ！」


瑞貴と豪炎寺は息まで荒くなってきた円堂の肩にそれぞれ手を置いた。