そしてついに、円堂はタイヤを受け止めることができた。


「やったぁ――っ!!」

「ついにやったね守！　みぎゃ!?」

「瑞貴ー！　俺、ついにやったぜー！」

「ちょっ、まっ、危なっ！」


なんと円堂は瑞貴に抱きついてきたのだ。タイヤを背負っているため、いくら力がある瑞貴でもその重量には逆らえず倒れてしまった。


「ご、ごめん！　大丈夫か!?」

「な、なんとか。でも、おめでとう。自信がつけば、大きな結果に繋がるよ」

「ああ！」


今度は逆に瑞貴は円堂に引っ張られて起き上がった。


「よーし！　燃えてきたぁ――っ!!」


成功したことに火が点いたのか、円堂はさらにやる気になり自信がついてきた。

また何度か特訓を繰り返してボロボロになり、円堂は一息ついてベンチに座ると瑞貴はドリンクを円堂に差し出した。


「ありがとう」

「どういたしまして」


瑞貴も円堂の隣に座ってドリンクを飲む。これで今は円堂のやる気がつながったことに安堵していた。


「瑞貴……――何かあったのか？」

「えっ……？」

「俺はずっとお前に心配かけてたからさ。今度は俺がお前の相談に乗るよ」


瑞貴は驚いて目を見開いた。一之瀬たちにも言われたが、なんだか話せる気にはなれなかった。……だけど円堂になら――サッカー部の仲間になら言っても構わない、そう思えた。


「明日、みんなの前で言うね」



☆☆☆☆☆


部活の時間になると瑞貴はマネージャーを含めた部員全員を部室に集めた。


「みんなに聞いてほしいことがあるの。私の……過去のこと」

「瑞貴の、過去？」

「うん……。ちょっと暗い話になるけど、いい？」

「もちろんだ！」


ニカッと笑う円堂に瑞貴は少し安心して口を開いた。


「私、去年いじめにあってたんだ……」

「いじめ!?」


当時の瑞貴は昔からサッカーが大好きな少女だった。中学に入学したらサッカー部に入ろうと心に決めていたので、中学生になってすぐにサッカー部へ入部を申し込んだ。

最初は二軍として練習を続けていたが、特に瑞貴は監督が目に留まるほど才能があった。