すると両隣にいた染岡と円堂が瑞貴のおにぎりを見て驚く。


「おっ。瑞貴、デッカいのもらったなー！」

「俺のはヘンテコな形のおにぎりだぜ！」

「ま、守、それって……」

「――私が握ったのよ？」


二人が振り向けば、そこには両腕を組んで笑顔が怖い夏未がいた。ちなみに染岡はすでに遠くへ避難している。


「あ、ああ！　まあ形はどうであれ、味は一緒だよな！」


円堂は誤魔化すように笑いながら一気におにぎりを口に含む。が、顔を青ざめて涙目になっていた。


「しょっぱい……」

「お塩、付けすぎたかしら？」

「ん、いや、練習で流した汗の分だけ塩分補給しないと……」

「現在進行形でそれ以上に汗をかいている気がするけど」


円堂はゴクリとおにぎりを飲み込むが、丸ごと飲んだせいで喉に詰まった。


「もう！　世話がやけるわね！」

（…………）


夏未が円堂の背中を叩いてくれたおかげで喉には通ったものの、円堂から魂が抜けていた。

これが十年後、二人が日常茶飯事となって送る光景になるだろう。そう考えた瑞貴はチクッと痛んだ胸を誤魔化すかのように最後のひと口を食べた。


「うまかったっスー！」

「でもやたら塩辛いのが――」

「よーし！　あともうちょっとだ！」

｢｢｢｢｢オウッ!!｣｣｣｣｣


塩辛い原因を知っている円堂は、夏未の怖い笑顔を思い出して半田の言葉を遮り、仲間に号令をかけた。



――夕方、瑞貴は買い物をすませて家へ帰ろうとすると、河川敷で稲妻ＫＦＣが練習する姿を目にして思わず足を止めた。


「いくぞ、まこ！」

「負けないよー！」


間竜介と如月まこがボールを奪い合っている。男女関係なくサッカーをやっている姿に、瑞貴は昔を思い出した。


『女なんかがサッカーするんじゃねぇ！』

「っ！」


脳裏にあの悪夢の言葉を思い出して振り払うように首を振る。そしてそのまま帰宅するべく足を運んだ。