父親の東吾は当時、人気実力共に最高だった。その頃のワールドチャンピオンシップ代表に選ばれると思っていたが、円堂大介を中心とする若手の対等によって代表を外されてしまった。

そのショックのせいか東吾は荒れ、『奴が出ると負ける』や『あいつは疫病神』だと言われる始末だった。

やがて東吾は失踪し、母親は病死、影山は一人きりになってしまった。影山の中で家族を壊したサッカーと勝ちへのこだわりに対する憎しみが膨れ上がってしまった。


「『勝つことが絶対、敗者に存在価値はない』……影山がよく言っていた言葉だ」


鬼道は今まで影山に教えられてきた。おそらくこの場にいる鬼瓦の次に影山のことはよく知っているだろう。


「そのためにたくさん人を苦しめている……。豪炎寺、お前もその一人」

「何？」

「妹さんの事故も、奴が関係している可能性がある」

「！」


その言葉に豪炎寺は目を見開き、首に掛けてあるスパイクのペンダントを見つめた。これは試合前日に妹の豪炎寺夕香からお守りとしてもらった物。あの明るい笑顔が一年も見れない原因がわかりペンダントを強く握りしめる。

そんな彼の心情を言葉にするように円堂は「許せない……！」と言って両拳を強く握る。


「どんな理由があっても、サッカーを汚していいわけがない。間違ってる！」

「影山は今どこに？」

「まだわからん。しかし、冬海がおかしなことを言っていてな」


鬼瓦は冬海卓の証言を思い出しながら瑞貴たちに話す。


『プロジェクトＺってご存じですか？』

『プロジェクトＺ……？』


雷門対帝国戦のとき、影山のことを調べようとコンピュータでアクセスしたがそれも失敗に終わり、消えていくデータの最後にあったファイルの名前だった。


『フットボールフロンティアはプロジェクトＺによって支配されてます。あの方はサッカーから離れませんよ。離れられるわけがない。今や空から、それこそ神様にでもなったかのように私たちを見下ろし、嘲笑っているんですよ……』


どうやらその計画と影山が空にいるってのは繋がっているらしい、と鬼瓦は言った。


「『プロジェクトＺ』と『空』……なんのことだろう？」

「帝国にいたお前には、空と聞いて何か思いつくことはないか？」

「いえ、俺にはさっぱり……」


当時帝国学園サッカー部キャプテンの鬼道に問いかけるも、鬼道は心当たりがなかった。


「それと瑞貴嬢ちゃん、お前も気をつけたほうがいい」

「私ですか？」

「影山は瑞貴嬢ちゃんを狙っている」

｢｢｢｢｢えっ!?｣｣｣｣｣


このことには瑞貴も驚いた。自分と影山が接触したのは練習試合と地区予選決勝のときだけのはずだ。だが、一つだけ心当たりがある。


（影山さんは私が異世界から来たことを知っている……）


鬼瓦や響木のように自ら言ったわけではない。どこかで聞かれたのか、調べ出した結論なのか、未だわからない。だが狙われている原因があるとすればそれだろう。


（瑞貴……！）


そんな瑞貴の様子に円堂は再び拳をギュッと握る。相棒である彼女が狙われているという事実に、円堂は『自分が守らなくては』という思いが強くなった。










☆副キャプテン　今日の格言☆



うしろを振り向くことも大事だけど、前に進むことがもっと大事だもん。



以上!!