「ん？　監督知ってる？」

「ああ。そうか、ついにお前もアレに挑戦を始めたか」

「監督はできた!?」

「俺はマスターできなかった」

「えっ？」

「だが、お前ならやれるかもしれない。――がんばれよ」

「オウッ！」


監督からの声援に円堂はますますやる気を出した。これでは明日もボロボロになるな、と瑞貴は軽く溜息を吐いた。

すると店の扉がガラガラと開かれる。


「おいおい。どうした？　おそろいで」

「刑事さん！」

「こんばんは鬼瓦さん」

「ヒッデー格好だな」


円堂と瑞貴が挨拶をすると鬼瓦源五郎はいつもの定位置の席に座る。


「世宇子に勝つにはこんくらいなんでもない」

「威勢がいいは結構だが、勝つことに執念を燃やしすぎると影山みたいになるぞ」

「影山に？」

「……刑事さんは冬海先生に会ったそうよ」

｢｢｢｢｢ええっ!?｣｣｣｣｣


夏未の呟きに円堂たちは驚いたがちなみに瑞貴は額に青筋を浮かばせた。


「あの権力に弱いバカに会ったんですか？」

「瑞貴嬢ちゃん、それは言い過ぎだぞ……。まあいい。――影山を探すためにな」


鬼瓦は四十年前のイナズマイレブンの悲劇から雷門対帝国戦の鉄骨落下事件まで、一連の不可解な事件を解明するためには、影山という男の過去を知るべきだと感じた。


「何かわかったんですか？」


鬼道が問いかけるも鬼瓦は言うべきかどうか迷っていた。すると響木が水を出す。


「こいつらも知りたがっている。話してやったらどうだ？」

「……そうだな」


鬼瓦は水を一気に飲んで一息ついてから話し出した。


「始まりは五十年前の出来事なんだ」

「えっ、五十年前!?」

「影山東吾という選手を知ってるか？」


さすがに五十年前のことはわからず各々顔を見合わせていると、豪炎寺が話す。


「昔、日本サッカー界を代表する選手だったと聞いたことがあります」

「……影山の父親だ」

｢｢ええっ!?｣｣


日本代表選手の息子だという鬼道の答えに、瑞貴以外は驚きを隠せなかった。