二回戦の千羽山中との戦いに勝利した雷門中は準決勝へと駒を進めた。

そのため井上瑞貴は家にある秘密の特訓場で特訓を重ねている。今日は相手のボールを奪う技術を高めるために今まで戦った選手ではなく、その練習対象として作られたオリジナル選手とやっている。


「とりゃ！」


瑞貴はなんとか相手からボールを奪えた。その途端選手は消え休憩時間だと気づき瑞貴はベンチに向かう。

過ごしていくため時間は経ち、原作の知識は重要な点以外ほとんど忘れていくが今が楽しい瑞貴は別にそれでもよかった。


♪ピリリリ、ピリリリ♪


「電話……？　誰だろう」


着信のメロディーが流れ、瑞貴は携帯を手にとると『木野秋』と表示されていた。


「はい、もしもし。…………えっ？」



☆☆☆☆☆


空から次々と降りてくる飛行機が集まる空港――。そのロビーで木野秋と土門飛鳥、そして瑞貴がいた。


「本当か？　本当に、あの一之瀬なんだな!?」

「うん。電話があって……今日、日本に到着するって」

「秋ちゃん、本当に私が来てよかったの？」


今日、空港に誘ったのは秋だ。瑞貴はせっかくの幼馴染との再会なのに、部外者である自分がいたら邪魔なのではないかと思っている。


「いいの。瑞貴ちゃんにも会ってほしかったから」

「でも、あいつは……」

「一之瀬くん、確か事故で亡くなったって言ってたよね？」


秋と土門がアメリカに留学していた間、二人の幼馴染の『一之瀬』という少年は仔犬を助けるために車に轢かれた、と瑞貴は二人からそう聞いた。


「ああ。遠くの町の大病院に運ばれてそこで……。あのとき、一之瀬の親父さんから連絡が来たじゃないか。生きてんならなんで死んだことに……なんで今まで連絡くれなかった？」


土門は切羽詰った状態で秋を見るが、秋は顔を少しうつむけたままだ。


「……会えばわかるよ、飛鳥」

「瑞貴ちゃん……」

「うん。早く会いたい…元気な姿を見たい。……一之瀬くん」



☆☆☆☆☆


一方、雷門中のグラウンドではサッカー部が準決勝に向けて練習をしていた。

秋は空港に、雷門夏未は用事でいないのでマネージャーは音無春奈だけだ。春奈は練習している部員を見ていると、隣で私服姿の見慣れない少年がいたことに気づいた。


「入部希望者かな……？」


不思議に思ったが特に気に止めず春奈は再びピッチに視線を戻す。ドリブルをしていた染岡竜吾がゴール前に来た。


「ドラゴンクラッシュ！」

「熱血パンチ！」


円堂守は熱血パンチでドラゴンクラッシュに迎え撃ち見事に弾いた。ボールは少年の足下に転がり少年はボールを持ち上げる。


「おーい！　ボール！」


円堂が手を振りながら言うと、少年は笑ってボールを投げずにそのままドリブルして見事な動きで半田真一と栗松鉄平を抜いた。


「あの二人をあっという間に!?」

「スッゲー！」


春奈と円堂が驚くと少年はゴール前につき、ボールを足で止め円堂を見据えて笑う。


「よし来い！」


円堂がやる気満々で体勢を取ると、少年はバック転で逆立ちになりそのまま体を回転する。


「スピニングシュート！」

「ゴッドハンド！」

「何!?」


少年のスピニングシュートを円堂はゴッドハンドで迎え撃ち、少し後退するも見事に止めた。