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記事一覧

  • 再び訪れた場所

    20230828(月)14:18
    「あれ。この場所…前に来たことあるのかな。懐かしい感じがする」
    「キミには“身に覚えがある”というヤツだろうな(そういう私にも覚えがある。おそらく《更新前》に来たのだろう)」
    「へえ。じゃあ案内頼んだわよ、シセル!」
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  • 事件捜査

    20230828(月)01:43
    「どう思う相棒?」
    「たぶんアレだな。カバネラ、キミは逮捕状を取っといてくれ」
    「りょーかい。ついでに裏取りもやっておくよ」
    「アリバイもあやしいモンだな。まあこういう時はー」
    「知らないことはハンニンに聞け、だね相棒」
    「その通りだ。部下にも発破かけないとな」
    「キミのコトバは何よりも効くよ、ジョード。じゃあまた現場で会おう」
    「ああ、頼んだよカバネラ」
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  • システムの便利屋さん

    20230827(日)14:15
    「何かウィルスが入ったみたいなの。ちゃっちゃとやっつけちゃってくれる?」
    「これぐらいで気軽に呼び出さないでくれよ、リンネ刑事」
    「(それだけヨミエルが信頼されてるというコトだろうな)」
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  • 霊媒師と弁護士とユーレイと

    20230823(水)19:37
    「ね。ね。なるほどくん。なんかダレかの視線を感じる気がするんだよね。もしかしたらトンガリな髪型のユーレイかも」
    「そんなユーレイありえないだろ」
    「(見えてるのか…?)」
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  • 相談に乗って

    20230817(木)23:44
    「ジイさんって結構ハナシを聞いてくれる方だよね。ボクのトンでもない捜査に乗ってくれたし、警官クンの話を聞いてあげてただろう?」
    「メンドウごとになる前に片付けることにしてるだけだの」
    「その割に部屋は片付いてないケドね」
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  • 祝いたい刑事コンビと祝われるシステムエンジニア

    20230816(水)21:41
    「誕生日なんてね、動かしちゃえばいいんだよ」
    「いやダメだろ」
    「祝っちまえばすべて同じだろ」
    「いや、だから…」
    「まあ。やってみようじゃないかヨミエル」
    「そうだよ。ラブリーに行こうじゃないか!」
    「アンタらな…」
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  • 水族館にて

    20230813(日)19:29
    「こうして見るとおサカナってかわいいわね」
    「それもそうだが…私としては。こうして見ると“かわいい”より“美味しそう”といったキモチが湧き上がるな」
    「うーん、ネコだから仕方ないわね。でも食べちゃダメよ」
    「ああ。わかっている(あのサカナの動き…どうにもそそられてしまうな。思わず手が出てしまいそうだ)」
    「コイツはウマズラハギだそうだぜ」
    「ウマなのか?」
    「ああ。食べるには向いてなさそうだな…そうだ。この後空いていたらスシでも食べに行かないか?」
    「食べます!ごちそうになります!」
    「(スシか…。きっと美味しいのだろうな)」
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  • 一緒にいるならば恋

    20230811(金)23:12
    「シセルといる時のあたしが好き。だって“生きてる”ってカンジがするもの」

    「リンネといると、とても好奇心をくすぐられる。これが“生きてる”という充実感だろう」
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  • 話し方のクセ

    20230802(水)22:38
    「シセルの話し方って特徴的ね。ダレかのマネをしてるの?」
    「ダレというワケではないが…頼もしく聞こえるようになればと努力はしている」
    「それって何か影響を受けたとか?」
    「ヨミエルと一緒に暮らしていたら自然とこうなった。まあ、カレの影響を受けたトコロもあるのかもしれないが」
    「やっぱり!『〜だぜ』って使う時キザだなあと思っていたのよね」
    「(そうだったのか…)そういう女刑事さんはダレかの影響を受けたのだろうか」
    「あたしはそういうのはないかな。元気に聞こえればそれが1番よ。みんなが毎日エガオで過ごせればいいわ」
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  • その態度は

    20230731(月)22:15
    「それまであたし、なんだか避けられてるって思ってた。だからある時、『すみません、ムシしないでもらえませんか』って言ったのよ」
    「それは…ヨミエルもおどろいただろうな」
    「『何なんだアンタは』って言われたわ。まあ、コミュニケーションとしては充分なツカミね」
    「(ずいぶん強引な刑事さんだ。まあ、リンネらしいと言えばらしいが…)」
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  • 病院にて

    20230726(水)22:55
    「どうだ?そっちの具合は」
    「色々なところが痛くてアンタより重症だというのはよくわかるよ」
    「ヨミエルくんは結構タフなんだな」
    「アンタ、この状態でそう言うか…。まあ、“生きている”実感はとてもするんだがな」
    「オレもだよ。こうしているのが奇跡みたいなモンだ」
    「…ジョード刑事。退院したらシセルによろしく伝えておいてくれ。オレはこれからも生きていくってな」
    「ああ。お大事にな、ヨミエル」
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  • 新しいコトを始めるには

    20230724(月)21:08
    「リンネ刑事。新しいSNSを作ったんだが、試してみてくれないか?」
    「いいですよ。えっと、これがホーム画面ね。それで、検索がこう…あれ。カバネラさんもやってるんだ」
    「そいつのは見なくていい」
    「え」
    「アンタにとってマッタク特にならない情報だ。さっさとブロックするのをオススメするよ」
    「え。でもカバネラさん、一応上司だし…」
    「上司でもなんでも、だ。アイツがいなくてもアンタのホーム画面構築にはモンダイない」
    「…ヨミエルさん。そうやって自分の好きキライを押し付けるのはよくないと思いますよ。ラブリーじゃないってヤツです」
    「アイツのクチグセがうつってるぜ、リンネ刑事。そういう風に全て“ラブリー”で片付けようとするのがイヤなんだ」
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  • ひまわりを育てる

    20230721(金)22:18
    「植物って毎日話しかけるとすくすくと育つらしいのよ」
    「それならばキミも話しかけたらどうだ?元気になるかもしれない」
    「そうね。じゃあ…ブジに花を咲かせてね!」
    「キミがそう言うと…なぜだか。このひまわりのイノチ周りに、ひと騒ぎありそうな予感がするな」
    「うううん、ちゃんと育てるわよ!」
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  • メロンパン

    20230720(木)22:10
    「…甘いわね。アタクシには少し、合わないかしら」
    「ひゃー正直だなビューティー。まあそこがイイんだけどさ。コッペパンがよかったい?」
    「そうね。次は考えておいて」
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  • 食べモノの旅

    20230719(水)18:25
    「リンネ。お前はどれほど食べたら満足するんだ?」
    「まだまだ行けますよ。だって腹八分目にも届いていませんから!」
    「やれやれ…付き合うよ。次はどの店に行くんだ?」
    「えーっと、新しくできたトコロです。カレー味のスパイスが美味しいんですって」
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  • 病室の中で

    20230718(火)20:39
    「お、リンゴがあるな。ナイフはどこだ?オマエさんも食べるだろう?」
    「元々ボクがもらったんだけどな。看護師さんに聞いてみようか」

    「…キレイな剥きっぷりだねえ、ジョード。キミはそのままかぶりつくタイプだと思っていたよ」
    「普段はそうだが、ここは病室だろ。それとも、オマエさんはウサギりんごの方がよかったのか?」
    「そんなラブリーなシュミは持ち合わせてはいないよ。…今はね。どうせならムスメにやってやったらどうだい?」
    「それもそうだ。…ほら、できたぞカバネラ」
    「ありがとう、いただくよ」
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  • おかわりください

    20230715(土)15:23
    「リンネ。どうやらキミの食いっぷりはウワサになっているようだな」
    「そう。みんなあたしにアコガレをいだいてるらしいの。それも…胃袋に」
    「それはそうだろう。私もこの目で確かめたのだからな。いずれはジョード刑事と並んで優秀なフードファイターになるのだろうか」
    「ええ。もちろん。『刑事はギリギリのセトギワまで食うべし』だからね」
    「(刑事課の未来は胃袋に左右されるようだな)」
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  • 大食いはどこまで行く

    20230715(土)14:50
    「リンネ刑事、また大食いに挑戦したんだってよ」
    「へえ今度はどれぐらいだ?」
    「ニク3キロだってよ。よくあの細身なカラダに入るよな」
    「ああ。またファンが増えそうだな。機会があったら生でその大食いを見てみたいモンだ」
    「やめとけ。お前の胃が耐えきれなそうだぞ。アレはリンネ刑事のムチャクチャな胃袋のおカゲでできるんだ」
    「へえ。いずれ“宇宙一の大食い”として出世階段を踊り上がるんじゃないか?さすがカバネラ警部が気にかけてるだけある」
    「いや、食いっぷりはジョード刑事似だな。一度奢ってもらった事があったが、アレもスゴかった。綺麗に食べ切ってて、優秀な大食いという感じだったぞ。今度お前も連れて行ってもらえよ」
    「いや、エンリョしておく。自分の胃は自分で守りたいからな」
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  • 遊ぼうよ

    20230713(木)20:56
    「センパイ。大富豪をやらないッスか?」
    「いいでしょう受けて立ちます!大富豪のオニと呼ばれた腕前をキミに見せてあげましょう!」
    「いや。そこまでのノリは求めてないッス」
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  • チームサングラス

    20230705(水)21:56
    「ね。サングラスをかけるとどう見えるの?」
    「どうと言われてたら…そうだな。世界が“夜”のように見えると言ったトコロだろう」
    「へえ、おもしろそうね。あたしもかけてみようかな。あなたみたいにカッコ付けたいし」
    「カノンもかけてみたいな」
    「ボクも仲間に入れてくださいッ」
    (大変なコトになってきたな…。みんなでサングラスをかけると…まるで。ひとつの“チーム”のように見えてくる)
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  • その動きって

    20230627(火)23:33
    「センパイって何か、動物みたいッスね」
    「ああああっ。キミ、ソレはアレですかっ。本官が警察のイヌと!そう言いたいんですか!」
    「…ベツにそう言うツモリじゃなかったんスけど。認めないで欲しかったッス」
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  • 嘘ってなあに?

    20230624(土)18:58
    「嘘はね。ダメなんだよ」
    「ああ。わかっている(そもそも《死者の世界》では嘘がつけないしな)」
    「そもそも。嘘ってなんでしょうかッ」
    「……。アンタには縁がないモノ…なのかもしれないな」
    「ミサイル。あなたはそのままでいてちょうだい」
    「何だかよくわからないですけど、わかりましたともッ」
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  • キミのヒミツを知りたい

    20230614(水)22:56
    空に浮かぶ、痛いぐらいキレイな光を放つ満月だとか。
    月と同じ色のキレイに磨かれた懐中時計だとか。
    かつて“ある事件”を起こしたオトコが10年間入っていた刑務所だとか。
    そんなボクにとってはなんでもないモノを見る時。ジョードはなぜか、とても懐かしそうな。それでいて、痛そうなカオをする。
    相棒のコトはなんでもわかってるツモリだったけどさ。これに関しては理由がよくわからないんだ。
    「カバネラ。そろそろだそうだ」
    「ああ。準備はバッチリだよ」
    もっとわからないのが、相棒が飼ってる黒猫クンのコト。まるで“会話してる”ような答え方をする時がある。
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  • サカバンバスピス

    20230612(月)22:17
    「ほら。何だっけ…。サカバンなんとかっていうサカナ」
    「サカバンバスピス氏だろうか(カオに負けず、とてもややこしい名前だったな)」
    「そう、それよ!さっすがシセル!あなたってミョーなところスルドイよね」
    「(言われてしまった)」
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  • お弁当 1

    20230524(水)20:51
    ヨミエルの綺麗な指が、半球状のプラスチック容器からフィルムを剥がしていく。ペリペリと音を立てて破れないように最後まで取りきると、中から現れたのはシセルの好物であるマグロとカツオをすり潰したウェットフードだった。平然としているように見えて、耳を動かしどことなくソワソワしているシセルに「もう少し待っていてくれよ」とマジメに伝え、ヨミエルは弁当と一緒に渡されていた小さな紙皿にプラスチック容器の中身を押し出し盛り付ける。それをそっと両足を揃えて座っているシセルの前に差し出すと、シセルはスンとニオイを嗅ぎ、ヨミエルのカオを見上げた。
    「どうした?食べないのか?」
    「ヨミエルの分の準備がまだだろう?こういうモノは一緒に食べるのが美味しいのではないだろうか」
    そう言われるとヨミエルは、なるほどと笑みを浮かべた。
    「たしかに。せっかくのイイ景色だし、久しぶりのキミとの食事だったな」
    目の前にそびえ立つのは、白亜の建物…博物館だ。その中に展示されているモノを予感させる豪華な造りとなっている。手前に広がるよく手入れされた芝生には、それぞれ思い思いのくつろぎ方をする人々が集まっていた。木陰に設置されたベンチに座っていたヨミエルは、邪魔にならないよう折りたたむことが出来る弁当箱を取り出すと、シセルに注目されながらフタを開いた。
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    2人旅

  • この関係は

    20230519(金)22:23
    「世の中変わっていくモノばかりだな。キミとの時間があまり取れなくなってきた」
    「……そうだろうか。こうして、私が会いにいくのは変わらないようだが。それに、ヨミエルが毎度出迎えてくれるのも相変わらずだ」
    「………。そう…だな」
    「ああ。だから私たちは変わらず”相棒”でいられるんだろう。……私は嬉しく思っている」
    「―――っ!」
    ヨミエルが息を呑む音が聞こえた気がした。……どうやら私の思い違いだったらしい。
    ヨミエルは「ありがとう」と小さく呟いただけだった。
    「それで?今日は何の用かな?」
    いつものように聞かれたので、いつものように答えることにする。
    「いや何、ただの“相棒”として遊びに来ただけだ。少しカオを見たくなったんだが、迷惑だっただろうか」
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  • 本日の予定

    20230508(月)22:36
    「シセル」
    そう呼ぶコエに振り向くと、彼––ヨミエルがほほえむのがわかった。……実際、彼の目元は私のカラダのように真っ黒なサングラスに覆われているのだが、そこは長年の付き合いによるカンというトコロだろう。
    『なんだろうか』
    応える私のコエも、少しばかり弾んでいるのは……悪くはない。これからどこに行こうか?今日の予定を考えるのに、お気に入りのベッドから下りるのも悪くなさそうだ。
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  • 寝顔

    20230507(日)13:46
    「シセル。ちょっと急いで、静かに来てくれる?」
    「なかなかムチャを言ってくれる女刑事さんだな。何か用だろうか」
    「見て見てこのミサイルのカオ。さっき広い原っぱがある公園で遊んできたんだけど、満足そうでしょ」
    「たしかに。この世の幸せをいっぺんに集めたような寝顔だな。夢の中でもにぎやかに走り回っていそうだ」
    「こういうカオを見ちゃうと、また遊びに行こうってキブンになるよね。今度シセルも一緒にどう?」
    「そうだな…。小犬クンのように走り回るとはいかないが、草の感触を楽しむのもよさそうだ。その誘いに乗るとしよう」
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  • 花畑にて

    20230504(木)21:04
    小さなレディの手のひらで、小さな花が次々と編まれていく。それはやがて冠のカタチになり、色とりどりに飾り付けられる。私が興味深く眺めて待っていると、よしと小さなレディは満足げに頷いて立ち上がった。
    「はい、シセルちゃん。プレゼントだよ」
    そう言うと、小さなレディは私のアタマの上にそっと花の冠を乗せた。私は目を瞬かせ、落とさないように慎重に座り直す。ちょうどいい具合に耳に引っかかり、私を飾りつける位置に収まったようだ。普段は何も乗っていない方がいいが、こういうのも悪くない。
    「いいんじゃない?似合っているよ、シセル」
    手のひらほどのコンパクトなカメラを構えたリンネが、私にレンズという大きな目を向けて、シャッターを押す。その横でヨミエルも、リンネより立派で本格的なカメラのシャッターを切っていた。
    「たまにはこういう可愛らしいモンもいいな。とても絵になる」
    「そうでしょ。カノン、お花の冠作るの練習したんだよ」
    ボクのコトも見てください!とばかりに走り回る子犬くんを捕まえ膝の上に乗せると、カノン嬢はもう一つ冠を編み始めた。その様子をパシャリとリンネがカメラに収める。ヨミエルは辺りを見渡し2、3歩離れ、この花畑全体が収まるようにカメラを構えると、「撮るぜ」とヒトコト告げ、春風に吹かれるワレワレを今日という記念に残した。その日はとても暖かく、よい散歩日和だった。
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  • ポメポメミサイル

    20230425(火)20:31
    「ミサイルー!おいでー!」
    はいッ!何でしょうかッ。カノン様が可愛らしいコエでボクのことを呼んでいます。
    こういう時は美味しいオヤツをくれるか、優しくギュッと抱きしめてくれるか、お気に入りのオモチャで遊んでくれるか…とにかく。何かボクにとっていいコトがあります。だから足取りも軽く、急いで駆けつけられるワケです!
    どうですかッ!ボク、スゴいですよねッ!!
    「ふふふッ、くすぐったいよミサイル」
    ボクのご主人はリンネ様ですが、カノン様に抱きしめられると、リンネ様の時以上にココロの奥底からうれしいキモチがあふれ出しますッ。
    生まれた時からカノン様に会いたくて会いたくて仕方なかったような気がします。カノン様との出会いは、きっと運命だったのにちがいありません!だって、こんなにもチカラいっぱいホエられて甘えられるのですからッ。
    ゴキゲンなボクたちを見て、シセルさんが「お似合いのコンビだな」って言ってくれました!
    ええ、ボク。これからもずっとカノン様に着いて行きますともッ!
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  • 絵を描く

    20230420(木)20:40
    ヨミエルの手が迷いなく白いスケッチブックの上をなぞる。
    何を描いているのか聞いたら「キミのコトだ」と言われたので大人しくしていたのだが、特に“今”を描いているのではないと分かったので、ヨミエルのヒザの上におジャマしている。
    イスの上に座って静かに眺めているのもいいが、こうして近くで絵を描く様子を眺めるのも悪くない。
    サッサッサと色鉛筆で、大人の私のカラダを黒色に塗る。スカーフを赤い色鉛筆で結び目まで丁寧に塗る。
    それらの音を聴きながら、私はヨミエルとの10年を想った。
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  • 戸ごしの戯れ

    20230416(日)21:30
    水音に紛れて、カツンと戸の外に何かがぶつかる音がした。
    ヨミエルはシャワーを捻り、流れ出る水を止める。
    そして振り返ると、磨りガラス越しに微かにシセルの黒い肉球と鼻先が張り付いているのを認めた。
    「もう少しで終わるからな。まだ待っていてくれよ、シセル」
    ヨミエルを探してフンフンと鼻先を動かす様は、ひと言で言うならば、とても可愛い。今すぐになでてもいいトコロだが、流石にハダカではいただけない。こういう時にカメラを持っていないことを若干恨みつつ、ヨミエルはシャワーを再び捻り、残っていた泡を洗い流す。
    戸の外のシセルはと言うと、飛び跳ねる水にターゲットを移したようだ。小さな手をパタパタと動かし、生き物のようなそれを捕まえようとする。
    「………」
    子猫であり、まだ何にでもキョーミを示す生き物というのはなぜこんなにもフシギで、こんなにも可愛いのか。アシタールに貫かれて、人間味を徐々に失っていくヨミエルの唯一の癒しであった。
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  • 拠点へ到着

    20230413(木)16:50
    カタチが同じ色とりどりのドアが並ぶ廊下を歩き、ヨミエルは水色のドアの前で立ち止まった。ロビーで受け取ったカギを取り出してかぎ穴に入れ、回す。
    そっとドアノブを押すと部屋に入り、片手で持っていた黒いキャリーケースを床に下ろした。
    「着いたぜ。ココがオレたちの拠点だ」
    ヨミエルがキャリーケースを開けると、シセルがゆっくりとアタマを出した。キケンがないか辺りを確認し、慎重に前足を踏み出す。
    部屋の中心に鎮座するふかふかで大きなベッドや、サイドテーブルに置かれたカラフルに彩られたランプ。その横の黒いデンワはいつでも使えるようにピカピカに磨かれている。小さいイスには座りやすそうなクッションがあり、カベには絵が飾られている。どれもシセルの気を引くのには充分だ。
    (コレなら少しぐらいアヤツってもコマらないだろうな)
    シセルがバスルームの中まで入って広さを確かめていると、ヨミエルは運び入れた赤いキャリーケースを開けて、中身を整理し始めた。洋服に、充電器などの小物類、それに弁当だ。
    「まずは腹ごしらえだな。弁当を食べるのにちょうどいい場所があるんだ」
    「そいつはいいな。早速出かけるとしようか」
    シセルはシッポをピンと立てると、ヨミエルの足にすり寄った。実は言うと、弁当から漏れ出すニオイがずっと気になっていたのだ。確実に、好物が入っている。その予感にシセルのシッポが小刻みに揺れ、それを見たヨミエルは笑っていいニオイのする弁当を持ち上げた。
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    2人旅

  • 夜の散歩

    20230410(月)20:09
    細く入り組んでいる道を黒猫が進む。
    とっとっとと軽く弾む足取りはどことなく急いでいるようで、確実に目的地へと進んで行く。
    ビルの横道を通り過ぎ、ブロック塀に飛び乗り手入れされている庭の横を抜ける途中で、ふと立ち止まってカオを上げた。
    今夜はミゴトな満月である。
    黒猫は2、3度夜の空気を嗅ぐように鼻を動かし、ブロック塀から飛び降りた。
    そしてとっとっとと狭い路地を抜け、巨大なオブジェがある公園を突っ切り、食欲をそそるいいニオイがする建物の脇を進んでたどり着いたのは、忘れられたモノがたくさん置かれているゴミ捨て場であった。
    ある程度の規則性を持って積み重ねられたモノたちは、黒猫から見れば都合のいい遊び道具だ。いくつものモノをゆっくりと眺めるように進んでいた黒猫は、ドンと置かれていたソファーの前で立ち止まると、そこに足を組んで座っていたオトコにすり寄り、ひと声鳴いた。
    するとソファーに座っていた赤いスーツのオトコは、ゆっくり起き上がり手を伸ばして黒猫を迎え入れた。
    「ありがとうな、シセル。いい散歩だった」
    そのコトバに黒猫は身を震わせてもう1度鳴き、軽く毛づくろいをする。オトコはソファーからゆらりと立ち上がると、夜空を見上げた。
    「…今夜は月がキレイだな」
    オトコが呟くと、黒猫がにゃあと応える。黒猫はシッポを振って勢いを付け、オトコの肩に飛び乗った。
    「帰るか、シセル」
    肩に前足をかけた黒猫をしっかりと受け止め、優しくなでる。オトコは黒猫にコエをかけ、暗い夜道に歩みを進めた。
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  • お守り

    20230408(土)19:58
    「リンネ。それは何のお守りなのだ?」
    「無病息災って言って、病気をせずに元気で健康でありますようにっていうモノよ。なかなか初詣にいけなかったんだけど、ようやく買えたの。かわいいでしょ」
    「たしかに。刺繍された猫たちがいいカンジで転がっているな。6匹もいて、シッカリと守ってくれそうだ」
    「ココにアナタもトリツいてくれるとカンペキなんだけどな。ホラ、あたしのイノチを救いやすくなるかも知れないよ」
    「トリツくコトはできるが…気軽にムチャを言ってくれるな。神サマのようなミラクルパワーを期待されてもコマる」
    「あたしにとっては《死者のチカラ》もミラクルパワーね。アナタがいれば、どんなピンチでも乗り越えられるんだから」
    「…そうか。ならば、期待に応えるとしよう。神サマと協力してキミを守るのも悪くない」
    「ええ。これからも頼んだわよ、シセル!」
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  • 日常のアルバム

    20230406(木)20:41
    「ジョード刑事。頼みがあるんだが…シセルの写真を見せてくれないか?」
    休憩に向かう道すがら、スレちがったヨミエルとたわいもない話をする中でそう言われ、オレは一も二もなく了解した。元々シセルくんの飼い主はヨミエルだ。気になってしまうキモチはわかる。
    次の日、オレはアルバムを携え待ち合わせの休憩室へ向かった。トビラを開けると、よく目立つ赤いスーツを着たヨミエルがテーブルに軽く腰かけ、コチラに背を向けて待っている。「やあ」とコエをかけると、ヨミエルは振り返って立ち上がった。
    「待たせたな、ヨミエル。コレでいいかい?」
    「ああ、ありがとう。ずいぶんたくさんあるんだな」
    「シセルくんと暮らし始めてもう10年を越えたんだ。それなりにたまるモノだよ」
    「……。そうか。それもそうだな」
    そう言うと、ヨミエルは1枚1枚丁寧にアルバムのページをめくり始めた。じゃらしを追いかけて遊んでいるスガタ、ソファーで腹を出して寝ているスガタ、箱に入ってのんびりしてるスガタ、コチラに何かを訴えているスガタ。
    最近だと、パーティ用の帽子を被って、小さなケーキを前にすましているスガタが写されている。その日はシセルくんと出会った記念日で、カノンご自慢のシカケも一緒に撮っていたんだったな。
    「…元気に暮らしてるんだな、シセルは」
    ゆっくりとページをめくりながら、ヨミエルが呟く。
    「そうだな。ケガするコトもなく、カゼもひかずで元気に過ごしてるよ」
    それは“アシタール”がシセルくんのカラダに埋め込まれているおカゲというコトなのだが。オレが肩をすくめると、ヨミエルは小さく笑った。
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  • 飛行機にて

    20230405(水)16:29
    カウンターで真っ赤なスーツケースを預け、ヨミエルはシセルが入った真っ黒なキャリーケースを片手に歩く。搭乗手続きを済ませて飛行機に乗り込み、クビにスカーフを巻いたキャビンアテンダントの指示通りにキャリーケースを足元に置いて、待つことしばし。予定時刻通り、ヨミエルの乗った飛行機は轟音を上げて空へと飛び立った。
    さて。相棒の様子はどうだろうとヨミエルがキャリーケースに手を入れると、まんまるな瞳をさらにまんまるくして、シッポを膨らませたシセルが“コア”を通じて話しかけてきた。
    「な。何だったのだ、さっきの振動は…」
    「飛行機が離陸するための助走さ。今は空の上だよ」
    「空の上……」
    「シセルは飛行機は初めてだったな。いいか。ブジに目的地にたどり着きたかったら《死者のチカラ》は使わないコトだ。特にエンジンとツバサにはトリツかないようにな」
    「…そこまで言うというコトは、何か大変なコトが起こるのだろうか」
    「モチロンだ。もし、アヤツった場合…エンジンとツバサによって飛ぶ飛行機のバランスが崩れ、墜落するコトになる」
    「あっという間にたくさんの《死》が生まれてしまうというワケか…。そうならないように気を付けよう」
    そう答えるとシセルはキャリーケースの中で丸く座り直した。どうやら目的地まで眠って過ごすらしい。
    「そうだな。オレは…雑誌でも読んでいるか。着いたらちゃんと起こすよ」
    ヨミエルは目を瞑ったシセルのアタマをひと撫ですると、キャリーケースのフタを閉じ、前の座席から雑誌を抜き取った。目的地まで、あと少し。ぺらりとページをめくったヨミエルは、次の予定を考えるのであった。
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    2人旅

  • もふもふ

    20230403(月)21:21
    通路にもふもふした物体が落ちている。モップのようだが、明らかにシセルだ。
    「…………」
    パソコン作業をして、ノドが乾いたなと席を立ち、そういえばひとり遊びしていた音が聞こえなくなったなと思っていたのだが。
    暖かい陽射しを黒い毛皮に浴びてお腹を見せ、幸せそうな寝顔をしている相棒を眺めていると、コチラまで幸せになってくる。オレは思わず頬を緩ませ、持っていたコーヒーカップを近くのテーブルに置いた。相変わらず無防備なシセルの側にしゃがみ込むと、ふさふさな毛の中へそっと手を埋める。
    「………あったかいな」
    適度に暖まった黒い毛は、アシタールが埋め込まれて冷たいカラダになったオレに、温度を伝えてくれる。優しくなでてふさふさ具合を堪能してると、パチリと目を覚ましたシセルがノドを鳴らし始めた。一定のリズムを奏でる振動が、手に伝わってくる。
    「そうか。オマエは生きているんだな、シセル」
    手を腹の中心部分に移動させて、更になでる。すると、しっかりとオレの手をつかんだシセルがお返しとばかりに舐めてきた。
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  • 死者のチカラの使い方

    20230402(日)14:28
    「ねえシセル、手伝ってくれる?シセルさんがスコーンを焼いてくれたんだけど、ジャムのビンが開かないの」
    “コア”を通じた会話をしていたところに現れたリンネに、私とヨミエルは同時にカオを向けた。差し出された小さなビンは、きっちりフタが閉じられている。
    「わかった。やってみよう」
    ヨミエルのヒザに乗っていたカラダから離れた私は、フタにトリツき、ヒネりあげた。だが、フタはとても手強い。どんなにアヤツっても硬くてピクリとも動かなった。
    (何かいい手はないのか…?)
    「…いいかい、シセル。それにリンネ刑事。こういうのはコツがあるのさ。こう……緩めるフリをして、一気にチカラを入れるんだ」
    全力でアヤツっても全く変わらない様子に、ヨミエルが手を動かし、ジェスチャー付きでビンをヒネるアドバイスをしてくれる。こういうコトはヨミエルの方が上手だ。
    (なるほど。力加減が重要なのだな)
    アドバイスを受けて、私はもう1度フタをアヤツル。すると、カポンと音を立ててフタがビンからハズれた。
    「やった!ありがとうシセル!」
    「よくやったな。これで美味しいスコーンが食べられる」
    2人の笑顔に、私はフタを震わせて応えた。私もお裾分けをもらいたい。そういう想いを込めて。
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  • ウソ

    20230401(土)17:12
    「エイプリルフールだね、ミスター・ゴースト。キミはラブリーな“ウソ”をつかないのかい?
    「…死者の世界では、思ったコトがそのまま伝わる。隠しゴトはできないのだ」
    「ふーん、そうなんだね。じゃあちょいとボクにダマされてくれよ。ちょっとした息抜きだと思ってさ」
    「(ヒドイな)」
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