長い夜が明けた後の話(運命更新後)

ガラス職人が、ここにいても届くほどのアツい棒をネコのカタチに作り上げている。透明なカラダに、涼しげな色合いの耳。巻き付けたシッポも透き通っている。
リンネが「面白いわね」と釘づけになるのもわかる気がする。こうして作り上げられるのをずっと見ていたくなってしまうのだ。お気に入りのオモチャで遊ぶ時のキモチに似ている気がする。

「何かリクエストはありますか?」

視線を向けると、一区切りついたのか汗を拭った職人がワレワレにコエをかけてきた。
「どうしよう…」とリンネは迷った様子だ。人差し指をトントンとアゴに当てると、私を見下ろして「シセルはどうする?」と尋ねてきた。そう急に聞かれてもコマるのだが。私は台の上で姿勢を正し、リンネと向き合った。

「今日来れなかったヨミエルさんたちのおみやげにしてもらう?ほら。ネコって可愛いし」
『それはいいな。フィアンセ氏にはアクセサリーにしてもらうのがいいだろう』
「じゃあ、ペンダントってできますか?」
「いいですよ。この黒猫ちゃんをモデルにしましょうか?」
「お願いします。よかったね、シセル」
『ああ。ヨミエルたちもきっと喜ぶだろう』

リンネの答えを聞き、職人氏は頷いて新しいガラス棒を手に取った。青白い炎に熱せられて、徐々にカタチが変化していく。
…何だか、“死者の世界”で見る“タマシイ”に似てる気がしてきた。ヨミエルに聞いたら、何と答えが返ってくるだろうか。
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