長い夜が明けた後の話(運命更新後)
「ジョード刑事。頼みがあるんだが…シセルの写真を見せてくれないか?」
休憩に向かう道すがら、スレちがったヨミエルとたわいもない話をする中でそう言われ、オレは一も二もなく了解した。元々シセルくんの飼い主はヨミエルだ。気になってしまうキモチはわかる。
次の日、オレはアルバムを携え待ち合わせの休憩室へ向かった。トビラを開けると、よく目立つ赤いスーツを着たヨミエルがテーブルに軽く腰かけ、コチラに背を向けて待っている。「やあ」とコエをかけると、ヨミエルは振り返って立ち上がった。
「待たせたな、ヨミエル。コレでいいかい?」
「ああ、ありがとう。ずいぶんたくさんあるんだな」
「シセルくんと暮らし始めてもう10年を越えたんだ。それなりにたまるモノだよ」
「……。そうか。それもそうだな」
そう言うと、ヨミエルは1枚1枚丁寧にアルバムのページをめくり始めた。じゃらしを追いかけて遊んでいるスガタ、ソファーで腹を出して寝ているスガタ、箱に入ってのんびりしてるスガタ、コチラに何かを訴えているスガタ。
最近だと、パーティ用の帽子を被って、小さなケーキを前にすましているスガタが写されている。その日はシセルくんと出会った記念日で、カノンご自慢のシカケも一緒に撮っていたんだったな。
「…元気に暮らしてるんだな、シセルは」
ゆっくりとページをめくりながら、ヨミエルが呟く。
「そうだな。ケガするコトもなく、カゼもひかずで元気に過ごしてるよ」
それは“アシタール”がシセルくんのカラダに埋め込まれているおカゲというコトなのだが。オレが肩をすくめると、ヨミエルは小さく笑った。