長い夜が明けた後の話(運命更新後)

「ボクだけ仲間ハズレってワケかい?ラブリーじゃないねえ」

警察署から出た中庭で私とヨミエル、それとジョード刑事と話しているところに、白い警部さんがラブリーなステップで踊り込んできた。
ヨミエルはあからさまにイヤなカオをして警部さんをにらんだが、全く気にしていない様子だ。
と言っても“コア”を通じた会話なので、私のコエは最後の運命更新に関わっていない者には、聞こえるコトはない。
ジョード刑事は肩をすくめると「なんてコトない話さ」とカバネラ警部に告げた。

「今日も平和だなって話をしていただけだ、カバネラ。ヨミエルくんがチームに入ってくれてから検挙率が上がっただろう?」
「ふーん。そこにいる黒猫くんも会話に参加してるように見えたんだけどな。どういうコトだか教えてくれるかな、相棒」

(さすがにスルドイな。ラブリーに踊ってるだけではないようだ)

私がココロの中で呟くと、ヨミエルが私に視線を向けた。何か考えるようにアゴに手を当て、次にジョード刑事に視線を移し、クビを傾げる。“内緒話”をしてるコトを言うのか?というトコロだ。対してジョード刑事はしばらく黙って私を見つめ、カバネラ警部に向き直った。

「その通りだよ、カバネラ。この黒猫クンにはフシギなチカラがあるんだ」
「へえ。そいつはおどろいたな。どうやって話しているんだい?」
「それは、ココだ」

カバネラ警部の質問に、ジョード刑事がトンと自分のアタマを指差す。「アタマかな?」とカバネラ警部が聞くと、ジョード刑事は頷いた。

「黒猫クンが直接語りかけてくれるんだ。オマエさんには信じられないかもしれないがな」
「そうだね。ボクはユメ見がちなタイプじゃないんだ。そこのトコロは知ってるだろう?」

探るようなカバネラ警部の視線に、ジョード刑事はあくまでも笑って返す。ピンと張り詰めたような空気に差し込まれたのはヨミエルのコエだった。

「ジョード刑事が言ってるコトは本当さ、カバネラ警部」

“コア”が繋がってる私にはわかる、暗い感情。運命が変わる前も、変わった後も、ヨミエルはカバネラ警部によって人生を変えられてしまっている。ここにいる者全員の視線を集めたヨミエルは手を上げ、指を2本伸ばしてピストルのカタチにすると、真っ直ぐにカバネラ警部に向け、ニヤリと笑った。

「何だったら…アンタ。1回死んでみるか?そうすれば仲間に入れる」
「……痛いのはイヤだね。やっぱりエンリョしておくよ」
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