長い夜が明けた後の話(運命更新後)
「シセルちゃんって、このままずっと子猫のままなのかな?」
みんなが揃っての夕飯が終わり、家族団らんのひと時。私を持ち上げた小さなレディが目を合わせてギモンを投げかけてきた。
おそらく、点けっぱなしのテレビで紹介している猫たちの暮らしの影響だろう。
今までも何度か聞かれてきて、その度に私の事情を知っているジョード刑事が「そのうち大きくなるよ」と誤魔化してきたが、今回は直接私に聞きたかったらしい。ジョード刑事は新聞を読みながらコチラの様子を伺っている。
(さあ。どうだろうな)
アタマに“コア”のないカノン嬢には、私の“コエ”は届かない。だから持ち上げられたまま、好奇心たっぷりの小さなレディにシッポをゆらして答えることにした。
「いつもいっぱいゴハンを食べてるのにね」
(そうだな。とても美味しくいただいている)
「いっぱい遊んでるしお散歩もたくさんしてるよね」
(ああ。今日もキミと遊んで、《パトロール》もすませてきたな)
アシタールの影響で、《運命更新前》に死も生もなく存在していたヨミエルのように生命活動を停止している私の1日は、フシギと前と変わるコトはなった。
お腹が減れば鳴いてゴハンをねだり、お腹がいっぱいになったら日差しの当たる暖かいトコロでひと眠りし、目が覚めたら自分の《縄張り》を散歩ゴゴチでパトロールする。
変わったコトと言えば、アタマに“コア”のあるジョード刑事にゴハンの好みを伝えられるようになったのと、新たな家になった場所でシカケに凝ったレディが飽きるまで遊ぶようになったコト。それに、ヨミエルやリンネのトコロに寄るようになり《縄張り》の範囲が広くなったコトだろう。
運命が変わる10年前、ヨミエルと暮らしていた時に好物だったモノを食べるコトができるし、適度な運動ができるようになって満足している。
「カノンが大きくなって、おばあちゃんになっても、シセルちゃんはそのままなのかな」
ソファーに座った小さなヒザの上に下ろされ、アタマをなでられる。コエの響きにさびしげな空気を感じ、私はノドを鳴らした。コレで少しでも慰められるといいのだが。
(おそらくそうだろう。だが……)
少しばかり元気のなくなったカノン嬢を、ジョード刑事が抱き上げる。そのトナリでアルマ夫人がほほ笑む。ヒザの上から降りるカタチになった私は、ソファーの背に上り、楽しげなコエを上げる3人に目を細め「にゃあ」と鳴いた。
(いつまでも、キミたちの側にいる。それはヤクソクしよう)
コレばかりは、ジョード刑事やカノン嬢、アルマ夫人にも聞こえて欲しい。ココロからそう思った。
みんなが揃っての夕飯が終わり、家族団らんのひと時。私を持ち上げた小さなレディが目を合わせてギモンを投げかけてきた。
おそらく、点けっぱなしのテレビで紹介している猫たちの暮らしの影響だろう。
今までも何度か聞かれてきて、その度に私の事情を知っているジョード刑事が「そのうち大きくなるよ」と誤魔化してきたが、今回は直接私に聞きたかったらしい。ジョード刑事は新聞を読みながらコチラの様子を伺っている。
(さあ。どうだろうな)
アタマに“コア”のないカノン嬢には、私の“コエ”は届かない。だから持ち上げられたまま、好奇心たっぷりの小さなレディにシッポをゆらして答えることにした。
「いつもいっぱいゴハンを食べてるのにね」
(そうだな。とても美味しくいただいている)
「いっぱい遊んでるしお散歩もたくさんしてるよね」
(ああ。今日もキミと遊んで、《パトロール》もすませてきたな)
アシタールの影響で、《運命更新前》に死も生もなく存在していたヨミエルのように生命活動を停止している私の1日は、フシギと前と変わるコトはなった。
お腹が減れば鳴いてゴハンをねだり、お腹がいっぱいになったら日差しの当たる暖かいトコロでひと眠りし、目が覚めたら自分の《縄張り》を散歩ゴゴチでパトロールする。
変わったコトと言えば、アタマに“コア”のあるジョード刑事にゴハンの好みを伝えられるようになったのと、新たな家になった場所でシカケに凝ったレディが飽きるまで遊ぶようになったコト。それに、ヨミエルやリンネのトコロに寄るようになり《縄張り》の範囲が広くなったコトだろう。
運命が変わる10年前、ヨミエルと暮らしていた時に好物だったモノを食べるコトができるし、適度な運動ができるようになって満足している。
「カノンが大きくなって、おばあちゃんになっても、シセルちゃんはそのままなのかな」
ソファーに座った小さなヒザの上に下ろされ、アタマをなでられる。コエの響きにさびしげな空気を感じ、私はノドを鳴らした。コレで少しでも慰められるといいのだが。
(おそらくそうだろう。だが……)
少しばかり元気のなくなったカノン嬢を、ジョード刑事が抱き上げる。そのトナリでアルマ夫人がほほ笑む。ヒザの上から降りるカタチになった私は、ソファーの背に上り、楽しげなコエを上げる3人に目を細め「にゃあ」と鳴いた。
(いつまでも、キミたちの側にいる。それはヤクソクしよう)
コレばかりは、ジョード刑事やカノン嬢、アルマ夫人にも聞こえて欲しい。ココロからそう思った。