長い夜が明けた後の話(運命更新後)

「ベルデューク博士は、私にこの世の真理を説いてくださいました」

湖のように深い色の髪を持つレディは、ゆっくりとコトバをたゆらせた。

「もしかすると、ラビリンスシティの真実もその中に含まれていたのかもしれません」

ウデに抱いている私にではなく、どこか遠くに髪と同じ色の瞳をシンと向け。

「博士を殺したのは私ではないと弁護士様は仰いました。しかし、博士が伝えようとした真理を消してしまったのは、私です。ですから、私はその罪を償って…生きて行こうと思います」

ツイと彼女の手をなめたのは、彼女の表情がとても彼と―最後の運命を更新した時のヨミエルと似ていたからだ。

(それが、アンタの答えだろうか)

驚いて視線を落とした彼女には、死者のコアがない。これからもきっと、作られるコトはない。
それが、彼女の決めた《道》なのだ。

(アンタと会うのは、これっきりになりそうだな)

撫でようとした彼女の手からするりと抜け出すと、私は薬草と花のニオイが混ざりあった庭を後にした。
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