夜明け前の話(運命更新前)

「ヤツらがオレに手を貸してくれるそうだ。まあ、アレだけ証拠を見せればトーゼンだな」

そう言うと、ヨミエルは私のわきの下に手を入れ、ゆっくりと持ち上げた。
正直、このだっこのされ方は好きではないのだが、ヨミエルのカオを近くで見るコトができるので、しっぽを揺らすだけの抵抗にしている。

「……大きくなったな、シセル。10年前とは大ちがいだ」

この日は窓から入ってくる光のせいで、いつもはハッキリ見えるヨミエルのカオが見えづらかった。
そして、声も。いつもとちがって震えていて。

「もう、後戻りはできないんだよ。……オレも、お前も」

(…あの日。ヨミエルは泣いていたのかもしれない)
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