夜明け前の話(運命更新前)
細く入り組んでいる道を黒猫が進む。
とっとっとと軽く弾む足取りはどことなく急いでいるようで、確実に目的地へと進んで行く。
ビルの横道を通り過ぎ、ブロック塀に飛び乗り手入れされている庭の横を抜ける途中で、ふと立ち止まってカオを上げた。
今夜はミゴトな満月である。
黒猫は2、3度夜の空気を嗅ぐように鼻を動かし、ブロック塀から飛び降りた。
そしてとっとっとと狭い路地を抜け、巨大なオブジェがある公園を突っ切り、食欲をそそるいいニオイがする建物の脇を進んでたどり着いたのは、忘れられたモノがたくさん置かれているゴミ捨て場であった。
ある程度の規則性を持って積み重ねられたモノたちは、黒猫から見れば都合のいい遊び道具だ。いくつものモノをゆっくりと眺めるように進んでいた黒猫は、ドンと置かれていたソファーの前で立ち止まると、そこに足を組んで座っていたオトコにすり寄り、ひと声鳴いた。
するとソファーに座っていた赤いスーツのオトコは、ゆっくり起き上がり手を伸ばして黒猫を迎え入れた。
「ありがとうな、シセル。いい散歩だった」
そのコトバに黒猫は身を震わせてもう1度鳴き、軽く毛づくろいをする。オトコはソファーからゆらりと立ち上がると、夜空を見上げた。
「…今夜は月がキレイだな」
オトコが呟くと、黒猫がにゃあと応える。黒猫はシッポを振って勢いを付け、オトコの肩に飛び乗った。
「帰るか、シセル」
肩に前足をかけた黒猫をしっかりと受け止め、優しくなでる。オトコは黒猫にコエをかけ、暗い夜道に歩みを進めた。
とっとっとと軽く弾む足取りはどことなく急いでいるようで、確実に目的地へと進んで行く。
ビルの横道を通り過ぎ、ブロック塀に飛び乗り手入れされている庭の横を抜ける途中で、ふと立ち止まってカオを上げた。
今夜はミゴトな満月である。
黒猫は2、3度夜の空気を嗅ぐように鼻を動かし、ブロック塀から飛び降りた。
そしてとっとっとと狭い路地を抜け、巨大なオブジェがある公園を突っ切り、食欲をそそるいいニオイがする建物の脇を進んでたどり着いたのは、忘れられたモノがたくさん置かれているゴミ捨て場であった。
ある程度の規則性を持って積み重ねられたモノたちは、黒猫から見れば都合のいい遊び道具だ。いくつものモノをゆっくりと眺めるように進んでいた黒猫は、ドンと置かれていたソファーの前で立ち止まると、そこに足を組んで座っていたオトコにすり寄り、ひと声鳴いた。
するとソファーに座っていた赤いスーツのオトコは、ゆっくり起き上がり手を伸ばして黒猫を迎え入れた。
「ありがとうな、シセル。いい散歩だった」
そのコトバに黒猫は身を震わせてもう1度鳴き、軽く毛づくろいをする。オトコはソファーからゆらりと立ち上がると、夜空を見上げた。
「…今夜は月がキレイだな」
オトコが呟くと、黒猫がにゃあと応える。黒猫はシッポを振って勢いを付け、オトコの肩に飛び乗った。
「帰るか、シセル」
肩に前足をかけた黒猫をしっかりと受け止め、優しくなでる。オトコは黒猫にコエをかけ、暗い夜道に歩みを進めた。