夜明け前の話(運命更新前)

『ホネになったら、みんな同じよ』

 なにかの拍子にささやかれた彼女の言葉はしかし、全てのヒトに当てはまるワケではなかった。

 例えば、インセキの破片に貫かれムジュンした存在になった者。
 例えば、生と死が瞬間的に繰り返されるようになった者。

「…………」
  
 雨風に晒され始めて日が浅い白いカタマリは、真新しさと鋭さで触れる者を等しく傷つけていく。
 刻まれたばかりの、とても愛しくてとても大切な名前から手を離すと、ヨミエルは赤い線を強く握りこんだ。
 
「同じ、か」

 この墓の主は、ヨミエルに会うことを望み。やがて同じ姿になることを夢見て眠りについたというのに。

「ホネにすらなれないオレは、どうしたらいい……?」

 ゆっくりと開かれた彼の手には、なにも残っていなかった。
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