鬼滅の刃
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それから七日後、全快した炭治郎と○○は念願の柱稽古に参加していた。
まずは宇髄によるしごき、基礎体力向上から始まった。
全員が上半身裸で参加する中、○○だけは隊服の白シャツを着用していた。
上の隊服を脱ぐだけで倒れる隊士が続出し、白シャツの着用を義務づけられたのだ。
「よォよォ!久しいな、お前また上弦と戦ったんだってな。五体満足とは運の強ェ奴だ。ここでなまった体を存分に叩き起しな。」
「はい!頑張ります!」
久しぶり会う宇髄に、炭治郎は輝かしい笑顔で返事をし、それに宇髄もにこやかに笑った。
「○○も久しぶりだなぁ!会いたかったぜ、今日もド派手に可愛いじゃねえか。お前まだ嫁に来ねぇのか?俺はいつでも迎え入れるぞ」
『え、遠慮します…』
遊郭の任務が終わり、宇髄から手紙が届くようになり、彼とはそれからずっと文通を続けている。
文通をしているのは師匠、鋼鐵塚、宇髄だ。
文でも口説き言い寄ってくる宇髄に、○○はいつか絆されてしまいそうで目を逸らしながら断った。
ちなみに鋼鐵塚の文もだいたい求婚なのだが全部お断りしている。
それでも彼らは諦めないが。
久しぶりに可愛い可愛い○○に会えた宇髄は、優しく笑って頭を撫でた。
炭治郎はなんの話かわからず、首を傾げた。
「あらーー!!」
「やっと来たのか!」
「たくさん食べてね!」
「『ありがとうございます!!』」
須磨、まきを、雛鶴から握り飯を貰った二人は美味しそうにそれを頬張った。
嫁三人は嬉しそうに笑って二人を見ていた。
「で、○○くんはまだ家に来ないの?」
「遠慮せずに住んでいいんだぞ?私達も天元様も歓迎してるんだから」
「そうですよぉ○○くんがお嫁に来てくれたらもっと楽しくなりますよね!!」
「さあ、○○!雛鶴達もこう言ってるんだ。俺が絶対に幸せにするから嫁に来ねぇか?」
宇髄家四人に囲まれ、○○は冷や汗を流して目を泳がせた。
『えっと、えっとぉ…すみません!!!』
なんとか振り切り、修行に戻った○○に嫁三人は悲しそうな顔をする。
「また駄目だったわね」
「意外と強情ね」
「そんなに嫌なんでしょうか?」
「…まあ、照れてるだけだろ!なんにせよ俺は諦めねぇよ、落とす自信があるからな」
ニヤリと笑う宇髄に、走り込みに戻っていた○○は悪寒がしてふるりと震えた。
十日程で次の柱の所へ行く許可が下りる。
炭治郎と○○は見送る宇髄らに手を振って、時透無一郎の邸へと向かった。
『時透さんって私初めて会うなぁ』
「ああ、そうか。時透君はいい人だよ! ○○もすぐに友達になれるさ!」
『本当に?楽しみだなぁ』
無一郎邸に着いた炭治郎と○○は、早速無一郎から稽古をつけてもらっていた。
無一郎から習うのは高速移動の稽古だった。
「そうそう!炭治郎も○○もさっきより早くなってるよ!筋肉の弛緩と緊張の切り替えを滑らかにするんだ!!そうそう!そうしたら体力も長く保つから!足腰の動きも連動しててばっちりだね!次の柱の所に行っていいよ炭治郎! ○○!」
二人同時に斬りかかっても無一郎は臆することなく、全ての攻撃を受けて的確にアドバイスをしていく。
二人より年下でも、実力は無一郎のが倍あった。
柱との格の違いを思い知る。
炭治郎と○○は言われた通りに動けており、無一郎は満足して可愛らしく笑った。
「えっ!?もういいの!?」
『わ、私もですか!?』
「いいよ」
「五日しか経ってないよ」
流石に早すぎるのでは、と二人が詰め寄っても無一郎の返事は変わらなかった。
「だって二人とも言ったことちゃんとできてるもん」
「ええ~~~」
三人の話を聞いて、周りで見ていた隊士達がおずおずと近づいてきた。
「じゃ…じゃあ俺たちも…もう二週間いるので…」
その言葉を聞いた無一郎は、可愛らしい笑顔を一瞬で冷めた無表情に戻し、淡々と言い放った。
「何言ってるの?君たちは駄目だよ。素振りが終わったなら打ち込み台が壊れるまで打ち込み稽古しなよ」
無一郎の冷たい言葉に空気が凍った。
炭治郎と○○との扱いの落差に、隊士達は涙を流した。
「○○は雪の呼吸使いなんだっけ。動きが霞の呼吸に近いね。僕がなにか教えられる事があるかもしれないからどんどん頼ってくれていいよ。なんでも聞いてね」
『はいっ!ありがとうございます!時透さん!』
○○に顔を向けにこにこと笑う可愛らしい無一郎に、○○も嬉しそうに笑い返した。
「無一郎でいいよ。敬語じゃなくて大丈夫。これからよろしくね○○」
『あっ、うん!よろしくね無一郎』
笑顔で握手を交わす二人を、炭治郎は微笑ましそうに見守っていた。
それが他の隊士達には女子同士の友情が芽生えたように見えていた。
その中の百合好きの隊士達が湧く。
ちなみに炭治郎は百合に挟まる邪魔な男扱いされていた。
あまりにも失礼である。
無一郎邸を出た炭治郎と○○は甘露寺邸へと向かった。
甘い香りがするそこを、蜂が元気に飛び回っている。
「炭治郎君久しぶりー!おいでませ我が家へ!」
「ご無沙汰してます!お元気そうでよかった!」
「炭治郎君もね!」
蜜璃は笑顔で炭治郎を出迎え、嬉しそうに駆け寄ってきた。
炭治郎は蜜璃に元気に答えると、深くお辞儀をした。
可愛らしく笑った蜜璃は、炭治郎の後ろの人影に気づき覗き込んだ。
「はっ!!?物凄く可愛い子がいる!!!こんにちは初めまして!恋柱の甘露寺蜜璃です!」
炭治郎の後ろにいた○○を見つけた蜜璃は、顔を赤く染めて○○の手をぎゅっと握った。
○○は目のやり場に困る隊服の恋柱に顔が赤くなる。
『こ、こんにちは!初めまして。氷鉋○○です』
「は~~!!こんなに可愛い子生まれて初めて見たわ!!どうしましょう、胸キュンが止まらないわあ…!」
○○の手を離して両手で赤い頬を押さえる蜜璃に、○○はどうしていいか分からなくなり、おろおろとするだけだった。
「よかったな○○!」
『う、うん?』
何故か輝かしい笑顔でそう言う炭治郎に、○○は訳が分からないまま返事をした。
「養蜂してらっしゃるんですか?蜂蜜のいい香りがします」
炭治郎が鼻を鳴らしながら蜜璃に問うと、やっと意識が戻ってきた蜜璃がにっこり笑って振り返った。
「あっ!!わかっちゃった?そうなのよー!巣蜜をねえパンに乗っけて食べると超絶おいしいのよ~~~!!バターもたっぷり塗ってね!三時には紅茶も淹れてパンケーキ作るからお楽しみに!」
蜜璃はご機嫌でそう言うと、炭治郎と○○の手を取って訓練場へと連れて行く。
その際にパンケーキを熱弁するが、田舎育ちの炭治郎と○○は何一つわからなかった。
田舎もの共め、
甘露寺流の訓練では全員レオタードを身にまとい、音楽に合わせて踊ることもしばしば。
柔軟は地獄、殆ど力技によるほぐしであった。
「そうそういいわね! ○○ちゃん体軟らかいのね~!それにその服もとっても似合うわ!キュンとしちゃう!!」
『あ、ありがとうございます!』
ちゃん付けを疑問に思った○○だったが、深く考えることはせず訓練に励むのだった。
蜜璃は途中で○○が男だということに気づいたが、君付けに違和感を覚えそのままの呼び方をする事にした。
不憫である。
リボンをくるくると回す○○に、全員の目が釘付けになる。
体のラインがわかるレオタードを着てもいやらしくなく、むしろ神聖さすら醸し出してしまう○○に何人もの隊士がファンになった。
この日から氷鉋○○ファンクラブが作られた。
ちなみに隊長は伊之助。副隊長は善逸である。
「甘露寺さんお世話になりました!」
『ありがとうございました恋柱様!』
「ううん、いいのよ! ○○ちゃん蜜璃でいいわ!もっと仲良くなりたいもの」
『は、はい!蜜璃さん!』
名前を呼ばれた蜜璃は嬉しそうに可愛らしく笑い、炭治郎と○○に元気に手を振った。
数日の訓練を終えた炭治郎と○○は、蜜璃に別れを告げ伊黒邸へと訪れていた。
屋敷の前には鏑丸を首に巻き付けた伊黒の姿があった。
「竈門炭治郎、俺はお前を待っていた」
「よろしくお願いしま…」
「黙れ殺すぞ」
「『ええっ!?』」
炭治郎にまったく話させる気のない伊黒に、思わず○○も驚きの声を上げた。
「ん?お前は…っ!!!」
伊黒は○○を視界に捉えた瞬間。
体に雷が落ちたような錯覚に陥った。
蜜璃を初めて見た時と同じ感覚に伊黒は戸惑った。
つまるところ、可愛すぎて度肝を抜かれたのだ。
同じく、鏑丸も蜜璃の時と同様になぜか伊黒に噛みついた。
「っ…甘露寺からお前の話は聞いた。随分とまあ楽しく稽古をつけてもらったようだな。俺は甘露寺のように甘くないからな」
伊黒は禍々しい殺気を放ち炭治郎を睨みつけた。
「ど、どうしよう…しょっぱなからとてつもなく嫌われている…!」
『炭治郎何したんだい?』
ひそひそと話す二人を伊黒は引き離すと、○○の腕を掴む。
「お前はこっちだ。竈門炭治郎、そこを動くなよ」
炭治郎にドスの効いた声でそれだけ告げると、伊黒は○○を引き連れて場所を移動した。
着いたのは訓練場だった。
中では何人かの隊士が素振りをしていた。
『随分と少ないですね…他の方はどちらに?』
「…罪を犯したから別の部屋で訓練させている。竈門炭治郎は問答無用でそちら行きだ」
『な、なるほど…あの、私も炭治郎と同じ訓練をさせていただけないでしょうか』
眉を下げて話す○○から伊黒は目を泳がせ視線を外すと、パッと掴んでいた腕を放し踵を返した。
返事をもらえなかった○○が肩を落とした。
すると、一度立ち止まりちらりと振り返った伊黒の口元が動く。
「素振り千…いや、五百回。終わったらもう一つの道場に来い」
『!はいっ!ありがとうございます!』
了承を得た○○は花が咲いたように笑い、深くお辞儀をすると道場に入って行った。
もろに○○の笑顔を喰らった伊黒は、顔を顰め胸を押えた。
胸きゅんである。
鏑丸はまた伊黒を噛んだ。
素振りがすぐに終わった○○は、もう一つの訓練場を目指した。
ちらりと中を覗くと、そこはまさに処刑場だった。
体を板に巻き付けられ、口を布で塞がれている隊士達があらゆる場所に設置されていた。
皆、顔を青ざめさせ涙を流している。
『わぁ…いったい何の罪を犯したんだ…』
「はあっはぁっい、伊黒さん…っ○○が…」
道場を覗く○○に気づいた炭治郎が、伊黒へと声をかけた。
休憩中なのか、炭治郎は汗だくで床に倒れていた。
「入れ」
『失礼します』
伊黒の短い了承の言葉に小さく頭を下げて、○○は足を踏み入れた。
全員が涙でぐちゃぐちゃの顔で○○を見つめており、○○は冷や汗を流した。
隊士達の配置で何の訓練か察したのだ。
『…あ、遅れて申し訳ありません。氷鉋○○といいます。今日からよろしくお願いします』
名前を言ってなかった事を思い出し、挨拶をした○○に伊黒も口を開いた。
「蛇柱、伊黒小芭内だ」
意外にも丁寧に返してくれた伊黒に、○○は微笑んだ。
周りの隊士と伊黒は胸を撃ち抜かれた。
「… ○○、今からこの障害物を避けつつ太刀を振るってもらう。いいな」
『はい!よろしくお願いします』
世にも恐ろしい訓練開始。
使うのが木刀だとしても、当たれば大怪我。
この可哀想な隊士達の間を縫って伊黒の攻撃がくるのである。
伊黒の太刀筋は異様な曲がり方をしてどこに攻撃が入るかわからない。
隊士の間から木刀が伸びてきて、○○の鼻に当たる前にピタリと止まった。
○○は頬に汗が伝うのがわかった。
『っ』
「のろい、もっと素早く判断して動け」
『はい…!』
持っているのは同じ木刀だというのに、どうしてこんなにも曲がるのか。
狭い隙間でもぬるりと入ってくる攻撃。
まさに蛇。
隙間を狙おうとした時の仲間の視線に、○○は緊張していた。
前に来ると、絶対に隊士の血走った目と視線がかち合うからである。
(かわいいっ!!かわいい!かわいい!!かわいいいいい!!!)
そこら中からの熱い視線に○○は困り果てた。
なぜずっと見続けられているか、本人はわかっていないからである。
この視線が○○の精神を少しずつ削る。
今までにない緊張感に手が震えた。
「すごいぞ○○!!太刀筋が正確だ!うまい!」
炭治郎の純粋な褒め言葉で○○はなんとか視線に耐え、攻撃を続けた。
四日後、○○はようやく伊黒に攻撃が当たり訓練が終了した。
手に少し掠っただけだったが伊黒は○○に甘かった。
後に、縛り付けられていた隊士達はゲロ甘すぎて砂糖吐くかと思ったと語っている。
『頑張れ炭治郎!』
「ありがとう!」
炭治郎は今までにない正確な太刀筋で打ち込めるようになってきた。
伊黒の攻撃を避けて、炭治郎からも攻撃ができている。
一日目とは比べ物にならないくらい上達していた。
攻撃が当たり伊黒の羽織の裾を切った時、炭治郎の訓練が終了した。
「じゃあな。さっさと死ねゴミカス。馴れ馴れしく甘露寺と○○と喋るな」
「ありがとうございました…」
伊黒は顔に青筋を立て、炭治郎を強く睨みつけて言い放った。
相変わらず殺気がもの凄い。
炭治郎はなぜ嫌われているか分からず、少し涙が浮かんだ。
「○○、少し着いて来い」
『はいっ』
○○は呼ばれるとは思わず少し声が上擦り赤面したが、伊黒はなんとか咳払いをする事で萌えを内に潜めた。
だが鏑丸には噛まれた。
道場から出て少し離れた所で伊黒は足を止めた。
○○も少し距離を置いて、その場に立ち止まる。
「突然だが…○○。俺の継子になれ」
『え…えっ!?い、いえいえ、伊黒さんの継子になるのは私なんかよりもっと相応しい方がいるはずです』
○○は顔を青くし強く否定したが、伊黒はそれを許さず逃げようとする○○の腕を捕まえた。
「俺はここで会うより、もっと前からお前の事を知っていた。」
伊黒の言葉に、○○は目を見開いた。
「八年前、お前が屋敷の中で血に塗れていた時、声をかけたのは俺だ」
『…八年、前』
○○は記憶を辿るが、幼い自分は主の死でいっぱいいっぱいになっていたせいで顔をよく見ていなかった事に気づいた。
だが、声はしっかりと覚えていた。
なんとなく懐かしいと思っていたのは、一度会ったことがあるから。
「お前のような顔立ちは滅多にいない。すぐに分かった。あの時絶望に打ちひしがれていたお前が、今は立派に剣を振るい鬼を倒している。俺は驚いた」
伊黒は○○にちゃんと伝わるように目を見て話す。
本当に蛇に捕まっているような錯覚に、○○は冷や汗が出てくる。
「お前の成長を傍で見届けたいと思った。だから継子になれ」
○○は正直戸惑ったが、鬼殺隊の柱から学ぶ事は多いと思い覚悟を固めた。
継子に選んでくれたのが伊黒でよかった。
昔の自分を知っているなら、尚更成長する姿を見届けてもらいたいと思ったから。
『はい…!』
力強い返事に伊黒は満足そうに目を細めると、○○の腕を放した。
「柱稽古が終わったらもう一度ここに戻って来い。いいな絶対だぞわかったな」
『は、はい』
○○はその後、炭治郎と合流して次へと向かうのだった。
背中に刺さる伊黒の恨めしい視線に、炭治郎は冷や汗をかいた。