Regret

「どういう風の吹き回しだい…?」

「あん、なにがだよ?」

「言いたくないなら良いけど。」

「…切るのが面倒でほっといたら伸びて邪魔臭くなったから切っただけだ。お前の質問がそれならな。」

「ふうん…それだけ?」

「他に何があるって言うんだよ。」

「いや…ハーレムらしくもなく何だか落ち込んでるように見えたから。」

「…気のせいだろ。」

「なら良いけど。」

この双子の弟が自分に話しかけてきたのは何年ぶりだろう。
大切にしていたはずの者から疎まれるという皮肉な人間関係は思えばここが出発点だった。

「ハーレム…。」

「何だよ?」

「…。」

「ハッ…言いたくないなら話し掛ける必要もねーだろ。」

「…悪かったね。」

ややあってサービスが口を開いた。

「何が?」

「案外優しいとこもあったのに、気付かなかったから。」

弟の言葉にハーレムは目を丸くして笑い出した。

「優しい?俺が?どこがだよ?」

「そうやって知らぬふりをしてくれるところだよ。」

サービスは淡々と答え、ハーレムの笑いを遮った。

「一人で背負い込んでたのは何もマジック兄さんだけじゃない…。僕一人のためにマジック兄さんもハーレムもずっと真実を伏せていたんだろう?」

「…。」

「確かに僕は要領よくて、兄さん達に叱られた記憶もないよ。わざわざ怒られるようなバカな真似をしなかったから当たり前だけど。」

「なんだよそりゃ。俺がバカだって遠回しに言いたいのか?」

「遠回しに言わなくてもバカだろう。でも今はそういう事じゃなくて…、」

ハーレムが更に文句を言おうとするのを遮る。

「マジック兄さんやハーレムが僕の心を気遣ってくれていたことに気付けなかった僕もバカだったってことだよ。味方はルーザー兄さんだけだと思ってたから…。」

実際にはその唯一と信じた味方こそがこれまた無二の親友を奪ったわけだが。

「…まあ味方には違いねぇだろ、兄貴もお前の為だと信じてたんだからよ。味方が自分の望みをきくかどうかはまた別の話だろうさ。」

「いつの間にそんなに達観するようになったんだい?」

「達観なんざしてねぇよ。ただ俺はルーザー兄貴の本性をイヤでも知る羽目になった経験があっただけさ。俺がお行儀のいい坊ちゃまなら知らないままだったろうよ。」

「…何事にも良し悪しがあるものだね。」

サービスの言葉にハーレムは軽く頷いただけだった。

リキッドが抜けた事とコタローの意識が戻らないことを除けば騒動も概ね良い結果をもたらしたのではないだろうか。
兄弟も和解し、自分も知らないところで狂い続けていた家族の関係も修復されつつある。

そう納得して埋めがたい喪失感をやり過ごしていたハーレムを激高させたのはサービスのもとへ戻った一人の男の存在だった。

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