Only you【仙道彰】
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『私のことだけ見てて欲しい…』
夢の中のたんは、俺にやさしく微笑みかけてくれた。
そんな幸せな夢を見て、俺は目が覚めた。
こんな一日の始まりは、めちゃくちゃ気分がいい。
いつも、栄養を補給するためだけに食べる味気ない朝食だって何だかいつもより旨い。
今日は、なんて声をかけようか?
今日こそは、俺に振り向いてほしい。
それは、叶わない願いなのだろうか…?
バスケと同じで、努力したらした分だけ報われる恋だったらいいのにな…
いつもより時間をかけて髪の毛をセットして、俺は家を出た。
「仙道くん、おはよー」
講義室に入って、一番に声をかけてくれるのは、たんちゃん…じゃなくて、名前が思い出せない女の子だった。
がっかりしたことを悟られないように、
「おはよ」
って軽く手をあげて返して、たんちゃんがいないか様子をうかがう。
たんちゃんは背が平均より低くて目立つタイプではないけれど、俺はいつだってすぐに見つけられる。
今日も真面目に前の方の席をとって講義の準備をしていた。
講義中はつい居眠りをしちまう俺は、そんな彼女の隣に座るなんて出来るわけもなく、いつも彼女のことが目に入る端の方の席に座って観察して、満足したら目を閉じる。
彼女が左利きなことだって、いつも可愛いネイルをしていることだって知ってるけど、たんちゃんは俺のことどのくらい知ってるんだろうな…
今日は、たんちゃんが夢に出てきてくれたし、少し勇気を出してみることにした。
「ねぇ、隣いい?」
驚いた彼女の顔もとびっきり可愛くて、返事を忘れて目をぱちぱちさせている。
『…どうぞ』
少し上ずった彼女の声に、
「サンキュ」
なんてドキドキをごまかすように返して、でかい図体を机に忍び込ませた。
今日こそはこの気持ち伝えてぇんだけどな…
Side. たん
「俺だけを見てよ…」
夢の中の仙道くんは私にやさしく微笑んでくれた。
『彰…』
夢の中の私は、大好きな人の名前をいとも簡単に呼んでいる。
そんな幸せな夢を見て、私は目覚めた。
今朝はちょっとだけ特別な気持ちになって、いつもより丁寧にコーヒーを入れて、朝食はいつもより少しだけ豪華にフルーツも添えてみた。
今日の1限の講義は、仙道くんと一緒の講義だ。
今日こそは、私から挨拶したいな…
仙道くんは、真面目で目立たない存在の私のことも気にかけてくれて、一緒に学食に行こうとかいつも気安く誘ってくれる。
でも、自分に自信がなくって断ったり、友達も誘って一緒に行くから二人っきりになったことなんてない。
仙道くんに話しかけられても、ドギマギして上手く返事が出来ないことも多いけど、いつか二人きりで仲良くお喋りしたいな…そんな願いが夢の中で実現しただけで十分だ。
でも、いつかこの恋心を伝えることが出来たら…
そう願いながら、いつもより少し気合を入れたメイクをして、私は家を出た。
その願いが通じたのは嬉しいけれど、まさか仙道くんが私の隣に座るなんて思ってもみなかった。
「ねぇ、隣いい?」
仙道くんにいつもの爽やかな笑顔で喋りかけられた私は、おはようの挨拶も言えないで、
『…どうぞ』
その言葉を絞りだすだけで精一杯だった。
「サンキュ」
仙道くんはなんともないように、少し窮屈そうに講義机に身体を押し込んだ。
何か話しかけたいけれど、何も話しかけられないままもうすぐ講義が始まるという時に、
「…まいったな」
仙道くんの困ったような声が聞こえた。
『忘れ物?』
「んー、鞄持ってくるの忘れた…」
『鞄持ってこなかったの?ふふっ…手ぶらで来たんだ』
思ってもみなかった忘れ物に思わず笑いがこみあげる。
ちょっと抜けてるところがあるのも魅力だよな…って、私の少し緊張も解けたところで、
「たんちゃんが夢に出てくるからさ…」
仙道くんは、私から目をそらして恥ずかしそうにつぶやいた。
私はびっくりして何か言おうと口を動かそうとしたけれど、心臓はうるさく音を立てるし、身体がかぁっと熱をもって言葉が出てこない。
「変なこと言って、ごめんね…」
仙道くんは、小首をかしげて可愛らしく謝ってくれるけれど、そういうことじゃない。
『あの…』
ふぅーっと大きく息を吐いて、仙道くんの顔を見ようと思ったけれど、それはやっぱり出来そうもなくて、講義机を見ながら、続けた。
『私の夢にも仙道くんが出てきたんだ…』
「うっそぉ…」
仙道くんのその言葉の後、私たちの間に沈黙が流れる。
こんな偶然に、どうしたらいいか分からないよ…
講義が始まるチャイムが鳴って、教授が講義室に入ってきたので、私たちは座りなおして教授の方へ身体を向けた。
そして、仙道くんが何も持ってないことを思い出して、ペンとノートを1枚切り離してそっと渡した。
「ありがと…」
小声で伝えてくれた仙道くんのお礼に私はコクリとうなずいて、講義に集中しようとするけれど、ちっとも内容が頭に入ってこない。
しばらく経って、仙道くんが、私の貸したペンの後ろで私の左手をつんつんとつついたので目を向けると、私があげたノートに何か書いたものを渡してくれた。
【私のことだけを見てて欲しい…って夢の中では言ってたんだけど…俺じゃ、ダメ?】
癖のある小さな文字でかかれたその文を読んで、私の視界がにじんだ。
…こんな展開あっていいんだろうか?
泣いていることを知られたくなくて、袖でこっそり涙を拭って、その下に返事を書き込む。
【俺だけを見てよ…って夢の中で言ってくれた彰くんじゃなきゃダメです】
震える手をどうにか押さえて、そっと仙道くんに渡した。
ずっと呼んでみたかった「彰」の文字が緊張でめちゃくちゃ震えて歪んでいるけど書き直すことはしなかった。
まさか彰くんと両想いだったことをこんな形で知ることになるなんて思ってもみなかった。
まだ授業は半分も終わってないけれど、もうそれどころではない。
じっとりと汗ばんだペンを握っていた左手の汗を拭おうとペンを机に置くと、彰くんはそっと手を重ねてきた。
その手もじっとりと汗ばんでいるから、きっと彰くんも同じ気持ちなのかもしれない。
彰くんの方を見上げれば、バチっと目が合って、嬉しそうに目を細めて微笑んでくれた。
授業が終わったら、彰くんの夢で私が言ったセリフをちゃんと言おう。
『私じゃ、ダメ?』の言葉と一緒に…
***
2021.11.6.
Thank you for たんsama request!
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夢の中のたんは、俺にやさしく微笑みかけてくれた。
そんな幸せな夢を見て、俺は目が覚めた。
こんな一日の始まりは、めちゃくちゃ気分がいい。
いつも、栄養を補給するためだけに食べる味気ない朝食だって何だかいつもより旨い。
今日は、なんて声をかけようか?
今日こそは、俺に振り向いてほしい。
それは、叶わない願いなのだろうか…?
バスケと同じで、努力したらした分だけ報われる恋だったらいいのにな…
いつもより時間をかけて髪の毛をセットして、俺は家を出た。
「仙道くん、おはよー」
講義室に入って、一番に声をかけてくれるのは、たんちゃん…じゃなくて、名前が思い出せない女の子だった。
がっかりしたことを悟られないように、
「おはよ」
って軽く手をあげて返して、たんちゃんがいないか様子をうかがう。
たんちゃんは背が平均より低くて目立つタイプではないけれど、俺はいつだってすぐに見つけられる。
今日も真面目に前の方の席をとって講義の準備をしていた。
講義中はつい居眠りをしちまう俺は、そんな彼女の隣に座るなんて出来るわけもなく、いつも彼女のことが目に入る端の方の席に座って観察して、満足したら目を閉じる。
彼女が左利きなことだって、いつも可愛いネイルをしていることだって知ってるけど、たんちゃんは俺のことどのくらい知ってるんだろうな…
今日は、たんちゃんが夢に出てきてくれたし、少し勇気を出してみることにした。
「ねぇ、隣いい?」
驚いた彼女の顔もとびっきり可愛くて、返事を忘れて目をぱちぱちさせている。
『…どうぞ』
少し上ずった彼女の声に、
「サンキュ」
なんてドキドキをごまかすように返して、でかい図体を机に忍び込ませた。
今日こそはこの気持ち伝えてぇんだけどな…
Side. たん
「俺だけを見てよ…」
夢の中の仙道くんは私にやさしく微笑んでくれた。
『彰…』
夢の中の私は、大好きな人の名前をいとも簡単に呼んでいる。
そんな幸せな夢を見て、私は目覚めた。
今朝はちょっとだけ特別な気持ちになって、いつもより丁寧にコーヒーを入れて、朝食はいつもより少しだけ豪華にフルーツも添えてみた。
今日の1限の講義は、仙道くんと一緒の講義だ。
今日こそは、私から挨拶したいな…
仙道くんは、真面目で目立たない存在の私のことも気にかけてくれて、一緒に学食に行こうとかいつも気安く誘ってくれる。
でも、自分に自信がなくって断ったり、友達も誘って一緒に行くから二人っきりになったことなんてない。
仙道くんに話しかけられても、ドギマギして上手く返事が出来ないことも多いけど、いつか二人きりで仲良くお喋りしたいな…そんな願いが夢の中で実現しただけで十分だ。
でも、いつかこの恋心を伝えることが出来たら…
そう願いながら、いつもより少し気合を入れたメイクをして、私は家を出た。
その願いが通じたのは嬉しいけれど、まさか仙道くんが私の隣に座るなんて思ってもみなかった。
「ねぇ、隣いい?」
仙道くんにいつもの爽やかな笑顔で喋りかけられた私は、おはようの挨拶も言えないで、
『…どうぞ』
その言葉を絞りだすだけで精一杯だった。
「サンキュ」
仙道くんはなんともないように、少し窮屈そうに講義机に身体を押し込んだ。
何か話しかけたいけれど、何も話しかけられないままもうすぐ講義が始まるという時に、
「…まいったな」
仙道くんの困ったような声が聞こえた。
『忘れ物?』
「んー、鞄持ってくるの忘れた…」
『鞄持ってこなかったの?ふふっ…手ぶらで来たんだ』
思ってもみなかった忘れ物に思わず笑いがこみあげる。
ちょっと抜けてるところがあるのも魅力だよな…って、私の少し緊張も解けたところで、
「たんちゃんが夢に出てくるからさ…」
仙道くんは、私から目をそらして恥ずかしそうにつぶやいた。
私はびっくりして何か言おうと口を動かそうとしたけれど、心臓はうるさく音を立てるし、身体がかぁっと熱をもって言葉が出てこない。
「変なこと言って、ごめんね…」
仙道くんは、小首をかしげて可愛らしく謝ってくれるけれど、そういうことじゃない。
『あの…』
ふぅーっと大きく息を吐いて、仙道くんの顔を見ようと思ったけれど、それはやっぱり出来そうもなくて、講義机を見ながら、続けた。
『私の夢にも仙道くんが出てきたんだ…』
「うっそぉ…」
仙道くんのその言葉の後、私たちの間に沈黙が流れる。
こんな偶然に、どうしたらいいか分からないよ…
講義が始まるチャイムが鳴って、教授が講義室に入ってきたので、私たちは座りなおして教授の方へ身体を向けた。
そして、仙道くんが何も持ってないことを思い出して、ペンとノートを1枚切り離してそっと渡した。
「ありがと…」
小声で伝えてくれた仙道くんのお礼に私はコクリとうなずいて、講義に集中しようとするけれど、ちっとも内容が頭に入ってこない。
しばらく経って、仙道くんが、私の貸したペンの後ろで私の左手をつんつんとつついたので目を向けると、私があげたノートに何か書いたものを渡してくれた。
【私のことだけを見てて欲しい…って夢の中では言ってたんだけど…俺じゃ、ダメ?】
癖のある小さな文字でかかれたその文を読んで、私の視界がにじんだ。
…こんな展開あっていいんだろうか?
泣いていることを知られたくなくて、袖でこっそり涙を拭って、その下に返事を書き込む。
【俺だけを見てよ…って夢の中で言ってくれた彰くんじゃなきゃダメです】
震える手をどうにか押さえて、そっと仙道くんに渡した。
ずっと呼んでみたかった「彰」の文字が緊張でめちゃくちゃ震えて歪んでいるけど書き直すことはしなかった。
まさか彰くんと両想いだったことをこんな形で知ることになるなんて思ってもみなかった。
まだ授業は半分も終わってないけれど、もうそれどころではない。
じっとりと汗ばんだペンを握っていた左手の汗を拭おうとペンを机に置くと、彰くんはそっと手を重ねてきた。
その手もじっとりと汗ばんでいるから、きっと彰くんも同じ気持ちなのかもしれない。
彰くんの方を見上げれば、バチっと目が合って、嬉しそうに目を細めて微笑んでくれた。
授業が終わったら、彰くんの夢で私が言ったセリフをちゃんと言おう。
『私じゃ、ダメ?』の言葉と一緒に…
***
2021.11.6.
Thank you for たんsama request!
こぼれ話→Only you【仙道彰】
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