可愛いあの子の兄ちゃんは…【沢北栄治】
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俺の高校生生活は順風満帆。
高校バスケ界の王者、山王工業高校に入学して、すぐにレギュラーになって、その夏からずっと全国大会に出れば負け知らずで…
そして、今年の秋にはアメリカに行く。
工業高校なだけあって、女子は少ないけど、顔だって悪くない俺はそこそこモテる。
いや、河田さんに絞められるから、表立っては言えねぇけど、かなりモテると思ってる。
ラブレターだって、何通かもらったことあるしな。
今日は昼休みの終わりかけの時間に購買に来た。
お目当ては、メロンパン。
ここのメロンパンは旨いのに、野郎が多いせいか人気がないらしい。
フワフワのパンにこれでもかと砂糖がたっぷりまぶされたクッキー生地が乗り、しっとりと焼かれた昔ながらのメロンパンは俺の大好物だ。
アメリカに行ったら、このメロンパンが食えなくなるのが唯一の気がかりなくらいだ。
いつもは昼休みが始まってすぐの一番を狙って来るけど、メロンパンは最後まで残ってるって購買のおばちゃんが言ってたし、今日は昼休みにバスケの練習が出来ないから、昼寝をしてから購買に来た。
案の定、メロンパンは三つも残っている。
「おばちゃん、メロンパン!」
とメロンパンに手を伸ばしたのと同時に誰かの手も伸びてきた。
『あっ!!』
「ごめんっ!」
その手はかわいらしい女の子の手で、俺は慌てて手を引っ込めた。
メロンパン好きなのかな…と、女の子に目を向けると、ドンピシャに好みの女の子だった。
「先にどうぞ」
ここはレディーファーストで、女の子に譲ってあげれるのが男ってもんだ。
俺が沢北だって気付いたら、さぞ驚くだろうな…なんて下心は表情に出ていないはずだ。
沢北栄治にメロンパンを譲ってもらってトキめかない女子は…
『じゃ、遠慮なく。おばちゃん、メロンパン三つお願いしまーす!』
「へっ!?」
俺が驚いて変な声をあげている内に、女の子はさっさとお金を払って、消えてしまった。
「俺の…メロンパン…」
「残念だったわね!こっちのクリームパンは?あの子、いつも売れ残りのメロンパン買って行ってくれるのよ~。お兄ちゃんと弟に分けてあげるんだって。優しい子よね!」
俺は、仕方がないとクリームパンを購入して、さっきの女の子のことを考えながら歩き始めた。
兄弟想いの優しい女の子…ますます俺の好みだ!
と、1年の教室がある昇降口付近で、さっきの可愛い女の子とバスケ部1年の美紀男が親し気に話しているのが見えた。
あんな可愛い子と、まさか…美紀男が…
下駄箱の陰に隠れて、聞き耳を立てる。
「ゴメン…兄ちゃんにもあんまり目だったり、親し気にするなって言われたんだ…」
『そっか…でも、メロンパンは受け取って!美紀男、好きでしょ?』
「うん。ありがと!」
デレデレとした笑みを浮かべて、3つのメロンパンを受け取って、食べ始めた美紀男をその女の子はとびきりの笑顔で見つめている。
マジか…あんなにかわいい子が…美紀男と付き合っているなんて…
もしかして…河田さんも公認の仲なのかも…
俺はショックを隠せず、こっそりと泣いた。
その日、俺は授業が終わると同時に教室を飛び出し、急いで体育館へと向かった。
こんな時は、無心で練習するに限る。
「よっしゃ!一番乗り!」
着替えを終え、バッシュの紐をぎゅっと結び終わるころには、かなりの数の部員が集まっているがまだ制服の奴らばかりだ。
倉庫からボールを持って来て、ドリブルをしようとしたところで、
『あの…』
突然声をかけられたので、
「何だよ!?」
ぶきらっぽうに応えて、その声の方へ向いて飛び上がるほど驚いた。
お昼の可愛いあの子だ。
「ごごごごめん!!!俺に用事?」
『いえ、兄に用事があって』
「お、お兄様!?」
『ええ、河田雅史兄ちゃん、もう部活来てますか?』
「かか、河田雅史って、河田さんの妹!?」
『…悪いですか?』
「いやいやいやいやいやいや、呼んでくる!おい、美紀男!河田さんは?」
「ゴメン…兄ちゃんはちょっと遅れるって…」
『美紀男!じゃあ、お使い頼まれて!』
美紀男、か…そうだよな…美紀男と付き合ってるんだよな…
…って、待てよ?河田さんが兄ちゃんってことは…
「なあ、もしかして、お前の姉ちゃんなのか?」
「ゴメン…」
「こんなかわいい姉ちゃんいるなら、もっと早く教えろよ!あの、俺と昼休みに購買で会ったの覚えてる?俺、兄弟と一緒のバスケ部員だし、運命じゃね?」
『…何かめちゃくちゃ失礼な人!…北沢くんだっけ?』
「…沢北です」
『私、あなたみたいなナルシストっぽい人、嫌いなの。兄ちゃんみたいにカッコいい人じゃなくちゃ!』
「河田さんがカッコいい…」
『そう、兄ちゃんは私の理想の人なの!兄ちゃんよりバスケがうまくてカッコいい人じゃなかったら、絶対結婚しない!』
「よっしゃ!俺、立候補するぜ!!」
「沢北さんと姉ちゃんが…」
『ねぇ…大丈夫?私、あなたみたいな人好みじゃないんだけど…』
「バスケうめぇから大丈夫だって!!」
突然、ガツンと脳天に衝撃が走った。
「いってぇ!!…って、お兄様!!」
「調子にのんじゃねぇ!」
今度は、ぐいぐいと首を絞められた。
「やめてくださいよ~」
涙目になりながら、俺が訴えても腕が緩められることはない。
「ななみ!バスケ部には来るなっていったろ?」
『だってぇ…兄ちゃんの活躍するとこ見たいんだもん。はい、メロンパン』
「おっ!サンキュ!!って、こういう変な奴に掴まるから…」
俺は、メロンパンをもらった河田さんの腕が緩んだところでさっと抜け出して、その場でひれ伏した。
「俺は変な男じゃないっす!俺、河田ななみちゃんのことが好きです!お兄様、認めてください!!」
「はぁ?何を言ってるべ…こいつは…」
『沢木くん、私お兄ちゃんよりバスケがうまくてカッコいい人が良いって言ったよね?』
「俺、バスケ上手くてカッコいいっす!あと、沢北だって…覚えてよ…ななみちゃん!」
『気やすく呼ばないで!』
「じゃあ、バスケ上手いこと証明するから!河田さん、1on1お願いします!!」
俺はバスケットボールを掴んで、河田さんに1on1を挑んだ。
最近は、勝ち越すことの方が断然多いこの対決、もらったとばかり思っていたが…
『やっぱり兄ちゃんが一番だね!』
「ふんっ!当たり前だべ!!」
良いとこ見せようとやる気が空回りした俺は、いつもの力をちっとも出せずに終わってしまった。
「こんなはずじゃ…」
呆然としていると、
「沢北さん、僕は姉ちゃんには沢北さんがお似合いだって思います」
こそっと耳打ちしてくれた美紀男だけが俺の味方のようだ。
「ななみちゃん、俺、絶対ななみちゃんに認められる男になってやるぜ!」
俺の言葉にななみちゃんは、俺に向かってベーっと舌を出してプイッと顔をそらした。
そんな風に怒ってる顔も、めちゃくちゃ可愛い。
『兄ちゃん、美紀男バスケ頑張ってね!』
ななみちゃんは、兄弟の方を向いて満面の笑みで手を振ると、帰っていってしまった。
ななみちゃんを絶対に俺に振り向かせてみせる!
まずは、河田さんみたいに丸刈りにした方がいいんだろうか…
***
2021.9.29. 9月は沢北月間
Thank you for ななみsama&如月sama
こぼれ話→可愛いあの子の兄ちゃんは…【沢北栄治】
高校バスケ界の王者、山王工業高校に入学して、すぐにレギュラーになって、その夏からずっと全国大会に出れば負け知らずで…
そして、今年の秋にはアメリカに行く。
工業高校なだけあって、女子は少ないけど、顔だって悪くない俺はそこそこモテる。
いや、河田さんに絞められるから、表立っては言えねぇけど、かなりモテると思ってる。
ラブレターだって、何通かもらったことあるしな。
今日は昼休みの終わりかけの時間に購買に来た。
お目当ては、メロンパン。
ここのメロンパンは旨いのに、野郎が多いせいか人気がないらしい。
フワフワのパンにこれでもかと砂糖がたっぷりまぶされたクッキー生地が乗り、しっとりと焼かれた昔ながらのメロンパンは俺の大好物だ。
アメリカに行ったら、このメロンパンが食えなくなるのが唯一の気がかりなくらいだ。
いつもは昼休みが始まってすぐの一番を狙って来るけど、メロンパンは最後まで残ってるって購買のおばちゃんが言ってたし、今日は昼休みにバスケの練習が出来ないから、昼寝をしてから購買に来た。
案の定、メロンパンは三つも残っている。
「おばちゃん、メロンパン!」
とメロンパンに手を伸ばしたのと同時に誰かの手も伸びてきた。
『あっ!!』
「ごめんっ!」
その手はかわいらしい女の子の手で、俺は慌てて手を引っ込めた。
メロンパン好きなのかな…と、女の子に目を向けると、ドンピシャに好みの女の子だった。
「先にどうぞ」
ここはレディーファーストで、女の子に譲ってあげれるのが男ってもんだ。
俺が沢北だって気付いたら、さぞ驚くだろうな…なんて下心は表情に出ていないはずだ。
沢北栄治にメロンパンを譲ってもらってトキめかない女子は…
『じゃ、遠慮なく。おばちゃん、メロンパン三つお願いしまーす!』
「へっ!?」
俺が驚いて変な声をあげている内に、女の子はさっさとお金を払って、消えてしまった。
「俺の…メロンパン…」
「残念だったわね!こっちのクリームパンは?あの子、いつも売れ残りのメロンパン買って行ってくれるのよ~。お兄ちゃんと弟に分けてあげるんだって。優しい子よね!」
俺は、仕方がないとクリームパンを購入して、さっきの女の子のことを考えながら歩き始めた。
兄弟想いの優しい女の子…ますます俺の好みだ!
と、1年の教室がある昇降口付近で、さっきの可愛い女の子とバスケ部1年の美紀男が親し気に話しているのが見えた。
あんな可愛い子と、まさか…美紀男が…
下駄箱の陰に隠れて、聞き耳を立てる。
「ゴメン…兄ちゃんにもあんまり目だったり、親し気にするなって言われたんだ…」
『そっか…でも、メロンパンは受け取って!美紀男、好きでしょ?』
「うん。ありがと!」
デレデレとした笑みを浮かべて、3つのメロンパンを受け取って、食べ始めた美紀男をその女の子はとびきりの笑顔で見つめている。
マジか…あんなにかわいい子が…美紀男と付き合っているなんて…
もしかして…河田さんも公認の仲なのかも…
俺はショックを隠せず、こっそりと泣いた。
その日、俺は授業が終わると同時に教室を飛び出し、急いで体育館へと向かった。
こんな時は、無心で練習するに限る。
「よっしゃ!一番乗り!」
着替えを終え、バッシュの紐をぎゅっと結び終わるころには、かなりの数の部員が集まっているがまだ制服の奴らばかりだ。
倉庫からボールを持って来て、ドリブルをしようとしたところで、
『あの…』
突然声をかけられたので、
「何だよ!?」
ぶきらっぽうに応えて、その声の方へ向いて飛び上がるほど驚いた。
お昼の可愛いあの子だ。
「ごごごごめん!!!俺に用事?」
『いえ、兄に用事があって』
「お、お兄様!?」
『ええ、河田雅史兄ちゃん、もう部活来てますか?』
「かか、河田雅史って、河田さんの妹!?」
『…悪いですか?』
「いやいやいやいやいやいや、呼んでくる!おい、美紀男!河田さんは?」
「ゴメン…兄ちゃんはちょっと遅れるって…」
『美紀男!じゃあ、お使い頼まれて!』
美紀男、か…そうだよな…美紀男と付き合ってるんだよな…
…って、待てよ?河田さんが兄ちゃんってことは…
「なあ、もしかして、お前の姉ちゃんなのか?」
「ゴメン…」
「こんなかわいい姉ちゃんいるなら、もっと早く教えろよ!あの、俺と昼休みに購買で会ったの覚えてる?俺、兄弟と一緒のバスケ部員だし、運命じゃね?」
『…何かめちゃくちゃ失礼な人!…北沢くんだっけ?』
「…沢北です」
『私、あなたみたいなナルシストっぽい人、嫌いなの。兄ちゃんみたいにカッコいい人じゃなくちゃ!』
「河田さんがカッコいい…」
『そう、兄ちゃんは私の理想の人なの!兄ちゃんよりバスケがうまくてカッコいい人じゃなかったら、絶対結婚しない!』
「よっしゃ!俺、立候補するぜ!!」
「沢北さんと姉ちゃんが…」
『ねぇ…大丈夫?私、あなたみたいな人好みじゃないんだけど…』
「バスケうめぇから大丈夫だって!!」
突然、ガツンと脳天に衝撃が走った。
「いってぇ!!…って、お兄様!!」
「調子にのんじゃねぇ!」
今度は、ぐいぐいと首を絞められた。
「やめてくださいよ~」
涙目になりながら、俺が訴えても腕が緩められることはない。
「ななみ!バスケ部には来るなっていったろ?」
『だってぇ…兄ちゃんの活躍するとこ見たいんだもん。はい、メロンパン』
「おっ!サンキュ!!って、こういう変な奴に掴まるから…」
俺は、メロンパンをもらった河田さんの腕が緩んだところでさっと抜け出して、その場でひれ伏した。
「俺は変な男じゃないっす!俺、河田ななみちゃんのことが好きです!お兄様、認めてください!!」
「はぁ?何を言ってるべ…こいつは…」
『沢木くん、私お兄ちゃんよりバスケがうまくてカッコいい人が良いって言ったよね?』
「俺、バスケ上手くてカッコいいっす!あと、沢北だって…覚えてよ…ななみちゃん!」
『気やすく呼ばないで!』
「じゃあ、バスケ上手いこと証明するから!河田さん、1on1お願いします!!」
俺はバスケットボールを掴んで、河田さんに1on1を挑んだ。
最近は、勝ち越すことの方が断然多いこの対決、もらったとばかり思っていたが…
『やっぱり兄ちゃんが一番だね!』
「ふんっ!当たり前だべ!!」
良いとこ見せようとやる気が空回りした俺は、いつもの力をちっとも出せずに終わってしまった。
「こんなはずじゃ…」
呆然としていると、
「沢北さん、僕は姉ちゃんには沢北さんがお似合いだって思います」
こそっと耳打ちしてくれた美紀男だけが俺の味方のようだ。
「ななみちゃん、俺、絶対ななみちゃんに認められる男になってやるぜ!」
俺の言葉にななみちゃんは、俺に向かってベーっと舌を出してプイッと顔をそらした。
そんな風に怒ってる顔も、めちゃくちゃ可愛い。
『兄ちゃん、美紀男バスケ頑張ってね!』
ななみちゃんは、兄弟の方を向いて満面の笑みで手を振ると、帰っていってしまった。
ななみちゃんを絶対に俺に振り向かせてみせる!
まずは、河田さんみたいに丸刈りにした方がいいんだろうか…
***
2021.9.29. 9月は沢北月間
Thank you for ななみsama&如月sama
こぼれ話→可愛いあの子の兄ちゃんは…【沢北栄治】
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