Heartache【三井寿SS】
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俺は、湘北高校に入学して早々、一人の女子に一目惚れした。
それは、本当に偶然、廊下ですれ違った一瞬、目が合って微笑みかけられただけだったけれど、俺の胸は高鳴った。
名前も知らない彼女の周りにはいつも友達が多くいて、俺が近づく隙間なんてこれっぽっちもなかった。
バスケの練習を見に来てくれないかな…なんてそわそわしたこともあったが、バスケという狭い世界でだけ有名な俺のことを彼女が知っているはずもなく、体育館で見かけることはなかった。
もっと近づきたい…触れたい…
そんな願いは叶うはずもない。
色んな事が上手くいかなくて、俺はバスケから逃げ出した。
…そして、悪い仲間たちとつるみ始めた。
喧嘩してバカ騒ぎしていれば、バスケのことも、片思いなんて馬鹿らしいことも忘れちまえるって思ってた。
…なのに、学年が上がって、隣の席に座っていたのがその女で、
『よろしくね』
なんて、俺にチョコレートを渡してきた。
如月友という名前を知って、言葉を交わすようになって、たまに飴やチョコレートなんかをくれたりなんかもして…もしかしたら…なんて、期待した俺がバカだった。
「ねぇ、友、隣の不良くん、どう?」
『隣の席の三井くんのこと?どうって…嫌いじゃないけど…』
偶然聞いちまったその言葉…
カッコいいとか好きとかそんな言葉を期待したわけじゃねぇけど、心底がっかりした俺がいた。
俺ばっかりが、あいつのこと好きなんて、めちゃくちゃカッコ悪い。
むしゃくしゃした思いを吹き飛ばすように、鉄男や徳男達とバイクを乗り回してひとしきり遊んだ後、鉄男の「女ひっかけようぜ!」の誘いにはいつも乗り気になれず、仲間たちと別れ、一人帰路に着く。
女と聞くと、如月の顔ばっかり浮かんじまう…
煙草も女もやらない俺のこと、鉄男達はどう思ってるのか知らねぇが、何も言わずに受け入れてくれるのがありがてえ。
家に帰る気になれず、真っ暗闇の中、道を歩いていると、公園の前で錆びた鉄の匂いがツンと鼻をつく。
導かれるように公園に入れば、錆びたフェンスの中にバスケットゴールがぼんやりと街灯に照らされている。
あぁ…もう、何なんだよ!
あいつの顔だけじゃなく、恩師の顔まで頭ん中に浮かんで、消えてくれそうにない。
チクショウ…なんでこんなに苦しい思いをしなくちゃいけねぇんだろう…
錆びたフェンスを思い切り蹴とばせば、ガシャン…と音がむなしく響く。
素直に好きなもんを好きって言うことを忘れちまった俺は、心の中に如月への思いもバスケへの未練も口に出す資格はない。
頬を熱いものが伝い、俺はその場にうずくまった。
この涙と一緒に、バスケへの未練もあいつへの思いも流れちまえばいいのによ…
トントン…
優しく誰かが肩をたたく。
こんな情けない俺のこと…ほっといてくれよ!
『寿くん…』
優しい如月の声に俺はガバっと顔を上げた。
太陽の光がまぶしくて、目をしぱしぱさせながら、恋い焦がれた女の名前を口にした。
「如月…?」
『ふふっ…寝ぼけてる…』
ようやくこの眩しさに慣れてきた俺は、ふんわりと俺に笑いかける如月にまだ状況が飲み込めないでいた。
頭を掻きむしろうと触れば、チクチクと短い髪の毛の感覚。
…俺は…一体誰なんだ……?
『…寿くん?大丈夫?』
「寿くん…?」
如月は、俺のこと、三井くんって呼んでたはずじゃ……
はっと俺は、夢を見ていたことに気付いた。
そうだ、俺は三井寿…バスケ部で…友と付き合ってて…
「友…」
愛しい彼女の名前を呼んで、大好きなふわっとした髪の毛を撫でた。
夏の太陽にも負けないくらいとびきりの明るい笑顔を友は見せてくれる。
ーーーもうすぐ、全国大会が始まる。
友の笑顔のため、全国制覇を達成するため、俺はもう、諦めねぇ。
***
2021.6.8.
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Inspired by W/AN/DS 「Jum/pin' Jac/k Boy」
こぼれ話→Heartache【三井寿SS】
それは、本当に偶然、廊下ですれ違った一瞬、目が合って微笑みかけられただけだったけれど、俺の胸は高鳴った。
名前も知らない彼女の周りにはいつも友達が多くいて、俺が近づく隙間なんてこれっぽっちもなかった。
バスケの練習を見に来てくれないかな…なんてそわそわしたこともあったが、バスケという狭い世界でだけ有名な俺のことを彼女が知っているはずもなく、体育館で見かけることはなかった。
もっと近づきたい…触れたい…
そんな願いは叶うはずもない。
色んな事が上手くいかなくて、俺はバスケから逃げ出した。
…そして、悪い仲間たちとつるみ始めた。
喧嘩してバカ騒ぎしていれば、バスケのことも、片思いなんて馬鹿らしいことも忘れちまえるって思ってた。
…なのに、学年が上がって、隣の席に座っていたのがその女で、
『よろしくね』
なんて、俺にチョコレートを渡してきた。
如月友という名前を知って、言葉を交わすようになって、たまに飴やチョコレートなんかをくれたりなんかもして…もしかしたら…なんて、期待した俺がバカだった。
「ねぇ、友、隣の不良くん、どう?」
『隣の席の三井くんのこと?どうって…嫌いじゃないけど…』
偶然聞いちまったその言葉…
カッコいいとか好きとかそんな言葉を期待したわけじゃねぇけど、心底がっかりした俺がいた。
俺ばっかりが、あいつのこと好きなんて、めちゃくちゃカッコ悪い。
むしゃくしゃした思いを吹き飛ばすように、鉄男や徳男達とバイクを乗り回してひとしきり遊んだ後、鉄男の「女ひっかけようぜ!」の誘いにはいつも乗り気になれず、仲間たちと別れ、一人帰路に着く。
女と聞くと、如月の顔ばっかり浮かんじまう…
煙草も女もやらない俺のこと、鉄男達はどう思ってるのか知らねぇが、何も言わずに受け入れてくれるのがありがてえ。
家に帰る気になれず、真っ暗闇の中、道を歩いていると、公園の前で錆びた鉄の匂いがツンと鼻をつく。
導かれるように公園に入れば、錆びたフェンスの中にバスケットゴールがぼんやりと街灯に照らされている。
あぁ…もう、何なんだよ!
あいつの顔だけじゃなく、恩師の顔まで頭ん中に浮かんで、消えてくれそうにない。
チクショウ…なんでこんなに苦しい思いをしなくちゃいけねぇんだろう…
錆びたフェンスを思い切り蹴とばせば、ガシャン…と音がむなしく響く。
素直に好きなもんを好きって言うことを忘れちまった俺は、心の中に如月への思いもバスケへの未練も口に出す資格はない。
頬を熱いものが伝い、俺はその場にうずくまった。
この涙と一緒に、バスケへの未練もあいつへの思いも流れちまえばいいのによ…
トントン…
優しく誰かが肩をたたく。
こんな情けない俺のこと…ほっといてくれよ!
『寿くん…』
優しい如月の声に俺はガバっと顔を上げた。
太陽の光がまぶしくて、目をしぱしぱさせながら、恋い焦がれた女の名前を口にした。
「如月…?」
『ふふっ…寝ぼけてる…』
ようやくこの眩しさに慣れてきた俺は、ふんわりと俺に笑いかける如月にまだ状況が飲み込めないでいた。
頭を掻きむしろうと触れば、チクチクと短い髪の毛の感覚。
…俺は…一体誰なんだ……?
『…寿くん?大丈夫?』
「寿くん…?」
如月は、俺のこと、三井くんって呼んでたはずじゃ……
はっと俺は、夢を見ていたことに気付いた。
そうだ、俺は三井寿…バスケ部で…友と付き合ってて…
「友…」
愛しい彼女の名前を呼んで、大好きなふわっとした髪の毛を撫でた。
夏の太陽にも負けないくらいとびきりの明るい笑顔を友は見せてくれる。
ーーーもうすぐ、全国大会が始まる。
友の笑顔のため、全国制覇を達成するため、俺はもう、諦めねぇ。
***
2021.6.8.
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Inspired by W/AN/DS 「Jum/pin' Jac/k Boy」
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