正直か嘘か【清田信長】
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「まどか!オレ、ダンク出来るようになった!」
願望の混じった嘘だよね……って分かってはいるけれど、私はそんな風に元気いっぱいのノブを見てると、つい褒めてしまう。
『ノブ、スゴイじゃん!』
「だろ?ミニバスのゴールで余裕だったから、NBAのゴールでもダンク出来るな!」
『本当だね!』
得意げに笑っているノブの頭をぐしゃぐしゃって撫でてやる。
「髪の毛ぐしゃぐしゃになるから、やめろよー」
って笑いながら逃げるところも昔から変わっていない。
嘘つくことをよしとしている訳じゃなくて、私は自分に正直に、心の底からノブはスゴいって思っているんだ。
私とノブは、家が隣同士の幼馴染というより姉と弟みたいな関係だ。
お互いに一人っ子で外遊びが大好きな子どもだったから、ノブが小学校に入学したくらいから毎日のように一緒に遊んでいた。
ノブは二学年上の私に向かって、
「オレ、庭でキリン飼ってもいいことになったんだぜ!」
「昨日、オレ、UFO見た!」
「オレのひいじいちゃんは、超能力者で空飛べたんだぜ!」
などなど、いつも全力で嬉しそうに私に伝えてくれる。
そんなのもちろん嘘だって分かっているけど、私はいつも、
『ノブ、スゴイじゃん!』
って、全力で応えてあげる。
私の言葉を聞いた彼の嬉しそうな笑顔を見ると、凄く元気が出るんだ。
それに、ノブくん見ていると、本当にそうなりそうな気がしてくるから不思議だ。
私が中学校に入学してバスケ部に入ったと伝えると、すぐにノブは「オレもバスケをしたい」とミニバスチームに所属した。
背は私の方がまだ数センチ高いし、学校でも前から数えた方が早い身長のノブだけれど、もともと運動神経がいいから、みるみるうちに上達して、小6になった今、チームのキャプテンとして活躍しているとノブのお母さんから聞いている。
実際に、近所の公園で練習を一緒にしても、ドリブルだってレイアップシュートだって、ノブの方が上手い。
最初でこそ体格差で1on1は勝てていたけれど、スピードのあるドリブルですぐに抜かれてしまうから、ここ最近は一緒に練習をすることが減っていた。
もしかしたら本当にダンクを出来るようになっているかもしれないな…なんて思えてきて、
『ね、久しぶりに公園でバスケしよっか?』
「っしゃ!最近、全然一緒にバスケやってくんねぇから、つまんねぇって思ってたんだぜ」
『あの公園のゴールでダンク出来そう?』
「ったりまえだろ!」
自信満々のノブがちょっと眩しい。
私は、中学のバスケ部で先輩が引退して私たちの代になったけれど、真ん中くらいのバスケの上手さだから、ユニフォームはもらえても中々試合に出してもらえなくて落ち込んでたから。
ノブみたいに嘘でも『スタメンだよ!』って言えたらいいんだけどね…
ノブは、家の中に消えたと思ったらすぐにバスケットボールを抱えて飛び出してきた。
「いこーぜ!」
とノブは駆け出してしまうけれど、家の中からは、
「犬の散歩もついでにお願い~!」
とノブのお母さんの声が聞こえる。
でも、もうすでに家から数メートル離れてしまったノブには聞こえていないに違いない。
開けっ放しの家のドアから、
『おばさん!ノブと公園でバスケの練習しようって言ったらもう行っちゃいました。犬の散歩、ノブに伝えときますから~』
「まどかちゃん、いつも悪いわね~」
『いえ!行ってきます』
ドアを閉めて、慌ててノブを追いかけるけれど、すでに曲がり角を曲がってしまったようで後ろ姿が見えない。
相変わらず早いんだから…と思いながら、全力で追いかける。
公園のバスケットゴールのところに少し人だかりができている。
「オレはあのゴールにダンクする!!見とけよ!!!」
周りからは口々に「嘘つくなよー」なんて心無い言葉も聞こえてくる。
私は、こっそり様子をうかがう。
ダムダムとボールの弾ませて、ノブはゴールへと向かう。
リングの少し手前で、足を踏み込んで飛び上がる。
…お願い!
私は祈るような気持ちで、ノブを見つめた。
ガンッ!
私の願いもむなしく、リングの縁にボールが当たって、ダンクは失敗してしまった。
見ていた子たちは、「やっぱ出来ねぇんじゃん!」とはやし立てているけれど、私は声を大にして伝えた。
『ノブ、もう少しでダンク出来そうなんてスゴイじゃん!』
「ちくしょう!ミニバスのゴールでは上手くいったのにな…」
バスケットボールを拾ったノブは、下を向いて悔しそうだ。
『今、そこまで届いてるなら、きっと中学校に入る頃にはダンク出来るようになってるよ!』
周りの子たちの見る目が少し変わってくる。
「練習して、ぜってーダンク出来るようになれよ!」
なんて、声をかけてくれる子まで現れた。
「よっしゃ!オレ、ダンク出来るようになって、日本で一番、いや世界で一番すげぇバスケ選手になってやる!」
『ノブなら出来るよ!』
「だから、まどかはオレのこと、ずっと応援しててくれよ!」
『もちろん!』
小学生と中学生の口約束が実を結んで、将来プロバスケットボール選手となったノブと私が結婚することになるなんて、この時の私たちが聞いたら、それは嘘だと言うだろう。
私の正直な気持ちとノブの願望の混じった嘘が紡ぐ私たちの物語は、続いていくんだ。
***
Inspired by「少年よ嘘をつけ」渡り廊下走り隊7
Thank you for your request!!!
こぼれ話→正直か嘘か【清田信長】
願望の混じった嘘だよね……って分かってはいるけれど、私はそんな風に元気いっぱいのノブを見てると、つい褒めてしまう。
『ノブ、スゴイじゃん!』
「だろ?ミニバスのゴールで余裕だったから、NBAのゴールでもダンク出来るな!」
『本当だね!』
得意げに笑っているノブの頭をぐしゃぐしゃって撫でてやる。
「髪の毛ぐしゃぐしゃになるから、やめろよー」
って笑いながら逃げるところも昔から変わっていない。
嘘つくことをよしとしている訳じゃなくて、私は自分に正直に、心の底からノブはスゴいって思っているんだ。
私とノブは、家が隣同士の幼馴染というより姉と弟みたいな関係だ。
お互いに一人っ子で外遊びが大好きな子どもだったから、ノブが小学校に入学したくらいから毎日のように一緒に遊んでいた。
ノブは二学年上の私に向かって、
「オレ、庭でキリン飼ってもいいことになったんだぜ!」
「昨日、オレ、UFO見た!」
「オレのひいじいちゃんは、超能力者で空飛べたんだぜ!」
などなど、いつも全力で嬉しそうに私に伝えてくれる。
そんなのもちろん嘘だって分かっているけど、私はいつも、
『ノブ、スゴイじゃん!』
って、全力で応えてあげる。
私の言葉を聞いた彼の嬉しそうな笑顔を見ると、凄く元気が出るんだ。
それに、ノブくん見ていると、本当にそうなりそうな気がしてくるから不思議だ。
私が中学校に入学してバスケ部に入ったと伝えると、すぐにノブは「オレもバスケをしたい」とミニバスチームに所属した。
背は私の方がまだ数センチ高いし、学校でも前から数えた方が早い身長のノブだけれど、もともと運動神経がいいから、みるみるうちに上達して、小6になった今、チームのキャプテンとして活躍しているとノブのお母さんから聞いている。
実際に、近所の公園で練習を一緒にしても、ドリブルだってレイアップシュートだって、ノブの方が上手い。
最初でこそ体格差で1on1は勝てていたけれど、スピードのあるドリブルですぐに抜かれてしまうから、ここ最近は一緒に練習をすることが減っていた。
もしかしたら本当にダンクを出来るようになっているかもしれないな…なんて思えてきて、
『ね、久しぶりに公園でバスケしよっか?』
「っしゃ!最近、全然一緒にバスケやってくんねぇから、つまんねぇって思ってたんだぜ」
『あの公園のゴールでダンク出来そう?』
「ったりまえだろ!」
自信満々のノブがちょっと眩しい。
私は、中学のバスケ部で先輩が引退して私たちの代になったけれど、真ん中くらいのバスケの上手さだから、ユニフォームはもらえても中々試合に出してもらえなくて落ち込んでたから。
ノブみたいに嘘でも『スタメンだよ!』って言えたらいいんだけどね…
ノブは、家の中に消えたと思ったらすぐにバスケットボールを抱えて飛び出してきた。
「いこーぜ!」
とノブは駆け出してしまうけれど、家の中からは、
「犬の散歩もついでにお願い~!」
とノブのお母さんの声が聞こえる。
でも、もうすでに家から数メートル離れてしまったノブには聞こえていないに違いない。
開けっ放しの家のドアから、
『おばさん!ノブと公園でバスケの練習しようって言ったらもう行っちゃいました。犬の散歩、ノブに伝えときますから~』
「まどかちゃん、いつも悪いわね~」
『いえ!行ってきます』
ドアを閉めて、慌ててノブを追いかけるけれど、すでに曲がり角を曲がってしまったようで後ろ姿が見えない。
相変わらず早いんだから…と思いながら、全力で追いかける。
公園のバスケットゴールのところに少し人だかりができている。
「オレはあのゴールにダンクする!!見とけよ!!!」
周りからは口々に「嘘つくなよー」なんて心無い言葉も聞こえてくる。
私は、こっそり様子をうかがう。
ダムダムとボールの弾ませて、ノブはゴールへと向かう。
リングの少し手前で、足を踏み込んで飛び上がる。
…お願い!
私は祈るような気持ちで、ノブを見つめた。
ガンッ!
私の願いもむなしく、リングの縁にボールが当たって、ダンクは失敗してしまった。
見ていた子たちは、「やっぱ出来ねぇんじゃん!」とはやし立てているけれど、私は声を大にして伝えた。
『ノブ、もう少しでダンク出来そうなんてスゴイじゃん!』
「ちくしょう!ミニバスのゴールでは上手くいったのにな…」
バスケットボールを拾ったノブは、下を向いて悔しそうだ。
『今、そこまで届いてるなら、きっと中学校に入る頃にはダンク出来るようになってるよ!』
周りの子たちの見る目が少し変わってくる。
「練習して、ぜってーダンク出来るようになれよ!」
なんて、声をかけてくれる子まで現れた。
「よっしゃ!オレ、ダンク出来るようになって、日本で一番、いや世界で一番すげぇバスケ選手になってやる!」
『ノブなら出来るよ!』
「だから、まどかはオレのこと、ずっと応援しててくれよ!」
『もちろん!』
小学生と中学生の口約束が実を結んで、将来プロバスケットボール選手となったノブと私が結婚することになるなんて、この時の私たちが聞いたら、それは嘘だと言うだろう。
私の正直な気持ちとノブの願望の混じった嘘が紡ぐ私たちの物語は、続いていくんだ。
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Inspired by「少年よ嘘をつけ」渡り廊下走り隊7
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