ゲート前に到着したティスランドの目に飛び込んできた光景はあまりにも異様なものだった。それは怒りで顔を歪ませて仁王立ちをしているサムと、そのサムの前で正座をして座り込んでいるバンブルビーの姿があったからだ。
　
　「そもそも今まで何の連絡もしないってどういう事だよ！？」

　『”許して””駄目だってママが言うの””私だって会いたかったわ！！”』

荒々しい口調でバンブルビーを責め立てるサムに対し、ウォッシャー液をダラダラと流しながらバンブルビーは必死に弁解をしていた。
　周りにいる軍人達も苦笑を浮かべながら二人のやり取りを見ており、誰一人として止める様子がないことに気づいたティスランドは致し方ないと思いながらサムとバンブルビーへと近づく。

　『サム。我々にも事情があるんだ』

　「ティスランド・・・事情って何？アレだけ僕の事を散々巻き込んでおいて、今更なに１つとして僕に教えてくれないって言うわけ？随分と冷たいんじゃないのか？」

　『確かにそうだ。でも、コレも全て君を守る為に下されたことなんだ』

怪訝な顔をしたサムに対しティスランドは１つ頷く。

　『司令官は今まで戦いに巻き込み続けたサムに普通の生活をして欲しいと願っているんだ。サムと我々との間にまだ繋がりがあるとディセプティコンに知られれば、奴らはサムを戦いに巻き込む。そうすれば君の平凡な生活とやらは一瞬で消えてしまう・・・だから司令官は君との連絡を絶ち、サム・ウィトウィッキーはオートボットと何の関係もないと証明したかったんだよ』

命すら惜しむことなく自分達の為に戦ってくれた友。
　何度も命を救われたとオプティマスが言っていたことを思い出しながらティスランドがサムに説明をすると、サムはそのことに納得したらしく顔から怒りを消す。

　「・・・それならそうだって言ってくれれば良いだろう？理由も教えられずに一方的に連絡を絶たれて僕がどれだけ傷ついて、怒ったのか君達には解らないの？」

　『私はこの事実を知ったサムが我々に対して怒るのは当然の権利だと認識している。許されるとは思っていないさ』

　「ティスランドは狡いなぁ」

ガリッと乱暴に頭を掻いたサムはハァと小さくため息を吐く。

　「そんな事言われたら何も言えないだろ？」

関わりを無くしたのは自分を守る為だった、そう教えられて怒れるほどサムは愚かではない。それでも怒りは完全に消えてはいないらしく、いつもよりも少しばかり険しい目をしてバンブルビーとティスランドを見上げる。

　「・・・ビー」

　『”なにかな？”』

　「元気だった？」

ぎこちなく微笑みながらサムが問いかけた言葉に対し、バンブルビーはファンファーレを鳴らしながらサムに対して自分は元気だと訴えていた時だ。
　ファンファーレの音を聞いたティスランドはある事に気づくのと同時にサムに対して問いかけていた。

　『サム、就職は決まったのか？』

ティスランドにとってはごく自然に浮かんだ疑問を口にしただけであったのだが、その場の雰囲気を凍らせるには十分すぎる一言であった。
　無言のままピシリと動きを止めたサムの姿が答えだった。

　『なんだ。まだ就活中とやらか』

　『”いっその事””私達と一緒に働きましょう！？”』

　『無理だな。サムのような貧相な身体ではここではやっていけない』

　『”大丈夫よ””根性だけはあるからな！！！”』

　『あぁ。ソレは認める・・・ならばレノックス大佐に話を』

好き勝手な話をしている２体に対してサムの怒声が飛ぶのはそれから数秒後のことだった。