センチネルの身体を回収した為これから地球に帰還するとオプティマスから報告がされた瞬間、多くのオートボット達が歓喜の声を上げて喜んでいた。ティスランドも彼等と同じくその報告を聞いて喜びの笑みこそ浮かべていたものの内心は少しばかり複雑だった。

　『（何故アーク号は無事だった？）』

地球に来ただろうディセプティコン達が月の近くを通過した際、必ずセンサーがアーク号を捕捉したはずなのだ。
　センサーが反応した以上は誰かしらが確認を行うので、よほど辺鄙な場所になければ必ずアーク号を発見できる。
　大破しているとは言え敵の船があると解れば必ず船内の調査を行い、そして中でエネルギー切れを起こして機能停止しているセンチネル・プライムを見つけられる。その後は破壊するなり、人質にするなりするのが当たり前の行動だ。
　ティスランドにはアーク号が今の今まで発見されなかったことがあまりにも不可解なことのように感じられた。
　この事に気づいているのがオートボットの中で自分だけである事から、ただの考えすぎなのだろうかと思いながら仲間達の顔をそっと盗み見る。

　『（ディセプティコン達が見落としただけか？）』

運良く見つからず、幸いな事に今まで見つかることがなかっただけなのかもしれない。
　偶然が重なって助かっただけなのかもしれない。
　自分達にとって都合良い方へと事を考えたティスランドだったが、スパークの奥底から聞こえてきたストラトスの声がその考えを否定する。



　『スタースクリームだけならばソレもあり得ただろう。だがサウンドウェーブがすでに地球に来ていたとなれば話は違う。衛星にハッキング出来るほどの実力者であるアイツがセンチネルを見過ごすなんて馬鹿な事はしねぇ。必ず何か意味があるだろうな』



今回の件は何者かの意図が必ず含まれている。
　それも凄まじく悪い意味のものが含まれているのだと言うかのような警戒した声を聞いた瞬間、ティスランドはスパークの中に嫌なモノがジワリと広がった気がした。
　いつかそれが自分を内側から喰らい尽くしてしまうかのような恐ろしいもののように感じられ、恐怖故にブルリと身体を震わせた。
　この事を誰かに伝えなければ、そう思った直後、基地の中に警報が鳴り響く。

　『なんだ？』

慌ただしくＮＥＳＴ隊員達が行動を開始する中、ティスランドは何が起きたのか確認するため監視カメラシステムへとハッキングを行う。
　異常を感知したのは入口の監視カメラで、青年が守衛と揉めている映像がティスランドの脳裏に流れ込んでくる。
　荒々しく守衛を突き飛ばす青年の顔を監視カメラが真正面から捉えた瞬間、信じられないと言うかのようにティスランドはアイカメラをカシャリと動かす。

　『サム・ウィトウィッキー？』

守衛と揉めているのはサムであることにティスランドは驚きのあまり彼の名を呟いた直後、ＮＥＳＴ隊員が着けているトランシーバーからサムの声が流れ出す。
　サムはしきりにバンブルビーの名を呼んでおり、その声を認識したのと同時にバンブルビーは凄まじい勢いで格納庫から飛び出していく。

　『ちょっ！？ビーッ！！待て！！！』

慌ててジャズが制止の声をバンブルビーにかけるが、そんな声など聞こえないと言うかのようにバンブルビーは遠ざかっていく。上官の言葉よりもサムを優先したバンブルビーの度胸に対してティスランドは心の中で密かに賞賛していた時だ。

　「ティスランドッ！君も居るんだろう！？さっさと出てきたらどうなのさッ！！！」

バンブルビーの名前だけではなくまさか自分の名前さえもトランシーバーから聞こえてきたことに対し、ティスランドは何とも言えない顔をしながら密かに排気をした時だ。

　『・・・ティスランド。ご指名だぜ？』

ニヤニヤと笑いながら話しかけてきたのはサイドスワイプだ。
　酷くムカつくニヤケ顔を殴りつけたい衝動を堪えながら、ティスランドはジャズへと向かい話しかける。

　『バンブルビーだけでは不安なので私もサム・ウィトウィッキーから話を聞いてきます』

　『おう。行ってこい』

疲れたような声で許可を出してくれたジャズへと向かいティスランドは一礼すると、バンブルビーから少し遅れる形でサムの元へと向かって移動を開始した。