5章:遠出と取引と少しばかりの罪悪感
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私の言葉なんて誰も聞いてくれない。
私の在り方なんて誰も認めてくれない。
それだけがただ、辛くて、苦しくて、悲しかった。
結局この人も他の人と同じだったのだと思えた瞬間、何故だか解らないが裏切られたという感情だけがセイの心を真っ黒に埋め尽くした。
気づけば耳を塞いでいた手がだらりとシートの上に落ちていて、歪む視界と、頬を伝い落ちていく熱い涙の感覚にセイは自分が泣いていることにこの時になって初めて理解出来た。
「俺達にはセイではなくティスランドが必要で他の人格は不要だ。セイ、お前が俺達を害する事は無いと解ってはいる。もしも平和な時代であったのならお前とも良い関係を築けたかもしれないが俺達は今戦争をしている。・・・その戦いで必要なのはティスランドだ」
戦える者が、生残れるだけの者が、誰かを守れる者が必要だ。
そう言いたげなジャズの言葉にセイは静かな声で答える。
「取り繕わないでよ」
上辺だけの優しさなんていらない。
意味の無い慰めなんていらない。
そう言うかのようにセイはジャズの言葉を拒絶する。
「・・・そうだな。良い人になる必要なんてないか。俺はお前に酷いこと言っているからな」
傷つけて、苦しめて、悲しませている。
ジャズは意図的にそういった言葉を選んでいた。
ティスランドならば動じなかっただろう言葉も、ただの人間の女の子でしかない者には十分すぎるほど鋭い刃となって襲いかかり、そして生涯癒えないだろう傷を負わせたことくらい解っていた。
「(そうすることが必要だと解っていても辛いもんだ)」
力無く項垂れたセイの姿を見ていると良心の呵責に耐えられなくなる。
今すぐ謝罪の言葉を告げて頭を撫でて、抱きしめて、優しく囁いてやりたくなる。
本当はセイとも和やかな関係を築きたかった。
両親ともちゃんと再会させてやりたかった。
けれどソレは駄目だ、と必死に自分に言い聞かせた。
「(アイツを引きずり出すまでは)」
全てを破壊するかのような赤い眼差しを思い出したジャズは気を引き締める。
ラチェットはティスランドの中には三人に居ると言っていた。
ティスランド、セイ、そしてアイツだ。
真っ先に消さなければならない存在を何とかしない限り、安心なんて出来ない。
ハンドルを握る手にジャズが力を込めたときだ。
「私は必要ないの?」
「あぁ」
「そっか・・・そうなんだ」
完全な否定。
その発言にセイは自嘲の笑みを浮かべる。
いっその事、声に出して笑おうか?と思えるほど滑稽な自分の立場にセイはただ、荒れ狂う気持ちを必死に堪えた。
”彼”も、”私”も必要とされてはいない。
ただ求められているのはティスランドだけ。
ソレを当然だと思う反面、私達を認めて欲しいという欲求を抑えられない。
3人揃ってはじめてようやく一人前だというのに、この頭の良い将校にはソレが解らない事がどうしようもなく嬉しくて、そして悲しかった。
その悲しさを自覚した瞬間、何かに引っ張られるかのようにふっと意識が途切れていく。
カチッと何かのスイッチが押されたかのような感覚を最後にセイの意識は身体からプツリと途切れた。
私の在り方なんて誰も認めてくれない。
それだけがただ、辛くて、苦しくて、悲しかった。
結局この人も他の人と同じだったのだと思えた瞬間、何故だか解らないが裏切られたという感情だけがセイの心を真っ黒に埋め尽くした。
気づけば耳を塞いでいた手がだらりとシートの上に落ちていて、歪む視界と、頬を伝い落ちていく熱い涙の感覚にセイは自分が泣いていることにこの時になって初めて理解出来た。
「俺達にはセイではなくティスランドが必要で他の人格は不要だ。セイ、お前が俺達を害する事は無いと解ってはいる。もしも平和な時代であったのならお前とも良い関係を築けたかもしれないが俺達は今戦争をしている。・・・その戦いで必要なのはティスランドだ」
戦える者が、生残れるだけの者が、誰かを守れる者が必要だ。
そう言いたげなジャズの言葉にセイは静かな声で答える。
「取り繕わないでよ」
上辺だけの優しさなんていらない。
意味の無い慰めなんていらない。
そう言うかのようにセイはジャズの言葉を拒絶する。
「・・・そうだな。良い人になる必要なんてないか。俺はお前に酷いこと言っているからな」
傷つけて、苦しめて、悲しませている。
ジャズは意図的にそういった言葉を選んでいた。
ティスランドならば動じなかっただろう言葉も、ただの人間の女の子でしかない者には十分すぎるほど鋭い刃となって襲いかかり、そして生涯癒えないだろう傷を負わせたことくらい解っていた。
「(そうすることが必要だと解っていても辛いもんだ)」
力無く項垂れたセイの姿を見ていると良心の呵責に耐えられなくなる。
今すぐ謝罪の言葉を告げて頭を撫でて、抱きしめて、優しく囁いてやりたくなる。
本当はセイとも和やかな関係を築きたかった。
両親ともちゃんと再会させてやりたかった。
けれどソレは駄目だ、と必死に自分に言い聞かせた。
「(アイツを引きずり出すまでは)」
全てを破壊するかのような赤い眼差しを思い出したジャズは気を引き締める。
ラチェットはティスランドの中には三人に居ると言っていた。
ティスランド、セイ、そしてアイツだ。
真っ先に消さなければならない存在を何とかしない限り、安心なんて出来ない。
ハンドルを握る手にジャズが力を込めたときだ。
「私は必要ないの?」
「あぁ」
「そっか・・・そうなんだ」
完全な否定。
その発言にセイは自嘲の笑みを浮かべる。
いっその事、声に出して笑おうか?と思えるほど滑稽な自分の立場にセイはただ、荒れ狂う気持ちを必死に堪えた。
”彼”も、”私”も必要とされてはいない。
ただ求められているのはティスランドだけ。
ソレを当然だと思う反面、私達を認めて欲しいという欲求を抑えられない。
3人揃ってはじめてようやく一人前だというのに、この頭の良い将校にはソレが解らない事がどうしようもなく嬉しくて、そして悲しかった。
その悲しさを自覚した瞬間、何かに引っ張られるかのようにふっと意識が途切れていく。
カチッと何かのスイッチが押されたかのような感覚を最後にセイの意識は身体からプツリと途切れた。