ジャズに呼ばれてサイドスワイプの中から降りたセイを見た両親は、青い目の色を見ると落胆を隠せないと言いたげに静かに目を伏せた。
　どれほど愛娘と似通った容姿をしていてもその目の色だけが娘とは違う。
　そう言いたげな二人の顔を見たセイはすぐさま否定をしたかったのにジャズはソレを認めなかった。
　無言のまま何も言うなと圧力を掛けてきたのだ。
　れっきとした証拠を突きつけ、此処に居るのは娘では無いのだと、ただの似た容姿をした他人なのだと両親に伝えたのだ。

　「あの子はッ！！どこに行っちゃったのッ！？私が、あの子の言葉をもっとちゃんと聞いていれば・・ッ！！あの子は、セイはずっと私の側に居たのにッ！！！」

父の胸に顔を埋めた母の言葉にセイは言葉を失う。
　私はここに居る。
　そう言いたいのにソレを口にすることが何故か出来ない。
　
　「誤解が解けたようですね」

心持ち申し訳ないと言うかのような声でジャズは父親へと話しかければ、腕の中に居る妻の背を撫でていた父が憔悴した声で言葉を返す。

　「・・・ご迷惑をおかけしました」

　「いえ。とんでもない。お嬢さんが一日でも早く見つかり、ご家族が再会できることを願っています」

　「ありがとうございます」

　「では。俺達はこれで」

引きずられるかのようにサイドスワイプの中へと戻ったセイは両親の姿を見つめる。
　貴方達の娘はここに居る。
　そう言いたいのに何故か声は出ない。
　両親に背を向けたジャズがサイドスワイプの中に乗り込む。
　バタンッと嫌みなくらいに音を立てて閉じられたドア、ゆっくりと動き出す車の中からセイはジッと両親を見つめていた。
　この短時間の間に両親が一気に歳を取ったようにセイには感じられたが、すぐにソレは当然じゃ無いかと思う。
　傷口に塩を塗り込むかのようなジャズのやり方に対し、とてつもないほど強烈な怒りを抱く。
　
　「貴方最低ですね」

　「知ってる」

　「苦しんでいる人を傷つけて楽しいですか？」

　「そんなことはない。俺だってあのアジア人夫妻の力になりたいさ」

　「だったらっ！！なんであんな嘘をついたんですかッ！？」

　「嘘じゃない。お前はあの夫妻の娘じゃないからな。お前は人間のセイじゃなく、俺達オートボットの一員であるティスランドだ。いい加減、自分の立場を思い出せ」

　「知らないッ！そんなの何も知らないッ！！」

　「知らないじゃないだろ・・・知りたくないだけだろ？」

もうこれ以上はジャズの言葉を聞きたくない、そう言うかのように耳を塞いだセイに対し、ジャズは何も言わない。
　それがどうしようもなく辛くて、苦しくて、悲しかった。