かつて自分もいただろう空を自由に駆け回るスタースクリームの存在が憎い。自分は惨めにも、地面を走り回ることしか出来ないというのに。

　『空を』

飛びたい。
　奴と同じ場所に立ち、そして奴を殺したい、とスパークが叫ぶがそれは無理だということを理解している。今の自分には翼がないのだから。
　空を舞う感覚が酷く懐かしい。
　ソレを奪ったのは誰だ？
　恋い焦がれる空を、自由に飛ぶ権利を奪ったのは？

　『スタースクリーム』

気体に熱がこもり始める。
　熱によりいくつかのシステムがショート寸前になってしまったらしく、次々と現れる警告が視界を埋め尽くしていく。
　それを全て無視してソレは空を睨み付ける。
　青い空を自由に飛ぶ機体を。

　『スタースクリームッ！！！！』

怒りで歪む声で叫んだ瞬間、奴の意識が向けられた。
　方向転換をして向かってくるスタースクリームを迎え撃つかのようにハンドガンと日本刀を構える。
　互いの距離が縮まりはじめ、相手が間合いに入ったのと同時にソレは地面を蹴り宙に舞うと、パイロットの居ないコックピットめがけ刀を振り下ろしながら、エンジンに向かって何発も銃弾を撃ち込む。
　翼のあるスタースクリームは機体の角度を変えてその攻撃を回避すると、間髪を入れずにトランスフォームをし、持っていた銃で白いオートボットのスパークめがけて攻撃をするが、ソレは持っていた日本刀で全ての銃弾をはじき飛ばす。

　『なっ！？』

でたらめなその行動にスタースクリームの赤い瞳が驚愕する。
　一瞬生まれた隙を逃すことはしない。
　ニヤリと口元を歪めた白い機体は狙う。
　狙いは翼だ。
　かつて奴が両翼を打ち抜き、空を奪ったように同じ事をしてやる。そう言うかのように振るわれる刀と銃弾からスタースクリームは必死に逃げる。
　剣先が右翼の先端を切り裂くがそれは致命傷にはならない。
　飛行の妨げにはならない。

　『貴様何者だ！？』

　『スタースクリーム・・・テメェを殺すために”俺”は戻ってきた！！！』

その言葉にスタースクリームはハッとした顔をして自分へと攻撃をする白い機体を見つめる。
　銃と剣による戦闘スタイル、そしてこんなことを言うだろう者に一人だけ心当たりがあった。
　己の保身のために見捨てた直属の部下。それなりに使えると思っていた部下。

　『ストラトスか！？』

久方ぶりに聞いたかつての己の名に白い機体は笑う。
　細められた赤い瞳が見覚えのあるモノであったことにスタースクリームは動揺する。ストラトスの信号が消えたのははっきりと覚えている。
　目の前に居る白い機体を自身の出来る範囲内でスキャンをしてみると、ソレはかつての部下とは違う識別コードを持っている。

　『テメェを殺すために”俺”は戻ってきた！！ここで死ね、スタースクリーム！！！』

凄まじい気迫にスタースクリームは恐れを抱く。
　ストラトスの実力は誰よりもよく知っている。
　故に、ここは逃げるべきだ。そう判断したスタースクリームはＦ－２２へとトランスフォームをすると一目差に空へと舞い上がる。

　『待ちやがれ！！』

問答無用で放たれる銃弾が機体を掠めていく。
　殺傷能力が高くないことが幸運だった。ある程度の距離まで飛び上がったスタースクリームはこのまま空からの爆撃で奴を殺そうと決めたときだった。
　視界の片隅を何かが掠めた。
　
　『へ！？』

驚いたスタースクリームが意識を下に向けると、そこには右腕をライフルへと変形させた白い機体が居た。