4章:戦闘と終幕と企事
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「行かせん!行かせんぞ!!お前も一緒に来るんだッ」
サムの父親が必死な形相で説得をするのをティスランドは黙って見つめていた。
狙われているのが自分だと解っているサムは両親を安全圏に逃がして欲しいとバンブルビーへと頼んだのだ。
ソレに猛反発したのはロンで彼はサムも一緒に来るように声を荒げる。
子を思う親の気持ち。
ソレを見たティスランドのスパークが何かを訴えるかのように微かに軋んだ。
それはセイの感情だ。
3人の中で唯一”親”という存在を知っている者の感情。
そっと自身のスパークがあるだろう外装に触れたティスランドはサム達を見つめる。
「ロン・・・行かせてあげて。お願いよ、ね?」
「僕は必ず帰る。ちゃんと父さんと母さんの元に帰るから・・・だから行かせて」
帰る。
あぁ。何と良い言葉なのだろうか。そう思いながらティスランドはサム達を見つめる。
”私”は帰れなかった。
両親の元に。
家族の元に。
スパークの中で泣き叫ぶセイの言葉に反応するかのようにティスランドのアイカメラから冷却水が音も無く溢れ、乾いた土の上へと吸い込まれていく。
『貴方達のご子息は必ず私が帰そう。貴方達の元に。また会えるようにする』
気づけば口から出ていた言葉。
何の確証も無いそれを聞いたサムの両親はホッとしたかのように目元を和らげると、息子の言葉を信じてバンブルビーへと乗り込む。
【無茶はしないで】
【解ってる】
サムの両親を安全圏へと運ぶ直前に何かを悟ったらしいバンブルビーから極秘通信を通して言われた言葉にティスランドは素っ気なく答えた。
生きている以上は必ずなんて言葉は意味をなさない事くらい解っている。
ましてや戦場に生きる者にとって命の保証なんて無いのと同じだ。
それでも、彼等が再び出会えることを自分はするだけだとティスランドは自身に言い聞かせるとサムへと視線を向けた。
『司令官の下まで私が護衛を務める。可能な限りサムを守るつもりではいるが、敵から攻撃された場合は撃退行動に移る事になる。最後まで守り通せない可能性が高い』
「それでいい!!」
『では行こう』
ミカエラの手を握ったサムが走り出したのと同時にティスランドも乾いた砂を踏みしめ移動を開始した。
敵味方入り乱れての戦い、初めてであるその戦闘に動揺することが無かったのはきっと自分の中に居るだろう彼の存在があるからだ。
何をすべきが、何をしなければならないのか、誰を倒せば良いのか、どう動くべきなのか。
彼の持つ知識が全てを教えてくれた。
今までに無い反応にティスランドは少しばかり戸惑いを抱く。
『(何を考えているのやら)』
戦闘に対する的確な指示を下すブレインを制御しているのはストラトスだ。
スタースクリーム以外の事に関しては沈黙を守り続けていた彼が見せた初めての反応に対し、ティスランドは純粋に同時に有難いと思ってる。
長年戦場で培ってきただろう知識と経験を持って下される判断に間違いは無い。
ティスランドでは対処できないこともあっさりと簡単に対処する。
『ソレが出来るのは貴方がそれなりの地位を得ていたからなのだろうな』
ストラトスが持っている記憶をティスランドは少しだけ知っている。
彼はかつてスタースクリームの直属の部下で、そしてスタースクリームから信頼を得ていた存在だ。
それなりに指揮能力もあり、状況判断も素晴らしく、そして何よりも自分の能力を生かす戦い方を知っている。
だからこそ下される決断はどれも素晴らしいの一言だ。
それはサムにとってはこれ以上無いほどの味方であるとは解っているが、どうしてもその事に関してティスランドは悔しさを堪えきれない。
サムを守るのは自分でありたかった。
そう思った瞬間、ストラトスの勝ち誇った笑い声が聞こえた気がした。