上空で突然始まった戦闘機同士の一騎打ちに人間達は最初こそ困惑していたものの、戦っているのが自軍のモノだと悟ると己のなす事を果たすために行動を開始した。
　実力は互角とも言える戦闘を行っていたストラトスは段々と苛立ちを感じていた。
　
　『相変わらずしつこい奴だな！！女々しい奴は嫌われるぞッ！！』

　『俺がしつこいのは貴様限定だよ、スタースクリーム』

　『クソッ！！大人しく死んでおけ、ストラトス！！』

　『断る。貴様が死ね』

吐き捨てるかのようにそう言葉を返すのと同時にストラトスはミサイルを放つ。
　間一髪というところでミサイルから逃れたスタースクリームの姿にストラトスはチッと舌打ちをした。
　いい加減このやり取りも飽きてきた。
　さっさとコイツを殺してしまおうと決め、攻撃のやり方を少しばかり変えてみようかと考えたときだ。

　『ストラトス』

『気安く呼ぶな』

　『ストラトスッ！！』

　『・・・・なんだよ？』

しつこい通信に対しストラトスはうんざりした声で答える。

　『俺に下れッ！今の貴様ならばオートボットの情報を俺様に提供できるだろう！？かつての地位、いや、それ以上の地位を約束しよう！！』

　『はぁ？』

　『俺とお前が力を合わせればかつてのような絶対的な力を得られる！！そうなれば忌々しいメガトロンを倒すことすら可能だ！いいや、ディセプティコンもオートボットも関係ない！俺達が支配者になれるんだぞ！！欲しいものだって何でもやろう！！どうだ？悪い話じゃないだろう？』

切羽詰まったスタースクリームの声音にソレは一瞬だけ返答に詰まる。
　ソレを見たからこそ交渉の余地はあると判断したスタースクリームが再度、誘いを掛けようとしたときだ。

　『今の俺が欲しいのは貴様の首だけだ』　

吐き捨てるかのような声で言われた言葉が聞こえた直後、スタースクリームの左翼が問答無用で打ち抜かれる。
　ソレが誰が行った事なのか触りきっていたスタースクリームはチッと舌打ちをすると大きく旋回した。

　『逃げんじゃねぇ！！』

黒煙を上げながら遠ざかっていくスタースクリームを追いかける。
　あと少し、あと少しで憎い相手を殺すことが出来る。込み上げてくる笑みを隠すこと無く、喜びでスパークが熱くなっていくのを感じながらストラトスはスタースクリームへと照準を合わせた時だ。



　「サムッ！！こっちに来ては駄目よ！！」

　「駄目だサム、逃げるんだ！！」



聞いたことの無い男女の声が頭の中で響いた。
　サムの名に反応したストラトスはセンサーを使い、サムの居場所を見つけ出すと彼の近くに生体反応が三つとディセプティコンの反応があることに気づく。

　『バンブルビーは何をやっている』

苛立ちを隠すこと無く言葉を吐き捨てたストラトスはどうするか一瞬考えた時、センサーがサムの元へと向かっているバンブルビーの反応を拾う。
　距離的に間に合うのか微妙な場所にバンブルビーが居る事が気がかりだったが、助けに向かった者がいるのならば自分が救援に駆けつける必要はないだろうと判断するとスタースクリームを撃墜することだけに集中する。