アジア人特有の少し黄色がかった肌を金属めいた物が覆い尽くしていく。
　それはオートボットの外装とてもよく似ているような気がシモンズにはした。人と同じような色をしていた青い瞳が微かに発光したのを見た瞬間、シモンズはティスランドの正体に気づく。

　「お前さん、人間じゃなかったんだな」

　「本当の姿はバンブルビーと同じだ。訳あって人間の姿になれるようになった」

セイという存在があるからこそ出来る芸当だ。
　それを口にすること無くティスランドは電子の海を乗り越え、レノックスの場所を突き止めると彼が居るその場所へと通話を開始した。
　
　「ＮＥＳＴ部隊のレノックス少佐に緊急の報告をしたい。少佐には”エップス軍曹にナンパに使われたものからの電話だ”と言えばすぐに解る」

ティスランドが口にしたキーワードを聞いた軍人は何かを察したらしくすぐにレノックスに電話を渡す。
　聞き慣れた声が名を呼ぶ前にティスランドは威嚇するかのような鋭い声で話しかけた。

　「少佐。私の名は言わないで欲しい。妨害はしているが念のためだ・・・詳細はある人物からする」

自身の名を呼ぶ前に先手を打ったティスランドはシモンズへと電話を押しつければ、彼はセクター７で培ってきた経験を生かし、必要最低限の報告だけをすると通信を終えた。
　いつの間にかサムとミカエラ、そしてレオがティスランドをジッと見つめており、彼等に対し困ったように微笑んだティスランドはここから離れることを提案する。
　今の会話をディセプティコンに聞かれたとは思わないが、念のために移動しておいた方が良いだろうと判断したのだ。

　「説明は移動中にしよう」

　「今すぐ此処でして」

　「サム・ウィトウィッキー。時間が惜しいんだ」

　「嫌だ！！僕を騙していたんだな！！！」

怒りで眦をつり上げたサムがティスランドの胸ぐらを掴みあげる。
　それを必死にミカエラが制止する声が響く中、ティスランドはジッとサムの顔を見つめていた。
　サムの目に浮かぶ怒り、悲しみ、その感情に気づいたティスランドはこれ以上自分はサムと一緒に居ることは出来ないのだと悟る。
　ここからは別行動になる、そう思った瞬間だった。
　ティスランドの胸ぐらを掴んでいたサムの手が誰かによって引きはがされる。

　「今まで・・・俺達は彼女に守られてたんだ。感謝こそしても、恨み言を言うなんておかしいだろ？」

サムの手を掴んでいたのはレオだ。
　レオはひどく戸惑った顔をしていたものの、今までティスランドがしてきた事を必死にサムに向かい告げる。それはまるでティスランドを擁護しているかのような、まるで庇おうとしているかのような言葉だった。

　『”私も知ってたの”』

バンブルビーの発言にサムは何故？どうして？と言いたげな視線を向けた。

　「なんでいつも僕だけを蚊帳の外にするんだよ！！！そんなんだから、オプティマスは命を落としたんじゃないか！！！」

荒れた足取りで皆の元からサムは去って行く。
　慌てた様子でミカエラが追いかけて行くのをティスランドはジッと見つめる。

　「助かった」

レオに向かいそう告げれば彼は困ったように笑った後、サムの元へと向かって走って行く。

　「お前さんは私達よりも頭が良いはずなのに・・・肝心な部分は解ってないんだな」

　「解っています。私は・・・一番最悪な形でウィトウィッキーさんを傷つけましたから」

口調がセイのようになってしまったのは、自分の中にある何かがサムの気持ちが彼女には嫌と言うほど解ってしまっていて、それが自らのスパークを通して伝わってきたからだろうなとティスランドは思う。