どこかへと向かって走行するバンブルビーの中でティスランドはぼんやりと外を見つめていた。
　頭の中で繰り返されているのはジェットファイアが教えてくれた言葉だ。



　『暁がダガーの剣先を照らすとき３人の王が扉を示す』



その場所にプライム達の墓がある。
　墓の中には太陽エネルギーを吸収するための装置を起動させる鍵、通称マトリクスと呼ばれるモノが隠されており、とても強力な力を持っているマトリクス使えばオプティマスを復活させることが出来る可能性が高い。
　ようやく掴めそうになった希望にサムの顔に笑みが浮かんだのをティスランドは見た。
　誰もが喜び、そしてマトリクスを手に入れる為にジェットファイアから教えられた場所へと向かうために行動を介したまでは良かった。

　「あの爺さんの助言ってのはどうにも抽象的だな。いくつか解る言葉もあるが、あまりにもフワッとしすぎてるな！！ＣＩＡに聞いて解ったのはアカバ湾が古代シュメール語でダガーの剣先と呼ばれていることくらいなもんだ！！」

持っていたメモを読みながらシモンズは降参だと言うかのように肩をすくめた。
　ソレを見たレオがイラッとした顔をしてシモンズに噛みつく。

　「おい、ロボウォーリア！今いるメンバーの中でアンタくらいしかあの助言を理解出来ないんだ！！もっと考えろよ！！」

　「黙れ若造！！考えたって解らん事だってこの世にはあるんだ！！」

　「２人とも喧嘩しないで！！とにかく、一度情報を整理しよう。ジェットファイアが僕らを此処に連れてきたってことは、きっとエジプトにしかない物のはずだ」

　「そうね。エジプトと言えばピラミッドやファラオ像？・・・あとは、ミイラとか？」

車内ではサムを中心に３人の王とは？扉とは？と矢継ぎ早に疑問が上がっては誰もその答えを言えないまま沈黙する。
　ディセプティコン達もマトリクスを手に入れる為に行動をしており、彼等よりも早くマトリクスを手に入れなければならないが間違い無く戦闘になるのは明らかだ。
　増援が望めない以上、今ある戦力でディセプティコンの包囲網を突破し、なんとかしてオプティマスと合流しなければならない。
　やることがあまりにも多すぎ、そして難易度の高すぎる任務だとティスランドは密かに思うと深々と息を吐き出す。

　「（それにしても・・・プライム達の伝承が本当だったとは）」

辺境の星にてプライム達が命を散らしたという話はサイバトロン星では昔から語り継がれている話の一つだ。

　「ティスランド？ずっと黙っているけど気分でも悪いの？」

ギャーギャーと騒がしい車内で唯一沈黙を保っているティスランドに気づいたミカエラが声を掛けてきたため、ティスランドは窓の外に向けていた視線を車内に戻す。
　気づけば皆がティスランドを見つめていた。

　「いや・・・ちょっと色々と考えていただけだ」

　「ほぅ！？聞かせてみろ小娘！！今はどんな些細な考えでも必要としているからな！例え的外れな考えでも笑わずにいてやろうじゃないか！！」

妙に偉そうな顔をしてシモンズから話すように促されたティスランドは淡々とした声で自らの考えを口にする。

　「助言の最初に言われる暁というのは夜明け前の暗い時間を意味している。つまり、夜明け前のアカバ湾に行けば何かしらのヒントを得られる可能性が高い・・・３人の王に関しては未だに解らないがな。だが、個人的には”暁”と”ダガーの剣先”という二つの条件を満たして初めて３人の王はその意味を持つような気がするが」

自身の中にある知識を参考にしつつティスランドが自らの考察を口にすると全員が何とも言えない顔をして見つめてきたため、ティスランドは何か間違ったことを言っただろうかと思っていたときだ。

　「お前さん・・・意外と頭が良かったんだな」

感心した、と言いたげな声でシモンズが告げた瞬間、バンブルビーの嘲笑する声がラジオから聞こえたため、ティスランドは問答無用でドアを殴りつけた。