ジェットファイアが所有していたスペースブリッジを使用し、ディセプティコンに気づかれること無くどこかへと移動できた事は良かった。
　目まぐるしく変わる視界の中で、何が起きているのだとティスランドが微かに混乱した時、ストラトスが所有していた知識の一部がスライド映像のようにティスランドの中に表示される。
　ソレを理解し終えたティスランドは自分の身に起きている事に納得をすると便利なものだなと思うと、このまま大人しくしているのが一番良いのだと悟った時だ。
　投げ出された身体が柔らかい何かの上に叩付けられた直後、突き抜けるかのような青い空と肌を焼くかのような太陽の熱気に気づく。
　無事に移動を終えたのだと理解したティスランドはホッと胸をなで下ろしたとき、自分の身体に何かが乗っていることに気づく。

　「まぁ色々と問題はあるようだな」

疲れたように息を吐きながらティスランドは自分の上に倒れているレオをジッと凝視する。
　偶然なのか意図的に狙ったのは解らないがレオの頭が乗っているのはティスランドの胸の上だ。その事に気づいているらしいレオは気絶したふりをしながら時折感触を確かめるかのように頭を微かに動かしている。
　トランスフォーマーの中でも女性に分類されているティスランドにとってレオの行動は理解不能でしかないが、人間の女性であるセイがレオの行動を酷く不快だと訴えてくる感覚がスパークを通して伝わってきた。

　「女の子に挟まれるなんて幸せだ。俺このまま死んでも悔いは無い」

恍惚とした声でレオが呟く。
　彼の上には本当に気絶しているだろうミカエラの姿があり、彼女が倒れている位置は少々問題があるなと判断したティスランドはそろそろこの茶番も終了させるべきだと判断する。

　「そうか。それは良かったな。満足しているところ申し訳ないがすぐにでも私の上から退けてくれないか？じゃないとお前の頭に風穴を開けなきゃならなくなる」

淡々とした声で告げた直後、レオは凄まじ勢いでティスランドの上から離れていった。
　圧迫感がなくなった身体を労りながらティスランドは身体を起こすとミカエラに声を掛け、彼女の意識を戻してやる。

　「ここは？」
　
　「さてね・・・周りの様子からアメリカではない事は確かだな。とりあえず、サム達と合流してジェットファイアから話を聞こう」

眼前に広がる景色を見つめながらティスランドは頭の中で地図を展開すると、この地形とマッチしている場所はどこか探す。
　頭の中でブレインが必死に答えを探し始める。
　トランスフォームしている状態ならば瞬時に出されただろう答えは、今の姿ではすぐに出されることは無い。

　「全く・・・行き先も教えずに移動するとは困ったものだな」

水気が無いサラサラとした砂、荒々しい岩肌を見つめているとブレインがある国の名前をヒットさせた。

　「エジプト？」

その意外すぎる場所にティスランドは驚愕したかのように青い瞳を開いた時、遠くの方で自分達の名を叫んでいるサムの姿を見つけることができ、近くにシモンズとジェットファイア達の姿があったことにティスランドはホッとした顔をする。
　サムがジェットファイアに向かい何故自分達をエジプトに運んだのか教えるように詰め寄る中、ティスランドはバンブルビーに近づくと声を潜めながら話しかけた。

　「身体のどこかに異常は？」

　『”ないわ””アンタはどうなの？”』

　「私も戦闘に支障はない。今の私にある能力が低いことは知っているだろう？すまないが当面の戦闘と護衛に関してはバンブルビーに一任しても良いだろうか？」

　『”大歓迎よ”』

　「すまない。可能な限りフォローはするつもりだ」

　『“必要ない”』

　「・・・それは心強い」

笑みを一つ浮かべたティスランドはバンブルビーのボンネットを軽く叩く。
　事態はあまりにも自分達にとって不利なことは解っている。
　だが、それでも何とかしてオプティマスを復活させられる起死回生の手を見つけ出さねばならない。