近づいてくるメガトロンをストラトスはぼんやりと見つめていたが、視界の中に警告が出てきたことで初めて自分の身に降りかかるだろう危険に気づく。
　逃げなければと思い起き上がろうとしたストラトスの背をスタースクリームが踏みつければバチバチと音を立てて火花が散った。

　『いい姿じゃないか、ストラトス』

　『黙ってろよ、おべっか野郎』

ギロリと赤い目でスタースクリームを睨み付ければ、チッと舌打ちをしたスタースクリームが背に乗せた足に体重をかけ始める。
　金属の拉げる嫌な音が廃工場の中に響く。
　身体の中にある配線のいくつかが押しつぶされ、新たに表示されるエラーにストラトスはチッと舌打ちをしたときだった。

　『退けろ』

メガトロンの言葉にスタースクリームは不満げな雰囲気で足を外す。
　倒れたままストラトスはメガトロンを見上げる。

　『貴様・・・その目の色はなんだ？』

目の色、ということに一瞬だけストラトスは疑問を抱く。
　自分の目の色が今どのような色をしているのかなどストラトスには解らない。そんなストラトスに気づいたメガトロンは腕を伸ばすと、いくつかのコードが出てくる。
　それはそれぞれが意思があるかのようにストラトスへと接続する。
　ビリッと走った痛みにストラトスはメガトロンがデータを読み取っていることに気づき、慌ててコードを抜こうとするが主の邪魔はさせないと言うかのようにスタースクリームがストラトスの頭を踏みつけた。

　『くっ・・・何しやがるッ！？』

　『大人しくしていろ！！俺様も貴様に興味があるんだ。一度死んだはずの貴様がどうやって蘇ったのか。オートボットに鞍替えをしてまで俺を殺したかったのか？残念だが貴様に殺されるような俺じゃない』

ニタニタと笑いながらスタースクリームが告げた言葉にストラトスが悔しげに顔を歪めていたときだった。

　『スタースクリーム。貴様、何故そんな重要なことを今まで黙っていた？』

　『へ！？い、いえ・・・そのですねぇ』
　
　『この愚か者が！！！』

言い終わったのと同時にメガトロンの鉄拳がスタースクリームの顔面に叩付けられる。
　吹き飛んだスタースクリームが壁に衝突する音が響く。
　それを聞きながらストラトスが笑ったときだった。
　身体に刺さっていたコードが抜かれる。

　『さて、あの愚か者の言うことが正しいのだとしたら貴様は一度破壊されたらしいな？』

　『俺のことは関係ねぇだろ？』

この因縁はスタースクリームとのものだ。　　
　かつての上司ということだけで首を突っ込んでくるなというかのようにストラトスはメガトロンを睨み付けていると、メガトロンはしばし何かを考えるかのように黙っていたが、吹き飛ばされていたスタースクリームがヨロヨロとしながら姿を見せるとこっちに来いと言うかのように指を動かす。
　慌てて駆け寄ってきたスタースクリームに対しメガトロンはコードを取り出す。

　『閣下！？』

　『黙っていろ！』

ガツンッと乱暴に鉄拳が頭部に落とされる。
　痛そうにうめきながらスタースクリームはメガトロンのすることに素直に従う。強者には素直に従うその姿は昔と何も変わってはいない。
　メガトロンはスタースクリームの中から必要な情報を全て取り出すと、スパークが凍りそうなほど残酷な笑みを浮かべる。

　『成る程、興味深いことだ。この星の虫けらの言葉を使うとしたら転生とやらか？だからと行ってディセプティコンからオートボットに鞍替えをするとは実に許せんことだ・・・どうやら貴様には制裁が必要なようだなぁ？ティスランド、いいやストラトスと呼ぶべきか？』

ガシャリと向けられたショットガンの銃口、それはストラトスのスパークへと狙いを定められていた。