1章:車と人と戦闘機
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『ラチェット、その申し出は却下する。ティスランド、その力は私が許可したとき、もしくは君自身に危険が及んだとき以外は使わないようにしてくれ』
『・・・それはどういう意味ですか?』
『その力は我々が知っている力では無い。何故君だけがその力を使えるのかが原因も解らず、そしてソレが君に対してどのような影響を及ぼすのか解らないからだ』
その返答にティスランドは絶望にも似た感情を抱く。
せっかくあの空を自由に舞うことが出来るようになったのに、それが認められないなんて信じたくなかったのだ。
なんという理不尽だ、そう思うがその感情を決して表に出すことはしない。
この司令官が何の考えも無くそんな命令を下すとは思えないからだ。
『了解です』
落胆を滲ませた声でティスランドが返答すると、オプティマスはジッとティスランドを見つめていたが何も言葉を返すことはしなかった。
『(こんな時に嫌と言うほど実感するな)』
長年染みついた兵士としての意思が上官には逆らうなと告げていた。
ディセプティコンらしくはないこの思考を高く評価してくれたのは皮肉にもスタースクリームで、彼は上手い具合にストラトスを使いこなしていた。
そういった意味で彼がディセプティコンのNO.2というのも納得できた。
『それにしても日本製の戦闘機ねぇ・・・。お前って日本に対して思い入れでもあるのか?行ったこと無いよな?』
何気ないジャズの問いかけに対しティスランドは言葉に詰まる。
自分が”元”人間で、その時には日本人だったと告げたとしても、彼らが信用してくれるわけなど無いのだ。
『日本製が私との相性が良いだけでしょう』
『そうか』
何かを考えているかのようにジャズが短い返答をする。
それがあまりにもジャズらしくなかったので、ティスランドは疑われているのだろうかと思いながら彼を呼ぶ。
『将校殿?』
『・・・なんでもないから気にするな。あー、それにしても俺も戦闘機になってみたいな!空を飛ぶってのも中々面白そうだ!!』
いつもと同じ軽快な口調で返された事により、気のせいだったのだろうかと思う。
ジャズはティスランドの翼を触っており、その感触にティスランドは少しばかりの恐ろしさを抱く。
翼に関する記憶はあまり良いものは無いからだ。
嫌でも思い出すのはスタースクリームの部下であったストラトス時の記憶で、そして上官である彼によって翼を打ち抜かれる記憶だ。
自分は彼にとって重宝されていた部下だった。重要な任務を任されることだってあったのに彼は自分を見捨てた。
いとも簡単に、何のためらいもなく。
そのメモリーが今なおティスランドを苦しめていた。
『(いつかオートボット達だって)』
窮地に追いやられればきっと自分を裏切って見捨てるだろう。
そうなれば自分は今度こそ本当にスパークが壊れてしまう。
『ティスランド?どうした?』
気遣うかのようなジャズのバイザーを見つめながらティスランドは小さな声で何でも無いと答えることしか出来なかった。