誰も何も言葉を発しない。
　ジッと互いの顔を凝視したまま黙り込んでいるオートボット達に対し、レノックスは何かきっかけでも与えた方が良いのだろうかと考えていた時だった。
　ティスランドの前に現れたジャズはジッと観察するかのようにティスランドを見下ろしていたが、意を決したかのように声を出す。

　『ティスランド、随分とまぁ小さくなっちまったな』

　「えぇ人間サイズになりましたので」

興味津々だと言うかのように近づいたジャズはティスランドを上着をそっと掴み上げる。
　その気になれば一瞬で殺せそうな程小さな存在になってしまった妹分に対し、ジャズはどうしたものかと考えながらバイザー越しに彼女を見つめる。
　当の本人は無表情だ。
　動揺している様子はない事に少しだけホッと胸をなで下ろしたときだった。

　『ティスランド』

　「はい」

オプティマスへと視線を向けたティスランドは彼を見上げる。
　トランスフォーマーだった時も彼と視線を合わせるときは見上げる形となっていたが、人型になった今は更に首を上に向けなければならない。
　
　『ジャズ、その持ち方は可哀想だ』

　『ん？・・・あぁ、そうだな』

襟を持ち上げているため、首に圧力がかかってしまったため顔をしかめていたティスランドに気づいたラチェットがジャズに指摘すると、ジャズは自身の掌にティスランドを置くとオプティマスに見えるようにしてやる。

　『報告はラチェットから受けている・・・本当に人と同じなのだな』

　『スキャンした結果は人とほぼ同じだった。オプティマス、いくつか彼女に協力して欲しいことがある。この状態の彼女が果たして人間と同じ身体能力を持っているのかテストしてみたい。それによって、今後の作戦が大きく動きが変わってくる』

どこか嬉しそうなラチェットの申し出にアイアンハイドとジャズが怯えたように彼を見つめ、オプティマスもどうしたものかと言うかのように排気を一つする。
　
　「司令官。私のことはお気になさらず。私もオートボットの一員です。この状態が今後の作戦に役立てるというのであれば、」

　『ハイ、ストップ！』

ティスランドの言葉を遮るかのようにジャズが声を出す。
　不満げな視線がラチェットとティスランドから向けられる。

　『嫌なら嫌って言って良いんだぞ？ってか言ってくれ・・・ラチェットの実験に付き合えば酷い目に遭うぞ？』

　「・・・この状態の私に一体何が出来ますか？戦場に立ってディセプティコンと戦うことすら叶わないでしょう。ならば今の私に出来ることで貢献すべきかと思いますが？」

　『うんうん、お前のそういう所は凄く好きだ。でもなぁ、相手を考えろ相手を』

チラリと怯えたようにラチェットを見たジャズに対し、ティスランドは何故彼がこんなにも反対をするのか解らなかった。
　ラチェットは今か今かと許可が下りるのを心待ちにしており、ワキワキと何かを訴えるかのように動く指がラチェットの心情を物語っており、ソレを見たオプティマスは困ったように二人を交互に見ている。

　『すぐに結論を出す必要は無いだろう』

今まで沈黙をしていたアイアンハイドの発言に全員が彼を見る。
　
　『全員が今の状況に対し混乱している。ティスランド、今のお前に出来ることは他にもあるはずだ。焦る必要は無い。メガトロン亡き今、あいつ等が活発に活動することはないだろう。少しゆっくり考えても良いはずだ。そうだな？ラチェット』

　『・・・・・』

　『ラチェット！』

　『・・・・・そうかもな』

同意こそしたが渋々という様子のラチェットに対し、アイアンハイドは呆れたような視線を向けた。