8章:謀と喪失と暗躍者
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「ふざけるなッ!!」
サムにしてみれば今の話しは到底納得できるわけでもないし、笑い話にするかのように楽しげに話すないようでは全くない。
「ティスランドの人格を消して、その代りにストラトスとかいう訳の分からない奴の人格を宿すって事だろ!?」
それはつまりティスランドを殺すのと同じ意味だ。
あまりにも身勝手な物言いにサムは怒りを止めることが出来ず、尚もサウンドウェーブへと向かい文句を言おうとしたのだが、それを最後まで口にすることは出来なかった。
ソレはサムの口に幾重にも巻き付く金属の触手が原因だ。
『・・・お前は何も知らないのだな』
呆れたような物言いにサムは怪訝そうに眉を寄せる。
サウンドウェーブの物言いには少しばかりの憐れみと、無知なモノに非情な現実を突きつけ絶望に落とす事への楽しみの感情が交じってた。
その感情が向けられているのはサムだけではない。
サムの後ろに居るオートボット達に対してだ。
真実を嘘で隠した者達、そしてソレに気づいていながらも気づかぬふりをする者達、そして何も知らずに仲間だと認識している者達。
哀れな、哀れな者達に語りかけるかのようにサウンドウェーブは続きを告げる。
『お前の友人であるティスランドには秘密がある』
赤い目が楽しげに歪む。
これから告げられる真実を知ったこの人間はどのような反応をするのか愉しくて仕方が無いと言うかのように赤い目が嗤う。
サウンドウェーブが見てきた人間とは全てが利己的で、そして愚かで、幼稚な存在だ。
そんな種族が出す答えなど決まっている。
友好的な関係を築けていた人間、信頼していた存在、それらが掌を返したとなれば愚かなオートボットは傷つく。
『(ストラトスならば傷つくことなどしないだろうがな・・・・それ以前にアイツが人間などと言う存在を受け入れることはないか)』
ディセプティコンとしての矜持がそれを許さぬ、認めぬことくらいサウンドウェーブには理解が出来ていた。
だからこそ今の現状が気に入らないのだ。
人の身になったストラトスはてっきりそんな自分を認めないだろうと思っていたのに、当の本人は気にした様子もなく、むしろどこか人間になった自分を受け入れていた。
それはサウンドウェーブにとっては許せぬ事だ。
「サウンドウェーブ?」
怪訝そうな声で自分の名を呼んだディランへと視線を向ければ彼は不思議そうに瞬きをしていた。
一瞬だけサムの方へと視線を向けたディランだったが、何事もなかったかのようににっこりと微笑むと口を開く。
「また悪巧みかい?」
不自然な沈黙に対してディランが口にした言葉、それはディランなりにサウンドウェーブをフォローしたものだ。
ディランは自分達人間が金属生命体に対して愚かな種であることを自覚し、ならば愚かなりに役立てることを考えて実行する、そんなディランの賢さをサウンドウェーブは高く評価していた。
『少し考え事をしていた』
「君が考え事?それはとても怖いね・・・それで?君のお気に入りの秘密とやらをそろそろ僕にも教えてくれないかな?」
『コイツの中にはお前達のよく知るティスランド、俺達のかつての同胞ストラトス、そして・・・この姿をしていた人間セイという人格が存在している』
サウンドウェーブから告げられたのは友がずっと伏せて隠し続けていた秘密、それを他人の口から知らされたサムは何を言われたのかすぐには理解することが出来なかった。
一寸遅れて言われた事を理解したサムはサウンドウェーブの言葉を否定しようとするのだが、脳裏にティスランドの姿が浮かぶ。
それはオートボットを意味する青い目が違う色へと変わった時のものだ。
赤い目の時のティスランドはらしくもなく好戦的であった事を思い出す。
『理解が出来たか?』
問われた言葉にサムは何も言えぬまま、ただ黙ってティスランドを見つめる事しか出来なかった。
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