8章:謀と喪失と暗躍者
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ウィリアム・レノックスという人間のことをティスランドはよく知っている。
判断能力に優れているから指揮官としてもとても有能で、その能力は人間と金属生命体にも発揮されるほどだ。
けれど、どれほど優秀な人間であれど、彼はまだ若い人間に部類されるのだ。
何もかも機械的に淡々と処理するにはまだ若すぎるのだとティスランドの中にある何かが伝えてくる。
「時間を必ず作るから行ってくれ」
「感謝する」
差し出されたのは小型銃で殺傷力のないソレをティスランドは受け取ると安全装置を外し、残弾を確認するとソレを構えたときだ。
「ティスランド」
「なんだ?」
「ありがとうッ!!」
聞こえてきた声は微かに震えていてティスランドは少しだけ何かを悔いるかのようにそっと目を伏せる。
アイアンハイドには過去に何度か稽古をつけて貰っていた。
その度に恨めしげにこちらを見てくるサイドスワイプと、物言いたげな顔をしているジャズの姿を思い出す。
あの頃は本当に幸せでいて、それでいて満ち足りていた。
「私はレノックス大佐とアイアンハイドが一緒に居るのを見るのが好きだった」
過去形で告げた言葉にレノックスは目元をそっと手で覆う。
それを見ないようにしながらティスランドは手にした銃を縋るようにキュッと握る。
「形あるモノはいつか終りを迎える。生ある者は死へと向かって進んでいる・・・この世界でよく言われる言葉で、私はソレを当然のことだと認識していた」
金属生命体あるが故に何が正しいのかすぐに解ってしまっていた。
ティスランドもストラトスもソレを当たり前のように認識して、何を馬鹿な事を言っているのだろうか?と思っていたのだが、セイだけは違っていた。
人であった彼女だけは唯一、声を上げてそれを否定し続けていた。
「いつか終りを迎えるからこそ・・・死という終りを解っているからこそ、私達はいつだって今を大切にしているんだよ?」
その言葉の意味を今になって理解をすることが出来た。
それはあまりにも自分が未熟すぎたのだとティスランドに伝えてきた。
【オイラは・・・現在生き残っているオートボットの中で一番若かった。だから周りからの過保護にいつもうんざりしていた。先輩達の援護に対していつだって余計なお節介でしかないって、迷惑だって思っていた。でも・・・ティスランドを知って先輩達が何でオイラに親身になってくれていたのかようやく解ったんだ】
ラジオ音源では思うように伝えられないと判断したバンブルビーが極秘回線で送ってきたメッセージ。
それを読み終えたティスランドが黙って立ち尽くしていると、ぎこちない手つきで頭を撫でたバンブルビーの仕草を思い出す。
『未来ある者には死んで欲しくないからな』
訓練後に何気ない会話をしていたときのアイアンハイドの言葉が脳裏で弾ける。
アイアンハイドはティスランドに厳しかった。
優しかった事はあまりなくて、彼はきっと自分を嫌いなのだろうとずっとずっと思っていたのだが、それは違っていたのだと彼を喪って初めてティスランドは理解が出来た。
彼は必死だったのだ。
ティスランドを生き残らせるために、若い命を繋がせるために。
「私はまだアイアンハイドに生きていて欲しかった」
もっともっと彼から色々な事を教わりたかったし、彼の事を知りたかったのだ。
そう思ったのと同時にティスランドの目から涙が溢れ出す。
歪む視界の中でティスランドは自分と同じく涙を流すレノックスの姿を見たが、きっとそれは歪んだアイセンサーのせいだと自分に言い聞かせた。
判断能力に優れているから指揮官としてもとても有能で、その能力は人間と金属生命体にも発揮されるほどだ。
けれど、どれほど優秀な人間であれど、彼はまだ若い人間に部類されるのだ。
何もかも機械的に淡々と処理するにはまだ若すぎるのだとティスランドの中にある何かが伝えてくる。
「時間を必ず作るから行ってくれ」
「感謝する」
差し出されたのは小型銃で殺傷力のないソレをティスランドは受け取ると安全装置を外し、残弾を確認するとソレを構えたときだ。
「ティスランド」
「なんだ?」
「ありがとうッ!!」
聞こえてきた声は微かに震えていてティスランドは少しだけ何かを悔いるかのようにそっと目を伏せる。
アイアンハイドには過去に何度か稽古をつけて貰っていた。
その度に恨めしげにこちらを見てくるサイドスワイプと、物言いたげな顔をしているジャズの姿を思い出す。
あの頃は本当に幸せでいて、それでいて満ち足りていた。
「私はレノックス大佐とアイアンハイドが一緒に居るのを見るのが好きだった」
過去形で告げた言葉にレノックスは目元をそっと手で覆う。
それを見ないようにしながらティスランドは手にした銃を縋るようにキュッと握る。
「形あるモノはいつか終りを迎える。生ある者は死へと向かって進んでいる・・・この世界でよく言われる言葉で、私はソレを当然のことだと認識していた」
金属生命体あるが故に何が正しいのかすぐに解ってしまっていた。
ティスランドもストラトスもソレを当たり前のように認識して、何を馬鹿な事を言っているのだろうか?と思っていたのだが、セイだけは違っていた。
人であった彼女だけは唯一、声を上げてそれを否定し続けていた。
「いつか終りを迎えるからこそ・・・死という終りを解っているからこそ、私達はいつだって今を大切にしているんだよ?」
その言葉の意味を今になって理解をすることが出来た。
それはあまりにも自分が未熟すぎたのだとティスランドに伝えてきた。
【オイラは・・・現在生き残っているオートボットの中で一番若かった。だから周りからの過保護にいつもうんざりしていた。先輩達の援護に対していつだって余計なお節介でしかないって、迷惑だって思っていた。でも・・・ティスランドを知って先輩達が何でオイラに親身になってくれていたのかようやく解ったんだ】
ラジオ音源では思うように伝えられないと判断したバンブルビーが極秘回線で送ってきたメッセージ。
それを読み終えたティスランドが黙って立ち尽くしていると、ぎこちない手つきで頭を撫でたバンブルビーの仕草を思い出す。
『未来ある者には死んで欲しくないからな』
訓練後に何気ない会話をしていたときのアイアンハイドの言葉が脳裏で弾ける。
アイアンハイドはティスランドに厳しかった。
優しかった事はあまりなくて、彼はきっと自分を嫌いなのだろうとずっとずっと思っていたのだが、それは違っていたのだと彼を喪って初めてティスランドは理解が出来た。
彼は必死だったのだ。
ティスランドを生き残らせるために、若い命を繋がせるために。
「私はまだアイアンハイドに生きていて欲しかった」
もっともっと彼から色々な事を教わりたかったし、彼の事を知りたかったのだ。
そう思ったのと同時にティスランドの目から涙が溢れ出す。
歪む視界の中でティスランドは自分と同じく涙を流すレノックスの姿を見たが、きっとそれは歪んだアイセンサーのせいだと自分に言い聞かせた。