ここで一つ、問題が浮上した。
　一体誰がこの白いオートボットの名前を付けるのかと言うことだ。
　命の恩人だというジャズが命名したいと告げれば、戦いのセンスを気に入ってくれたらしいアイアンハイドも立候補し、滅多に無いチャンスにラチェットも自身が命名すると告げた。
　
　『”貴方は””誰が良い？”』

キラキラと青い瞳を輝かせながら問いかけてきたバンブルビーを黙って見つめる。
　この機体はあわよくば自分を任命して！と言うかのように見つめてきている。

　『（あざといなぁ）』

心の中で苦笑をした白い機体は青いカメラアイをある一体のオートボットへと向ける。
　
　『貴方に頼みたい』

　『私か？』

　『見たところ貴方が最高責任者なのだろう？ならば貴方に頼みたい』

それならば誰かを選んだことによって、選ばれなかった者達からの反感もないだろうと判断したのだ。
　無意識の内に決めた決断であったがそれは英断であった。
　下手に誰かを選べばより問題は厄介なことになっていただろうから。

　『さて・・・どうしたものか』

困ったようには息をしたオプティマスに向かい、白い機体はあまり深く考えるなと言うかのように微笑みかける。
　どうせ名前なんてどうでも良いのだから。
　ストラトスであった時、セイであった時、そして新しい名前であった時だろうとやることは変わらない。
　そう思いながら戦場となった街並みを見て居ると避難場所へと移動している人間達の姿を見つけた。

　『（みんなはどうしたのかな？）』

不意にセイの意識が強くなる。
　両親と弟の安否が気になったセイはその場から移動を開始する。

　『どこに行くんだ？』

　『ちょっと、気になることを思い出して』

足を止めずに答えた白い機体をオートボット達は黙って見つめていたが、赤子と同じ状態の彼女を放っておくことが出来ず、ジャズがその少し後ろを追いかけ始める。
　意識がスタースクリームにしか向けられていなかったため、どうやってここまで来たのか解らないままセイは歩く。
　ふらふらとした足取りで何かを探していることに気づいたジャズは、黙って彼女を観察していたが、センサーも何も使わず肉眼で何かを探している姿に対し呆れたように排気をすると口を開く。

　『何を探しているのか知らないが、センサー使わないのか？そっちの方が楽だぞ？』

　『せんさぁ？』

振り返った白い機体の発音にジャズは本当に何も解らないのだと改めて認識をする。
　無知の者に対して口で説明するのも面倒であったため、ジャズは彼女に近づく。

　『ちょっと良いか』

自分のコードを取り出したジャズはそれを彼女に繋ぐ。
　彼女の中には何もない。
　その中から目当てのセンサーを見つけ出したジャズはソレを起動すると、ソレは驚いたように青いカメラアイをカシャカシャと瞬かせた。

　『どうだ？』

　『わかりやすい。ありがとう！』

　『おう・・・どういたしまして』

無邪気なその姿に先程とは違う事にジャズは気づく。
　恐らくブレインがまだ定着していないのだろうと結論づけていると、彼女は目当てのものを見つけたらしく先程よりもしっかりとした足取りである場所へと向かう。
　その場所に居たのは人間達だった。