自分を見つめる目が痛々しいことにミソラは気づくと困ったように眦を下げて笑う。
　そんな目をしないで欲しいのだ。彼にはいつも前見ていて欲しい。

　「貴方にそんな目をさせたのは私だね」

　『ミソラ』

　「そんなつもりじゃなかったんだけど・・・ごめんなさい」

彼の頬に触れようと思うのに体が重たくて動かすことが出来ない。
　どうしたものかと考えていると、頭上から滴が数滴落ちてきたことに気づき視線を動かす。
　見えたのは泣いているサムで、彼の目から出ていた涙がミソラへと次々落ちてくる。
　涙の滴が頬を伝うとその部分だけが暖かくなる。

　「サム？」

名を呼ぶがサムは答えない。
　ただ、代わりと言うかのようにぎゅっと体を抱きしめてくれる。
　暖かいなと思いながらミソラは目を細めて笑うと、下ろされていた手をミカエラが掴んでくれる。
　自分の熱を分け与えるかのようにミカエラは力強く握ると、ミソラの手を自分の額に押しつけた。
　困ったように二人を見て居たミソラであったが、オプティマスの背後に見えるピラミッドから火が上がるのを見る。
　戦いはまだ終わっていない。
　終わらせることが出来るのはただ一人だけだ。

　「オプティマス、戦って」

あの敵だけでは無くメガトロンも居るのだ。
　生き返った彼が二人を相手にして戦い、勝利を得ることが難しいことも解ってる。
　それでもミソラは彼に戦って欲しい。

　『・・・・私にできるだろうか？』

彼らしくない不安な返答にミソラは驚いたように目を見張る。

　『私とて恐れくらい抱く。現に今、私はとても恐れている』

何に対して彼が恐れを抱くのか。
　これほどまでに勇敢な司令官が何を恐れるのか、少しだけ興味が出たミソラであったが、それを聞くのは後からいくらでもできるのだ。

　「オプティマスが何を恐れているのか解らないけど、でも、その恐怖を少しだけ私が肩代わりしてあげる。だから、大丈夫だよ」

その言葉を証明するかのようにオプティマスのスパークが一瞬、力強く輝く。そのことに驚いたように自身のスパークに触れたオプティマスは何かを確かめているかのようだった。

　『何故君は・・・』

　「オプティマスは、私にとってスーパーマンだもの」

そうでしょうと言いたげにバンブルビーに視線を向ける。
　彼は一瞬だけ視線をさまよわせた後、スーパーマンのBGMを流してくれた。おまけと言うかのようにスーパーマンのポーズまでしたバンブルビーの姿がおもしろく、ミソラが肩を揺らして笑う。

　「格好良くて、私の憧れだから」

　『ならばその期待に応えなくてはならないな』

ゆっくりと立ち上がったオプティマスの目にはもう迷いや不安は無い。
　いつもの凜々しい司令官の姿に戻ったオプティマスを、まぶしい物を見るかのように目を細めてミソラは見つめた。