レノックス達共にサムと合流するためにミソラは足を動かし続けた。
　耳が可笑しくなりそうなほどの爆音に体が無意識の内に竦む。足が止まりそうになる度、近くにいる軍人が腕を掴んで走らせてくれた。
　ふいに、煙の中に混じり懐かしい声が聞こえてくる。

　「・・・サム？」

声のした方を見るとミカエラの手を引いてこちらに走ってくるサムの姿が見えた。
　必死に腕を振り自分の存在を訴えるサムにレノックスは気づき、彼を助けるために走り出す。
　何人かの部下達が援護射撃をし、迫ってくるディセプティコン達を足止めする。

　「サムッ！こっちだ！！」

瓦礫の隅に身を隠しながらレノックスはサムに向かい手を振る。
　サムはその声に気づき瓦礫に向かって走ってくるが、その背後には忘れもしないディセプティコンが居た。

　「メガトロンッ・・・」

サムを殺そうと執拗に追撃をするメガトロンに対し、重火器の一斉攻撃が始まる。機能停止まではできないものの、足止めをする程度にはなっているらしくその隙にサムとミカエラはレノックスの元に到着した。

　「こっちだ！ここに隠れろ！！」

二人の体を瓦礫に押しつける。
　サムは信頼出来る仲間との合流にホッと胸をなで下ろし、ミカエラに怪我をしていないか問いかけていた。

　「サム」

名を呼ぶとサムはミソラへと顔を向ける。

　「ミソラ！？なんでここに！？」

意外な人物の登場に驚くサムとミカエラ。
　二人に向かいミソラは曖昧な笑みを浮かべることしか出来なかった。
　説明しようにもおしゃべりをしている余裕は無い。
　一刻も早くオプティマスを蘇らせなければならないのだ。

　「呼んだからには方法はあるんだろうな！？」

　「勿論！・・・・オプティマスはどこ？」

サムの問いにレノックスは視線でオプティマスの居場所を教えてくれる。
　シートに覆われているが見慣れたペイントが見え隠れしている。
　駆け寄ろうとしたサムであったが、何かに気づいたレノックスが彼を押さえつけ唇に指を添えて静かにするように指示を出す。
　誰もが口を噤み、瓦礫に身を寄せて警戒をする中、頭上から影が差し込む。
　その影はライフルを取り出すと戦車に向かい攻撃をする。目標が黒煙を上げながら沈黙したことを確認したディセプティコンは移動をしようとしたが、不意に何かに気づいたかのように身を乗り出す。
　赤い目が隠れていた者達を睥睨する。
　不意にその目と視線が合ったミソラの顔から血の気が引く。
　ディセプティコンが気づいたのだ、ミソラの中にあるエネルゴンに。

　「っ・・・・」

　「撃て！！撃て撃て撃て！！！」

誰が言ったのかは解らないが一斉射撃をレノックス達がする中、ディセプティコンが腕を伸ばしてくる。
　その先にいるのはミソラだ。
　
　「ミソラ！！」

サムの声にミソラは弾かれたように走り出す。
　オプティマスとは反対方向に。

　「どこに行く！？戻れ、戻れッ！！！」

誰かが必死に戻るように怒声を上げる。
　しかし、ミソラはその声に応じて戻るわけにはいかなかった。