作戦が実行される時刻が迫ってきている。
　ミソラは彼らからパラシュートを付けてもらい、やり方をレクチャーしてもらっていた。オプティマスにはいくつかパラシュートが付けられている。

　「落下先は砂漠だ。衝撃はあまりないと思うが・・・」

最終チェックを終えた軍人の言葉にミソラは頷いた後、小さな窓から外の様子を見る。
　見渡す限り砂で覆われており、時折、民家が見えるがそれほど多くは無い。
　NEST部隊が到着後、速やかに民間人の退避が行われる予定だ。
　間違いなく戦闘が始まる。
　そうなればミソラは確実に足手まといとなる。

　「本当ならアンタも避難すべきなんだろうが」

言い辛そうに口を開く軍人に対しミソラは窓から視線を逸らし、申し訳なさそうな顔をしている彼に対し大丈夫だと言うかのように笑う。

　「ラチェット達の側にいます」

エネルゴンが多い状態となっているミソラへとディセプティコンの手が伸びる可能性が高い。
　故に危険だと解っていてもオートボット達の側に居なければならないのだ。

　「それに逃げろと言われてもきっと私は逃げなかったと思います」

オプティマスが蘇るのを見届けるまで。
　そう思いながら窓の外へと視線を戻したときだ。
　パラシュートが通り過ぎていく。少し遅れてこの場に相応しくないスーツに身を包んだ男が吹き飛んでいく。
　彼は助けを求めるかのようにこちらに手を伸ばして来ていたが、機内にいるミソラにはどうすることもできない。

　「あの」

　「・・・」

　「今のはギャロウェイ補佐官では？」

　「・・・」

唖然とした顔をして軍人達はすでに遙か後方で浮かんでいるギャロウェイを見つめることしか出来なかった。
　一人が前方を飛行している機体に連絡を取り、何があったのか確認をする。
　一言二言会話をした後、彼は通信機を元の位置に戻すと満面の笑みを浮かべて告げてきた。

　「どうやら一刻も早く本国にこのことを伝えるため、お一人でお帰りになったそうだ。別れの挨拶も無くね！」

明らかな嘘であったが、彼らはならば仕方ないと結論づけると、ギャロウェイが飛んでいった方向に向かい敬礼をした。
　それが終わると無言のまま拳をぶつける。

　「さて諸君、そろそろ時間だ。嬢ちゃん、焦らずに俺たちの言ったとおりにやれば大丈夫だからな？」

ぽんぽんと頭を叩いて軍人の一人がそう言ったのと同時に、後方のハッチが開いていく。
　凄まじい風に怯えそうになる。
　しかし、この先に行かねばならない。
　意を決した顔をしたミソラはフラップを踏みしめ、空に向かって大きく一歩を踏み出した。