いくら人間が知恵を絞り何かをしようとも、優れた技術を盛る彼らには大したことなど無い。
　彼らにとってみればメガトロンの亡骸なんていつだって回収ができたのだ。それをしなかったのは恐らくタイミングを待っていた。
　メガトロンを蘇られることのできる物が全て揃うタイミングを。

　「肝心のスパークは？キューブに破壊されたんでしょう？」

　『人間達が保管していたキューブの欠片が盗まれた。恐らくソレを使って復活させたのだろう・・・君には辛いだろうがもう一つ辛い報告がある』

　「なんですか？」

　『サム・ウィトウィッキーが何故かキューブの欠片を所持していた。我々も知らなかった事だが地球にはもう一つエネルゴンがあったのだよ。リーダーのマトリクスと呼ばれる存在・・・それの座標が彼の脳に刻まれてしまってい、それを手に入れるためにディセプティコンは彼を血眼になって探している』

エネルギーはどれだけあっても困らないのだから。
　ラチェットの言葉にミソラは不安げな面持ちをして彼を見上げることしか出来ない。
　
　『政府もあてにならない、おまけにディセプティコンまで君たちを狙っている。サムはバンブルビーの助けもあって無事に逃げている。だが・・・問題は君だ』

政府は今すぐにでも君の身柄をディセプティコンに差し出すつもりだ。
　死刑宣告のように聞こえたその発言に、 ミソラは無意識の内にオプティマスの名を呟いていた。
　青白かった顔色は恐怖で白くなっていく。
　気遣うかのようラチェットはミソラの頭をそっと撫でる。
　
　『本当ならば君にはここで横になって休んでいて欲しい。だが、我々は政府と同盟を結んでいる以上、彼らの意思を尊重せねばならない。君を差し出せと言われれば我々に拒否権は無い・・・オプティマスが人間と生きることを決めたときに交わした取り決めだからな』

　「ラチェット」

　『だか、素直に彼らの言い分に従うつもりは無い。我々は政府から要望が来る前に君を逃がす』

　「そんなことをしてラチェット達は大丈夫なの？」

同盟規約違反だと責められないかと思うが、ラチェットは楽しそうに肩を揺らして答える。
　
　『大丈夫だ。君がいつの間にか勝手に逃げ出したということにする。安心したまえ。レノックス達に名案があるらしい。私も聞いたのだが中々よい案だった。なにより、君がとても安心できる』

そうとなれば善は急げと言うかのようにラチェットはミソラの体を持ち上げる。
　ゆっくりと移動をしたラチェットは外で待ち構えていたエップスにミソラを渡す。エップスは任せろと言うかのように頷くと、目的地に向かって歩きだす。

　「エップスさん」

　「大人しくしててくれ。映像はラチェット達が誤魔化してくれているが、何があるのか解らないからな」

返事の代わりにこくりと縦に首を動かす。
　すれ違う軍人達は無言のまま握り拳を作ったり、敬礼したり、手を振ってきてくれる。彼らはNESTの人間で、恐らく皆、この計画を知り協力をしてくれている者達なのだろうとミソラは理解すると、彼らの優しさが嬉しかった。