オプティマス達が不在の間にあった出来事を楽しげな口調で話していたミソラは、彼がなんだか疲れているような気がしたため動かしていた口を止めてジッとオプティマスを見つめる。
　聞こえていた声が止まったことにオプティマスは気づき、ミソラを見ると自分を見つめてくる視線とかち合う。
　無言のまま互いの顔を見つめ合う。

　「疲れているよね？引き留めちゃってごめんなさい」

　『いや大丈夫だ』

　「ううん・・・ここ最近、ディセプティコンの襲撃回数は増えているから疲れるのも当然だよね。ラチェットに用事があったんでしょう？」

　『いや、彼も忙しいようだからな。後で来ることにしよう』

今回の戦いにおいてアイアンハイドが腕に負傷を負ったのだ。
　リペアルームから聞こえてくる楽しそうなラチェットとジョルトの会話に対し、全員が無意識の内に意識を逸らす。
　下手に声をかければ彼は不機嫌になるだろう。
　そのとばっちりは間違いなくこちらに来る。

　『ミソラ』

　「なんでしょうか？」

　『少し顔色が悪い・・・薬はちゃんと飲んでいるのか？少しでも異変を感じ取ったのならばすぐにラチェットに報告をして欲しい。そのために我々は君にここに来てもらったのだから』

まさか見抜かれているとは思わなかった
　サイドスワイプは何も言わなかったので、てっきり上手くごまかせたと思っていたのだが流石はオプティマスと言うべきなのか彼は的確にミソラの体調不良を見抜いたのだ。

　「ごめんなさい」

　『謝る必要など無い・・・。無理だけはしないでくれ』

　「はい。・・・オプティマスも、無茶はしないでください」

　『あぁ』

これからレノックスと今回の戦いでの被害状況と今後の対策を行うと言ってオプティマスは去って行く。
　遠ざかってく足音にミソラの肩は知らず知らずのうちに落ちていた。
　最近は一緒にドライブを行く余裕が無いのだ。
　この基地に来てからオプティマスと一緒にドライブをしたのは一回だけだ。

　『司令官ってお前には激甘だよな』

　「そうかな？」

　『絶対にそうだって！俺たちが同じ事をやったら日頃のメンテをちゃんとしていないからだって怒られるぜ？それこそ機嫌が悪ければ顔を剥がされかねない』

サイドスワイプの言葉にミソラは困ったように視線をさまよわせる。
　何となくだが、オプティマスが特別扱いしてくれているのが嬉しいのだ。

　『悪かったな』

　「サイドスワイプ？」

　『体調、悪かったんだろ？お前って俺たちにも気を遣っているって解っていたのにな。気づけなくて悪かった・・・エップスとの勝負は適当な奴を見つけて運転席に縛り上げておく』

　「レノックスさんは？」

　『あいつは駄目だな・・・先日のレースに師匠も参加したんだが、その時に有り金全部師匠に賭けてた。自分の部下が追い越した瞬間、凄まじい形相で部下を睨み付けてて、最終的には聞くに堪えない罵声を浴びせてて部下がかわいそうだった。なんてーか、指揮官としてどうなんだ？』

アイアンハイドとレノックスの交友関係は他の誰よりも良好だ。
　サイドスワイプの言っている光景が容易に想像出来たミソラは声を出して笑う。