そこに居たのは息を切らせて立っている少年だ。
　彼はミソラの元に来ると呆れたような視線を向けてくる。

　「ねぇ！何でこんな見付けにくい場所にいるわけ！？嫌がらせのつもり？」

　「え・・・あの、そんなつもりは無くて・・・・えっと、君は？」

　「僕はサミュエル・ウィトウィッキー。サムって呼んで」

ウィトウィッキーという名を聞いた瞬間、ミソラは勢いよく立ち上がる。
　彼らの子供なのだと思えば知らず知らずのうちに緊張してしまう。
　
　「ミソラ・アマネだろ？父さんと母さんから聞いてる。探しに来たんだ」

　「・・・探しに？」

　「そう、手紙について話したいって。・・・今日は遊びに行こうと思っていたのに、突然家族会議するからリビングに集まれって言われてさー」

散々だよ、と言って苦笑を浮かべたサムに向かい、原因となったのが自分のためミソラは曖昧な笑みを浮かべて視線を逸らす。

　「それじゃ行こうか」

　「行くって？」

　「言っただろ？手紙について話したいって」

ほら、行くよ。
　そう言ってサムはミソラの手を握る。
　自分よりも大きく、そして暖かな手のぬくもりにミソラは意味も無く泣きたくなる。
　久しぶりに触れる人のぬくもりは心を落ち着かせてくれた。
　
　「荷物はこれだけ？持つよ・・・って軽いよ！？コレ、すごく軽い！！」

　「そうかな？」

　「へぇ～・・・『女性は持ち歩く荷物がたくさんあって大変なのよ！！』って母さんは言っていたけど、アレやっぱり嘘だったんだ」

　「多分、そっちが普通だよ。私がちょっと変わっているだけで」

言いにくそうに言葉を濁したミソラの姿にサムは関心が無いらしく、適当な相づちをうつと家に向かって歩き出す。
　サムは気を遣って色々と話してくれるのだが、手紙に対する返答の方がが気になってしまっているミソラは気のない返事をするだけで終わるので、いつしか二人の間の会話は無くなってしまう。
　気づけばウィトウィッキー家の前に着いた二人。
　サムは当然のように自分の家の中に入っていく。
　だが、ミソラはその場に足が縫い付けられてしまったかのように動くことが出来ない。

　「どうしたの？お腹すいて動けない？」

　「・・・いえ、お邪魔します」

震える足を叱咤しながら一歩前に踏み出す。
　ゆっくりとしたその足取りにしびれを切らしたサムはミソラに近づくと、やや乱暴な手つきで手を掴むと家に向かって歩きだす。

　「サ、サム！？」

　「あんまり遅くなると僕が父さんに叱られるんだ」

迷い無く家の中に入ったサムはリビングへと向かって歩く。
　勢いよくドアを開けたサムに向かい両親はおかえりと挨拶をし、そして息子の後ろに居るミソラを見て優しく微笑んだ。

　「えー・・・さて、家族会議の結論が出たのでお伝えしようと思ってね」

ソファに腰掛けたままロンは告げる。
　その言葉を死刑宣告を受ける囚人のような気持ちでミソラは聞くこととなる。